第25話 正しい追放
渋々と言った感で殿下は話し始めた。
「そなた婚約者がいたとか」
「はい。先刻婚約破棄を申しつけられました」
「理由は」
「……私が至らぬばかりに」
「処女童貞の誓いは守ったか」
「……はい。互いに汚れなく」
「そうか。互いに嘘をついたわけだな」
「……それで構いません」
「陛下の前で虚言を弄した。罪深い。神々もさぞお怒りであろう」
なんの神がなんの為に。真顔の神か? ゲッツア殿下はつくづく損な役回り。
「悪魔を飼っておるらしいな」
「飼育しております」
「教会への無礼は」
「日常です」
「まさか反社会的ギルドと付き合いはあるまい」
「彼らは働き者です。よく利用しました」
「結構。陛下、以上でよろしいか」
ハラルド陛下はじっとこちらを見ている。徐に、
「足りぬ。が、もうよい」
儀式を終わらせる為、妥協してくれた。素直な感情を形とする。
「ありがとうございます」
「暴言の数々許しがたい」
「その通りでございます」
深々頭を下げると、ミーシャとアリスが割って入った。
「先輩は無駄にスタイルがいい! 侯爵令嬢で美人で性格が悪くて後輩の面倒見がいいなんて、最低です!」
「エルカ様と私達はずっと一緒です! 追放するなら、私達も!」
アリス……ミーシャが嫌そうな顔してるから巻き込まない。気持ちは受け取るわ。でも、安っぽいけど別れだけが人生。出会いと別れを繰り返すの。
裁断しなければならない陛下は、些か辛そうだ。それでも言とせねばならない。
国王、ライン王国最強の男が告げる。
「後輩に庇いだてされるは無様」
「全くでございます」
「よって、罪状はよく分からないが追放だ」
「ありがたき幸せ。至上の喜びと心得ます」
「主義を曲げた私からも一言」
ゲッツア殿下からの言葉。殿下に向き直り、相対する。
「追放の日時は追って知らせる」
意外過ぎる台詞。一瞬戸惑い、気色ばみ応じる。
「なぜです?」
「色々だ」
「今すぐの追放を。でなければ意味がありません」
「主義を曲げた私の顔を立てろ」
「どこを曲げたか分かりません」
「この国は教会の勢力こそ強いが、宗教国家ではない。一夫一婦制はともかく、他人の色恋などどうでもよい。なぜ私が、身内に種馬がいる私が童貞処女を語らねばならん」
「聞こえているぞ叔父上」
陛下の声はご機嫌大変よろしかった。
では私はどうか。決して受け入れられない。
睨みつけるが、ゲッツア殿下は平然と続けた。
「有力者の半分を取り込んだ。では残りは。内乱が起きかねない。今日捕らえた彼らの処罰を見届けよ」
それは出来ない。凛と拒絶する。
「殿下、追放を」
「陛下、今一度ご裁可を。聞き取れませんでした」
「殿下!」
怒り、声を荒げる。
だが私の言葉など耳にも入れず、それは告げられた。
「追放。後、拘束。しばらくは気ままに過ごせ。私より先に出国することは固く禁ずる。以上」




