第27話 ひとまずの終幕
私が流した偽情報、少々効果がありすぎたらしい。
ほんと、やり過ぎはいけない。
これだけ頑張ったのに、初めて認識されるなんて。
騎士達が空気を読み、離れて見守ってくれている。
ありがとう。気配りに感謝します。
頭を下げると、騎士達の笑顔が返ってきた。
泣き始めたアリスを除けばみんな笑顔だ。
こんなに笑顔に囲まれることがあるなんて、思いもしなかった。本当に嬉しい、心底私は喜びたい。
――だけど、
「騎士団は正確な情報を持っていたはず。なぜ殿下や陛下に伝えようと尽力しなかった……」
まさに心の奥底から低いものが吐き出た。騎士達の表情が一変する。さながら青魚のようだ。
「お前ら、私の功績盗んだな……」
ずっとおかしいと思っていた。だけど口には出せなかった。私を一番支援してくれた彼らを、疑いたくなかった。
だけどさあ……状況がそう言ってんだよなあ……。
「我々は違います! ライン騎士団はそのような不正は絶対にしない! 討伐数を掠め取るなどと恥知らずな真似、ラインの名に懸けてありえません!」
ライン騎士の発言に対し、
「なら、それ以外はやったわけか。語るに落ちたな、ラインの騎士よ」
神殿騎士が混ぜっ返した。
「何を変態騎士団! よくもあんな変態共の下で働けたものだ! 恥を知れ!」
「なんだと、もう十回言ってみろ! 舌噛むぞ!」
「やかましい半端騎士団共! 首都圏を防衛する王国騎士団こそ至高! 辺境の田舎者はさっさと帰って草でもむしってろ!」
「なんだてめえ!」と誰かが続き「怪我人が出たら言ってくれ」と病院騎士団が声をかける。
そして騒ぎは大きくなり、人でごった返しだ。
男ってのはこれだから、まるで子供。
本当は真相を追及したかったが、全くうまく誤魔化された。馬鹿め、二ヶ月は滞在するのに。ゆっくり犯人を探してやる。
人の功績盗みやがって。
「エルカ様、楽しそう」
アリスが顔を覗き込んできた。アリス自身も笑顔を湛え。
「そう?」
「先輩、男より飯です。三度の飯より、スイーツですよ」
確かに、ミーシャの言う通り。国を出たらまともな食にありつけるかも分からない。経験ずみだ。
ほんともう仕方のない。
仕方ない大人達と後輩二人だ。
だから、仕方なくとも声を張ろう!
「ようし、税金で飯を食おう!」
「はい先輩!」
「おぉー!」
ミーシャとアリスを連れ、広間を後にする。喧騒はまだ続き、私が完全に見えなくなるまで続くだろう。
広間の出入口が遠くなってから、私は立ち止まり誰ともなく礼をした。
あまりに多くの出来事が、今日あの場所で起きた。
よくもまあこんなにも。私は満足だ。
全ての情報は開示された。
そう、必要なものは全て。
だから私は、何も引きずることなく踵を返し再び歩み始められる。
私に相応しい未来に向け、戦いの幕が開くまで。
今は事の終わりを祝おうと思う。
回廊は長く続き、まるで人生を思わせる。
儚げな花を愛で立ち止まるもいい。
人生には余裕が必要だ。
その余裕が私を更に前へと進める。
もっと、もっと前へ。
行き着いた先で奴らが待っている。
この手はきっと、奴らに届く。
ルナリアに平和を。
私が成してみせるまで戦い続けよう。
誰でもない私の人生を、誰にも渡さない為に。
誰でもないあなたの人生を、守る為に。
それが私、エルカ・ライン・アールブルト。
侯爵令嬢であり、悪役令嬢と呼ばれた者の役割なのだから。
第1章はこれにて終幕となります。
・以下、一章完結時のあとがき。
エルカ・ライン・アールブルトの物語はひとまずの終幕となります。
日間ジャンル別推理文芸ランキング1位など、連日貴重な体験が出来ました。
心より御礼申し上げます。
皆さんが良い読書ライフを送れますように。
お越しいただきありがとうございます。
また再び、エルカの景気のいい啖呵をお見せ出来るその日まで。
2023/2/11
・二章「侯爵令嬢の華麗なる推理劇」について
二章は異世界本格ファンタジーミステリー作品になります。
エルカの活躍、異世界ミステリーをお楽しみいただければ幸いです。
2024/7/26




