第22話 仮説
「エルカ、君はこれをどう受け取る」
陛下に問われ、率直に応ずる。
「南ルナリアには既に裏切り者がいる。役に立たない者は必要ない。力を持つ者が戦わねば誰が戦う。俺はそれも裏切りとする。よって裏切り者は絶対に許さない」
まるで自分の台詞のよう、すんなりと出てくる解釈。だが、
「それは君の心象風景だ」
ハラルド陛下はあっさりと否定した。まるで理解が足りていないと言わんばかりに。
「失礼ながら、勇者の行動から矛盾ない解釈です」
「殺人鬼呼ばわりだからな。事実だが、それなら騎士団も私も同じだ」
「そんな……! 騎士団は職を賭し任務を遂行するのみ。私だって、人は殺したくない!」
「裏切れ、好きなだけ」
陛下の言は、まるで私と噛み合っていない。何を仰って。
「何を仰っているのか、分かりません」
「勇者の真意だ」
……意味が分からない。奴ははっきり、裏切り者は絶対に許さないと私に言伝てた。
「迂遠で分かりにくかろうが、お陰で今が見えてきた。君が考えるよう、ルナリア大陸には裏切り者が大勢いるのだろう」
「残念ながら」
「好きに裏切れ」
「いえ、それでは示しが、勝てるものも勝てません!」
「エルカ、君は今日何を見た」
何って、突然何を言い出すの。私は、私が原因とはいえ婚約者に裏切られ、ずっと諸侯に妨害されてきた。
だから私は、この場をゲッツア殿下に設けていただいたのだ。最大の裏切り者を糾弾し、この国のゴミ共を一掃し、転生者をあぶり出し仕留める為!
ふっとラムダの顔が浮かんだ。
彼は裏切り者じゃない。私が悪いんだ。
そして彼は、颯爽と去って行った。
――経緯を、恥を晒しても彼は告白の道を選んだ。
「分かるか。裏切るには理由があり、裏切りを決断させる手段がある。スズキ・マイケルのように心操る者もいよう」
「でも、それでも皆が結束しなければ……」
「ルナリアはまとまらん。まとまった試しがない。今この瞬間、魔族に生きたまま食われる人々がいようと、関係なく」
それではどうしろと。奴らのやり口を分析する為に放置するというの?
「勇者が言いたいことは君と変わらない。強さには鋼の心も必要だ」
「許せと、仰るのですか」
「どちらでもいい。好きに裏切れ、都度判断する。叡山を焼き払った第六天魔王の如く」
「彼は人質を取っていました。そして最期は、側近による裏切りです」
「勇者は武将ではない。私も君もだ。一つの仮説を、奴は提示している」
「なんです?」
「転生者は手を組めない。裏切りを恐れるあまり、どんな能力を持つか分からぬ同じ転生者を遠ざけているのではないか、と」
そんな……でも確かに、転生者の集団を私は知らない。もしいたら、恐らくルナリアはもっと早く陥落している。
私はそれを「異世界に転生した夢を、誰かと共有したくないから」と考えていた。
だけど違う、そうこれには私も聞き覚えがある。
類似するが、見方を変えれば「自分だけのストーリーを求める者」
「陛下、つまり……」
「そうだ」
「俺tueee!」
ハラルド陛下は深く頷き、ミーシャやアリス、ゲッツア殿下は首を傾げている。
だけどこれ、やっぱりテンプレじゃないか!
あいつらにはテンプレ縛りでもあるの?
そこが狙い目?
「仮説だ。逆手に取られ転生者の群れに囲まれても責任は取れない」
「はい、分かっています」
だが一考の余地はある。なぜ転生者は魔族についた。冒険者ギルドから始めても、結局あちらに行き着くのはなぜだ。
これからも多様な転生者と出会うだろうが、転生者狩りの第一人者、勇者の仮説は面白い。




