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侯爵令嬢の華麗なる追放劇  作者: 文字塚
第1章 侯爵令嬢の華麗なる追放劇
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第24話 可愛い後輩

「ではエルカ・ライン・アールブルト、前へ」


 陛下直々のご指名だ。

 玉座の前でカーテシー一つ、胸を張り堂々とその場に立つ。


「エルカ・ライン・アールブルト侯爵令嬢。そなたを追放する」

「はっ!」

「気合いは必要ない」

「必要ですわ」

「そうか。罪状を告げる。ゲッツア」

「はい」


 と応じたが、ゲッツア殿下はそれきり口を開かない。やはり考えごとをしているのだろうか。

 見かねたミーシャが、


「後輩の私からよろしいでしょうか」


 口を挟んだ。陛下は重々しく頷く。


「ハラスメントの数々は、私達を深く傷つけました」

「ほう、そうなのか。ハラスメントとはなんだ」

「何かを無理強いする迷惑行為、とお受け取り下さい」

「よかろう。それは追放に値するか」

「しません。だけど先輩が望むなら、叶えてあげたい!」

「気持ちは受け取ろう」

「私からも!」


 アリスまで前に出る。いいのに、罪状なんてなんでもいいの。これは儀式、私が追放されるという儀式なのに。


「エルカ様は引っ込み思案な私をいつも気遣ってくれました」

「そうか」

「一発ギャグも出来るようになりました」

「ほう、やってみるか」

「一発ギャグハラスメントです」

「よく分からないが、正直すまない」

「いえ、スベったことしかないので、やりたくないんです。キャラじゃないって」

「そうか」

「根性をつける為、王宮への落書きも教えくれました」


 アリス、それマジな告発。


「そうか。何を書いた」

「一般人には絶対伝わらない前衛的な風景画です」

「ふむ、規模は」

「壁いっぱいに。衛兵さんの何人かが左遷されたって聞いてます」


 そんな大事になってたの!? 聞いてない聞いてない!

 アリスを鍛える為やっただけなのに! 完全に遊び半分!

 左遷だけにさーせんではすまない!

 まずい、しれっとしよう。真顔に努める。真顔は正義。真顔の神は全てを受け入れる。


「すぐに取り消そう。いや、罰を軽減する。よく正直に話したな」

「ありがとうございます。ペンキだから取れにくかったと思います」

「ふむ。つまり、落書きハラスメントだな」

「いえ、器物損壊です」

「なるほど確かに。私の胸に留め置こう」

「本当にありがとうございます!」


 ふっ、過去のバレてない罪を暴露しやがった。アリスめ、本当に健気な娘。とりあえず揉み消し成功。よくやった。後で飴玉を買ってやろう。


「ゲッツア、何かないか」

「はあ、あると言えば無理になら」

「もうなんでもよい」

「主義信条を曲げろと仰いますか」

「曲げて頼む」


 陛下が視線を下げている。立場上最大の譲歩だ。今更だが、本当に儀礼的。

 ゲッツア殿下は私の真横に立ち、話しかけてきた。


「年若い娘が無断外泊常習犯らしいな」

「左様でございます」

「男と夜を共にしたとか」

「何度も。テントは一つ運ぶだけでも大変ですから」

「許可も取らず国外に出たな。相手方の許可は」

「何もしていません」

「ルナリア最南端の眺めはどうだった」

「血塗れの魔獣を除けば、美しい光景でした。ペンギンを初めて見ました」


 あれは確かに可愛かった。ペンギンの為に魔獣を狩ったようなものだ。


「エストバルはどんな様子か」

「エストマ三国は限界を迎えるでしょう」

「西と東の流通路、アルタニアは」

「近々政変が起きるかと。もう終わったかもしれません」

「聖王国ナルタヤはどうであった」

「分裂含み」

「勇者はナルタヤについたと聞くが」

「ナルタヤが勇者についていけません。ナルタヤの誰かが、勇者を御せれば話は変わります」

「ふむ」


 一言残し、殿下は何やら口ごもっている。

 これでは陛下への簡易的な報告だ。

 ゲッツア殿下、遠慮はいりません。

 顔は前、視線だけを向け促す。

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