第26話 優しい振り
二ヶ月手伝えだと……このくそ親父ども!
「嫌だ! 今すぐ追放だ! 追放しろ!」
「した。騎士団の者これへ!」
ハラルド陛下の声が広間に響き渡る。
すぐさま騎士達がなだれ込んできた。
この光景さっき見たぞ!
「騎士諸君ご苦労。あのエルカなんたらの傍に」
「はっ!」
逃がさないつもりか……!
私を政争に巻き込むつもりだな……!
ハラルド陛下は出入口へと向かいながら、騎士達に指示を出した。
「エルカなんたらの機嫌を取れ。それと、玉座にリクライニングとやらを施せ。勇者が来たら驚かせたい」
なんだその指示は!
怒気を孕むが、ハラルド王は振り向こうともしない。騎士達に囲まれ去っていく。
「ちょっと待って下さい! ちゃんと追放して! どうして!」
そんな心からの叫びは、
「待たない、どうしてもだ」
一言で切り捨てられた。
なんてことを。私の気持ちをなんだと……!
振り返り殿下に詰め寄る。
「殿下、話が違います!」
「知らん。陛下の命をなんと心得る。弁えよ」
「騙したな……!」
「何が悪い。偽情報をばらまきよってから。もはや誰が誰だか分からん始末。貴様本当にエルカ・ライン・アールブルトか?」
殿下の視線がミーシャとアリスに向けられた。
意を汲んだ二人は、
「違うかもしれません! いつもよりキレイだし!」
「別人かもしれません! アリスを置いて行く人じゃありません!」
必死にわけの分からない主張を叫んでいる。
「だ、そうだ。騎士団員を最低十人はつける。不服があれば言え。好みに合わせる」
「誰が乙女ゲームしたいって言いました!? 私は婚約破棄されたばかりです!」
「傷を癒せ。では失礼。皆、機嫌を取り続けろ。散々やってきた貴様らに期待している」
「はっ!」という騎士達の気合いを後ろに、ゲッツア殿下まで去っていく。
なんで、私はちゃんと追放され……追放されるだけの無礼を重ねたのに!
ちゃんとやった! それを認めて!
どうして私の気持ちを理解してくれないの……。
――結局大人の都合で世の中は動く。
そういうことなの。
今までもそうだった。知ってた。
でも私は、出来ると確信していたのに。
私がぶち壊した何かを立て直すのは、至難の業。でも陛下、あなたがやればたぶん大丈夫。殿下だっている。二ヶ月なんて守らなくていい。
ただ、私の声を、ルナリアの声を届けたかった。
「先輩! 良かった、しばらくイケメンパラダイスですよ!」
ミーシャのいい加減なフォローを、
「いらない! 私はこんなことしてる場合じゃないの! 勇者が、転生者が、魔族と戦わないと!」
激しくかぶりを振り拒絶する。
なのに、
「じゃあ、アリスが強くなってからにしましょう」
「エルカ様、私強くなれますか?」
ミーシャもアリスも何を馬鹿な……。どうして、覚悟を決めた途端みんな優しくなるの。こんなじゃ、転生者にも魔族にも、勇者にだって敵わない!
「はっ! さては私が強くなったらライン王国最強の座がヤバいと焦った! あいつら!」
「先輩、違うと思います」
「普通に労ってるだけだと思いますよ」
……知ってるよ。ありがとう二人共。
そうか、今日は別れの日ではないと、そんなことまで決められるんですね。
だったら、だったら早く私に気づいて欲しかった!




