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あの季節に

掌編

 

「ヒガンバナって、あたし好きだなー」


 隣で彼女がそう言った。視線は人の家の庭に咲いている向日葵を捕らえている。

 僕は苦笑しながら、「そうなの?」と問い返した。


「不吉だ、って言わない?」

「言うけどー、大振りで、果敢無げで、秋の情景によく合いそう」


 彼女が歩みの中にステップを加えた。栗色のセミロングがそれに合わせて跳ねて、バックの青空ごと綺麗だと思った。

 迷信みたいなものを関係なしに物事を評価できるのって良いことだろう。彼女がそう言うと、自分でも少し特別な感情を抱ける気がした。

 今までずっと、その花は避けてきたけれども。


「しづきに似てるし」

「僕に?」

「うん。しづきはー、格好よくって頭もいい」

「そんなことないよ、」


 人間性も出来てる。先に行っていた彼女がくるりと振り返り、こちらの鼻先に指をさした。そこまで褒め倒されるとどんな顔をしていいのかわからない。

 だけどね、と彼女は続ける。


「なんか消えちゃいそうにみえるんだ、」

「———」

「そんなしづきが大好き」


 少し悲しそうな笑顔から普段の笑顔に戻って、彼女はとんでもないことを言い残して走りだした。

(ぼくも…そういう君が好きだな)

 彼女はくるくると表情を変えて、やさしさに溢れた言葉を紡ぐ。思慮深い。花に例えるなら——なんだろう。今は彼岸花の赤い花弁しか頭に浮かばない。

 一面の赤い花を想像すると、彼女と二人でみたいと思った。それを去年思っていたら、いい思い出が出来たのかもしれないけれど。



『あの季節に』

(僕はもう、この世にいない)

20100513

改題

原題は素材サイトよりお借りしていました

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