終章幕間 打ち上げ大晦日
2012年12月31日(月)22時 清子ンち
最後のスクールライフが終わった。事後処理後、主要人物7人「雅史」「清子」「ラファエル」「ダイアナ」「ハイペリオン」「ハンナ」「エドガー」は皆揃って「清子ンち」で打ち上げを始めることになった。新派閥「桃姫FC」を足止めしたままフェードアウトした2人「和子」「仁雄」は真っ先に「清子ンち」で待機していたらしい。新派閥「桃姫FC」3人は今頃、「清子ンち」の庭で縛られたままだ。当日に一度学園に足を踏み入れなかった3人「マイケル」「マデリーン」「シチメン」のその後についてだが「シチメン」の姿はなく、「鵲親子」曰く「正しいルートに戻るべく人知れず離れた。」とのこと。これで合わせて11人。見せ場はないまま置き去りされた6人「杏璃」「健太」「源郎」「典子」「魂二」「アーサー」は無事らしく、何食わぬ顔で「清子ンち」に上がり込んだ。これで17人。年が明けた3日後に学園長「ラザール夢ノ橋」をE.G.本部に護送する予定。護送準備を済ませた4人「ラファエル」「ダイアナ」「ハイペリオン」「エドガー」は、「清子ンち」の「清子の部屋」で打ち上げを始める。
彼女の部屋には、ゲーム用として使われているブラウン管テレビに加え、昨年より番組を観るために新たに設置された液晶テレビ(22RE2)、デスクトップに自分用のラップトップ(LL370/MG OS:Longhorn Vista)、テーブルに蔵出しビデオゲーム8bit(NES)が置いてある。今この部屋にいるのは「清子」「雅史」「ラファエル」「ハンナ」「和子」「杏璃」「健太」「源郎」「典子」「魂二」「アーサー」。「仁雄」は「エドガー」、「ハイペリオン」とともに庭で拘束している新派閥「桃姫FC」を見張っている。「ダイアナ」は入浴中。「鵲親子」こと「マイケル」と「マデリーン」はリビングで「清子」の両親「澄子」「ケネス」とともに大晦日恒例の番組「笑ってはいけない系」を18時30分からずっと見ている。
「(ラファエル:)...待たせたな。さて、皆が揃ったところで打ち上げを始めようか。」
「(清子:)ラファエルさん、あの学園は終わってしまった以上、どの学校に在学していないわたくしらはどうすればいいのです?」
「(ラファエル:)...俺にはわからん。これからのことはハンナに聞きなさい。」
「(ハンナ:)私は2年前をもって中退した。専門外なので、和子さんに聞いて。」
「(和子:)面倒な手続きをしなかゃならないし、もう。清子さんはどうして3年前、あの学園の誘いに乗ったのでしょうか?」
「(清子:)あの頃のわたくしはただ、いけ好かない貞夫から距離を取りたかっただけです。」
「(和子:)ああ、あの時の、清子さんがあの学園に編入する前の、失恋したあの貞夫くんですね。2年前の事件があってか、あの人は今、どの高校にも通ってないらしいですよ。もしよかったら、イイんちょうさんの母校に転学しましょうよ。」
「(清子:)...そうですわね。あの人がいないなら問題ありませんし、そうしましょうかね。」
「(ラファエル:)よし、決まりだな。残る6人はどうする?特に見せ場のない脇役、君らのことだ。」
見せ場のない脇役とはモブ同然の6人「杏璃」「健太」「源郎」「典子」「魂二」「アーサー」のことを指す。
「(杏璃:)...実父とともにスイスに引っ越します。」
「(健太:)僕は杏璃ちゃんと一緒だよ。」
「(典子:)...学校やめる。転学するカネないもん。」
「(源郎:)同じく、おれは学校やめる。たこ焼き屋開いて資金稼ぎする。あんちゃん、悪いな。」
「(魂二:)僕は麗下姉さんの母校に転学しようかな。清子先輩、よろしくてよ。」
「(アーサー:)私は弟のいるフランスに引っ越します。しばし...いえ、おそらく永遠の別れです。」
「(ラファエル:)...5人は中途退学するとして、最年少らしき者は風紀委員長の母校に転学か。」
「ラファエル」の反応はそれだけだ。
「(雅史:)しばらくの間、会えないのね。1年後にまた集まろうね。」
「(清子:)それより、ダイアナさんが丁度風呂から出てきたようですし、わたくしの番ですかね。」
風呂上がりの「ダイアナ」。「清子」は風呂に入るとする。
「(清子:)雅史さん、わたくしの風呂タイムが終わったらあなたの番です。時間いっぱいお湯に浸かりくださいませ。」
「(雅史:)あ、うん。お風呂いってらっしゃい。」
「清子」は風呂入りに部屋を出る。ここからは「ダイアナ」トークの時間だ。
「(ダイアナ:)話すことは何もないし、ニューヨークじゃないこの場所でどんな大晦日かなって。」
「(雅史:)大晦日といえば、年越し蕎麦かな。ボール・ドロップはさすがにないけど、蕎麦を食べて、年明けを待とう。」
「(ダイアナ:)...蕎麦は、まだできてないじゃん。できそう?」
「(ハンナ:)それなら3分用意できる。ちょうどŚledzie w occie(ニシンの酢漬け)出来上がったので。」
「(雅史:)姐さん、蕎麦持ってきてよ。」
「(ハンナ:)まずは3人ずつ持ってくる。ん...ふふふふ。」
くすっと笑う「ハンナ」は蕎麦を持ってくるために部屋を出る。
「(雅史:)蕎麦が待ち遠しいね。」
「(ラファエル:)ほう、年越し蕎麦やらは美味なものか?」
「(雅史:)それも姐さんが用意してくれるそうだからね。」
「(ラファエル:)...気短に待つとするか。」
気短に待つことで3分後、「ハンナ」が戻ってきた。
「(ハンナ:)生唾の湧く蕎麦をどうぞ。」
「(雅史:)待ってました、姐さん特製年越し蕎麦。姐さんの料理は相変わらずおいしいよ。」
「(ラファエル:)これが、年越し蕎麦なのか?」
「(ダイアナ:)酸っぱそうなニシンを乗せただけじゃない。」
「雅史」はもう食べている。
「(雅史:)ンまぁぁあいぃぃ!!!!海老天が売り切れたのは残念だけど、やっぱおいしい。」
「(ラファエル:)...おでんの具材を流用したボルシチといい、シュニッツェルの皮を被った揚げ握りライスといい、奇妙な料理を作るとはな。」
「(ダイアナ:)...ごめん。なんというか、おいしくない。健太、あげる。」
「(健太:)...ハンナ姐さんの料理はもうまっぴら。」
「(ダイアナ:)...じゃあ食べてくれる人いる?」
他のモブ5人でも「健太」同様、マズい料理欲しくない顔をしている。
「(ダイアナ:)...清子が風呂上がるの待つしかなさそう。」
「(ハンナ:)...あなたが残した私の料理はどこに行くと思う?」
「(ダイアナ:)ガービッジ缶に行く...と思う。」
「(和子:)だったらわたしがおいしくいただきますよ。こう見えてわたし、食い意地なキノピオ(Toad)ですし。」
「(ハンナ:)...和子さん、ダイアナさんの分を食べ尽くしてほしい。」
「和子」は「ダイアナ」が残したニシン蕎麦を食べる。食い意地な「キノピオ(Toad)」がニシン蕎麦を食べてるかのように貪る「南和子」という女。
「(ラファエル:)俺はもう食べ終わってる。なかなかのごちそうだった。」
「(雅史:)姐さんの料理は最高なくらいおいしかったよ。...そろそろ清子が風呂から上がる頃かな。」
15分経ったのか、風呂から上がった「清子」がパジャマ姿になって戻ってきた。
「(清子:)雅史さん、時間いっぱいお湯に浸かりくださいませ。」
「(雅史:)あ、うん。入ろうかな。」
「(ラファエル:)さては風紀委員、己の浸かり湯で雅史の好感度を上げる算段か?」
「(清子:)...何のことですの?雅史さん、気にせずにお入りください。」
「(雅史:)...んふ、ふふふ。」
選手交代のごとく「雅史」は風呂入りに部屋を出る。
「(ダイアナ:)清子、何か面白い話ない?」
「(ラファエル:)面白いことを言ったほうがこの場の空気のためだ。」
「(清子:)別に面白いことはありませんの。」
「(和子:)...やっと食べ終わった。ハンナさんの料理は奇妙なもので味が混沌でした。」
「(清子:)...んんっ。(苦笑)」
「(和子:)...?皆さん、清子さんOUTとか言わないです?」
「(ハンナ:)じゃあ私が引っ叩く。」
「ハンナ」は笑った人の尻を叩く...と見せかけて手刀打ち。
「(清子:)痛っ!!」
「(和子:)お尻じゃなくて両肩に岩山両斬破もどきを喰らうとはですね、痛々しいな。」
「(ハンナ:)今、笑いかけた?和子さん、OUT。」
「(和子:)今のは冗談ですって!!あ、ほらっ。8bitゲーム遊びましょうよ!!笑ってはいけないごっこはここまでにして、2人プレイで!!」
「(ハンナ:)...どのゲームで遊ぶ?」
「(清子:)...とりあえず、配管工でPhase99まで進めるか、遊んでみましょう。」
2人は8bitゲーム「配管工」でPhase99をゴールに遊び始めた数分後、気がつけば23時57分まで経ってしまった。
「(清子:)ゲームオーバー。結局Phase32しか進めませんでしたわね。」
「(ハンナ:)それにしても、雅史くん何をしているのかしら。風呂から出てきたはずなのに。」
「(ダイアナ:)キャプテンは今頃、リビングにいるよ。清子の両親とともに新年を迎える構えをしているんじゃない?」
「清子」はすぐに部屋を飛び出て、「雅史」のいるリビングに向かう。「清子」に続き、ハンナも部屋を飛び出て、さらに「ダイアナ」。そう、ゲームに浸っている間、「ラファエル」と「和子」、モブ6人はリビングに移動したらしい。リビングに「清子」の両親「澄子」「ケネス」、「鵲親子」こと「マデリーン」と「マイケル」、風呂から出て数分経っていて、スタンバイをしている「雅史」、一足先にリビングに移動した「ラファエル」と「和子」とモブ6人「杏璃」「健太」「源郎」「典子」「魂二」「アーサー」。それと庭にいる3人「仁雄」「エドガー」「ハイペリオン」は引き続き、新派閥「桃姫FC」の監視を継続している。残り時間はあと3分。携帯電話(iPhone 4S)で時間を確認する「仁雄」。
「(仁雄:)終わりが近づきつつあるが君ら3人、何か言い残すことは?」
「(桃姫:)私達は学園長の心から生み出された存在。私はもう...。」
「(志乃:)...これで学園も終わりだ。煮るなり焼くなり好きにしろ。」
「(仁雄:)君らを介錯する気はない。そのまま見届けるだけだ。」
「(ハイペリオン:)ま、悪く思わないでくれよな。」
「(エドガー:)別れの挨拶はそれだけですか。では、来世でまた会えるといいですね。」
「(桃姫:)...スターになってやり直したいな。」
2013年1月1日(火)0時 清子ンち
そして新年を迎えた。予定通り、2013年開始と共に「樋串武学園」は一夜にして消え去った。学園消滅に続き、学園の主要生徒13人が消えたほか、学園に関する出来事もモブ生徒6人の記憶から消え、完全に忘れ去られた。留置された「ラザール夢ノ橋」は懲りずにもう一度再建するために別の次元に移動し、姿を消した影響なのだろう。
「(清子:)新年迎えました、あけましておめでとうございます。メリークリスマスからの謹賀新年ですわ。」
「(雅史:)清子の風呂は心地よかったよ。今年もよろしくね。」
「(ラファエル:)お祭り騒ぎしたいところだが、俺らジャパン外組はそろそろ帰らなければならんからな。」
「(ダイアナ:)...ねえ見て、ミュゼットから年賀状だよ。今届いたとこ。」
「ダイアナ」のiPhone 3Gにメールが届いたらしく、内容は下記の通り。
//2013
//あけましておめでとう!!今年もダンガン夜露死苦!!
//レベッカ誕生5周年
//ダイスとレベッカは同種
//二つ結びを解除すると、レベッカにそっくり!!
//「共有せよ」とのことだから、清子もダイアナも雅史も。
「(清子:)そういえば、わたくしも同じようなものが届きましたわ。」
「(雅史:)僕も。レベッカにアマガエル軍曹好きの姉さん、なかなかの年賀状だね。」
ところが、3人「ハイペリオン」「エドガー」「仁雄」が家に上がり、リビングに入ってきた。
「(雅史:)あ、超官にハイペリオン、仁雄(ヒトオ?)じゃん。もう済んだのね。」
「(仁雄:)......。」
「(ハイペリオン:)悪いな、イインチョーは今、混乱しているみたい。そっとしておこうや。」
「(エドガー:)そういうことです。異変に気づく者は何人かいるはず。」
「(清子:)わたくしは何も感じませんので。変わったことは特に何も。」
「(雅史:)僕も、変わったことはないの。」
「(ダイアナ:)あたしは何も。」
「(ハンナ:)...変わったことは特にない。」
「(ラファエル:)俺はいつも通りだ。ラザールのことは、俺が責任を持って護送するからな。」
「(杏璃:)......ラザールって、誰のことです?」
「(ラファエル:)ラザールとは心より生まれし学園の学園長を指す。跡形もなく消え去ったがな...?君ら、ラザールのことは存じてるんだろう?」
「(典子:)あんな人いたっけ?」
「(源郎:)んなことより誰だおまいら。」
「(魂二:)みんな誰よ?僕、帰らないと。」
「樋串武学園」に関する記憶はきれいにさっぱり消えてなくなった。「ラザール夢ノ橋」が消え去った影響によるものだろう。3年間の記憶を失った3人「源郎」「典子」「魂二」は、「清子ンち」から出ていった。
「(清子:)...杏璃さん。学園長のこと、覚えてなくて?」
「(杏璃:)...誰ですか?あなたは。」
「(清子:)誰って?わたくしのことがわかりませんの!?あれだけ毛嫌いしてたのに、誰とはどういう...。」
「(和子:)清子さん、この2人は誰ですか?」
「(清子:)和子さん、まさか杏璃さんと健太さんのことを...。」
「(雅史:)2人とも。僕のこと、わかるよね?」
「(杏璃:)雅史くんはどうして、知らない人の家にいるんですか?」
「(健太:)それより、僕の体格変わってるんだけど。」
「(ラファエル:)学園上での交流で発生した生徒同士の関係などは転校先で許可されていない限り持ち出すなとは、このことか?」
「(ハイペリオン:)だからといって、学園外の連中の記憶まで消すなんてな。」
「(清子:)...カメラ持ってきます。」
「清子」はコンパクトデジタルカメラ(IXY DIGITAL 95 IS)を取りに自分の部屋に移動。30秒もかからず早急に戻ってきた。写真、ビデオデータはバックアップ済である。
「(清子:)幸い、3年前の海水浴場のデータは残ってました。どういうことですの?」
「(ラファエル:)...なるほどな。3年分の記憶はなくなっても、手元に残された遺物は本物だろう。それを手放さない限り、忘れることはない。すべては心の中だ。...とはいえ、混乱している者もいるだろうだが、皆にねぎらいの言葉をかけてやってほしい。退出すべき者からいこうか。」
退出すべきもの、あの3人「杏璃」「健太」「アーサー」のことだ。
「(清子:)ねぎらうといっても、そもそも2人は何もしていません。3年分の記憶が吹っ飛んだ以上、ねぎらいの言葉をかける必要ありませんの。」
「(健太:)何を言っているのか、よくわからないや。帰ろう。」
「(杏璃:)帰りますか。」
3年分の記憶のない2人は「清子ンち」から出ていこうとする。
「(清子:)3年前の海水浴場、夏祭り、体育祭、文化祭、あなたたち2人は覚えてなくても、3年分の思い出は本物です。それだけは忘れないで頂戴。」
「(杏璃:)......。」
2人は無言のまま出ていった。残るは「アーサー」だが、彼の場合は?
「(清子:)アーサーさん、前にも語り合いましたわよね?将来の夢とか、ご自身の素性とか、使命とか。」
「(アーサー:)...申し訳ありませんが何のことだか。...どちら様でしょうか?」
「(清子:)...わたくしがあなたに代わり、邦雄さん達(他にジャックさん、ベリンダさん、朱美さん、劉聡さん)5人に会ってみせます。それまでに、時間をかけて記憶を取り戻すことに専念してください。」
「(アーサー:)...よくわかりません。それに雅史様、よく見ると幸せそうですね。」
「(雅史:)君は確か、生徒会直下の帰宅部側勢力討伐隊・風紀委員だったよね?学園に編入する前までは僕と同じ中学校の生徒会会計。あの頃は君に声をかける余地はなかったけど。」
「(アーサー:)知らない間にここまで成長するとは、雅史様は変わりましたね。ツヨシ様もきっと、成長ぶりに驚くはずです。」
「(雅史:)そういや、ツヨシはどうしているんだろう。誰か知ってる?」
「(アーサー:)...あれ?ツヨシ様の現在がわかりません。何かが欠けているようで思い出せません。」
「(雅史:)...とはいえ、3年前の11月を最後にずっと音信不通で、ツヨシの現在を知りようがないし。Twitterやってないし、メール送っても返事してこないし。永遠の別れとはそういうものかな。」
「(アーサー:)思い出せなくて申し訳ありません雅史様。私はこれで。...お幸せに。」
「アーサー」の意味深な言葉を残して、「清子ンち」を出ていった。彼の記憶から3年分の活動記録はなくなっても、写真・資料・日誌などデータとして残された実物は本物、「雅史」の顔を見て思い出せなくても、「アーサー」の心の奥に微かに残っている身体的記憶(身体で覚えるもの)は本物ということか。
「(雅史:)6人とも出て行ったね。あとは和子と仁雄(ヒトオ?)。」
「(和子:)...この人が噂に聞く、清子さんが河川敷で気になっていたキャプテンさんですね。」
「(雅史:)...3年分の記憶が吹っ飛んだのね。3年前の海水浴場のことは...。」
「(和子:)あれれ?変ですね。海水浴場と夏祭りのことは覚えているのに、人に関する記憶がないなんて。イイんちょうさんはわかります?」
「(仁雄:)...悪い、彼の人物像がわからない。体育祭や文化祭のことは覚えているはずだが...。」
「(清子:)風紀委員長...。」
「(ハンナ:)雅史くんのことがわからないとは、寂しい。」
「(清子:)ミュゼットさんに聞いてみます。」
「清子」は携帯電話(P-03A White)を手に、「ミュゼット」に聞いてみることに。
「(清子:)ミュゼットさん、ありがとうございます。メリクリからの謹賀新年ですわ。...それで確認したいことがありまして。雅史さんのこと、わかりますの?」
「(ミュゼット:)何言ってるのよ。雅史のことはもちろん、杏璃と健太のことは私が何でも知っているもの。」
「(清子:)...じゃあ樋串武学園は?和子さんや赤毛さん、雪郎先生とともに昨年の体育祭を観戦したはずです。」
「(ミュゼット:)モチのロンよ。ちゃんと学園のことはわかる。雪郎が学園のことをよく語ってくれたおかげかな。アネさんもきっと、清子のことも。何にせよ、レベッカの加護があらんことからね。」
「(清子:)...よかった。」
「(ミュゼット:)...なに嬉し泣きしてるのよ??覚えてるんだし、なにも心配することはないって。雪郎のほか、全部レベッカのおかげなのよ。」
「(清子:)うぅ...。」
「(雅史:)電話代わる?」
嬉し泣きしている「清子」に代わり、「雅史」が彼女の携帯電話を手に「ミュゼット」と話す。
「(雅史:)ミュゼット、あけましておめでとうリーヨ。元気にしているかな?実はね、杏璃と健太の記憶が3年分吹っ飛んだのよ。学園での思い出も全部。」
「(ミュゼット:)へぇー。でも、記憶を持つ私って恵まれている?」
「(雅史:)僕にはよくわからないよ。恵まれているにせよ、僕たち7人は唯一の当事者だからね。...杏璃と健太は僕の幼馴染として作られたものだって学園長がデタラメを言ってたような気が。」
「(ミュゼット:)デタラメを言う学園長...ってあれ?そもそも学園長って誰のこと?学園のことはわかるけど、学園長は誰なのか私にはわからなくて。」
「(雅史:)?学園のことはわかるとはいえ、君まで学園長忘れるとは。雪郎先生も例外じゃない可能性は否めないかも。」
「(ミュゼット:)雪郎が学園長をどうのこうの一言も言ってないからかな。...それはそれとして。改めて、あけおめ。今年もよろしく。そろそろ寝る時間だから切るね。」
「(雅史:)あ、今年もよろしくね。またのご機会に。」
長電話をしては通話料が跳ね上がってくるので電話を切る。
「(雅史:)わかったことは、推測だけど誰も学園長を存じてないみたい。」
「(ラファエル:)...そうか、そうだな。当事者は俺ら7人だけってことになる。よし、ならば俺が樋串武学園に代わる学校を作ろうではないか!!」
樋串武学園に代わる学校設立すると意気込む「ラファエル」。
「(ラファエル:)後継学園の立案についてなどはtwitterアカウントの方まで問い合わせてみろだと?ハッ!!ラザールがいなくなった以上、連絡しようがない!!勝手ながら設立させてもらうぞラザール!!名は、『シティデベロップメント・シンクロ高校(CDS)』!!俺の地位で、財力と富と権力で、セレーネを第一生徒として迎え入れてみせる!!」
「(ダイアナ:)ラファ兄、あたしらに学校を設立する金あるの?」
「(ラファエル:)それは...超官、学校設立に手を貸してほしい。」
「(エドガー:)ええ、もちろんです。ベストを尽くしましょう。」
「(和子:)あのー、わたしら帰っていいですか?」
「(ラファエル:)帰りたりゃ帰るがいい!!記憶のない君ら2人に用はない!!」
「(ハンナ:)私はここに残る。仁雄くんは先に帰って。」
「(仁雄:)...朝、早くワルシャワに戻らなければ俺、君の父に叱られる。俺ンちに戻ろうか、可愛い和子。」
「(和子:)いつでもお供にしますよ、イイんちょうさん。」
風紀委員2人「仁雄」「和子」は「清子ンち」を後にし、「増田宅・シティ風紀委員拠点地」に戻っていった。
「(ラファエル:)さーて、記憶喪失かつお荷物同然の厄介者はいなくなった。残るは俺ら7人のほか、その会話をただ聞いているだけの親子だが、何か面白いことはないか?」
「(マデリーン:)学園長、学園長!!」
「(ラファエル:)ほう、ラザールがこの世界からいなくなってなお、やつのことを存じている者がいたとは。」
「(雅史:)うん、そうだね。実際一度も学園長に会ってないのに、それは既視感によるものか、鹿目タツヤの真似事か。」
「(清子:)...マデリーンさん。学園長とはどんな人物ですの?(涙」
「(マデリーン:)ほら、カップ麺の人のこと。そこのブラザーが持っているカップ麺は学園長がよく食べてたもの。」
「(ラファエル:)戦利品おしるこヌードルのことか?護送準備ついでにラザールから掻っ払った、このカップ麺のことか?どうしても食べたいのか?ならよろしい。お湯を沸かすので、しばらく待ちなさい。」
「(マイケル:)そのラザールっていう人物、夢の中の人物か何かかな?夢の中で知ったのかな。」
「(清子:)夢の中...[涙を拭う]わたくしら7人はこうしてスクールライフという夢を見たのです。もう十分いい夢を見たくらい楽しかったものでした。杏璃さんと健太さんなど7人以外の方の記憶が消えた今、続きはもう見れません。」
「(マイケル:)3年間、君の同級生とともに築き上げてきた思い出は夢と消えたと。」
「(清子:)...そうなりますね。でもわたくしにとって、築き上げたものは忘れられないものでして。恵まれなかった杏璃さん達にとって、つまらない青春はどうでもいいものだからかもしれません。」
「(雅史:)それは違うと思う。実際、あの学園ならびに学園長に深く関わった出来事や記憶は僕たち7人以外の、外部関係者や部外者を含めたみんな、きれいにさっぱり消えてなくなる。勘繰り、深掘りしないために。」
「(ラファエル:)あの学園の話題を持ち出さぬよう関係者の記憶を消した。それだけだ。小娘よ、3分待ってから食べなさい。」
「(マデリーン:)これが、ラザールのカップ麺。」
「(ラファエル:)それにしても、夢の中でラザールを知ったにしろ、謎が深まるばかりだ。実際、親子がラザールと対面しているの見たことがない、現実でも一度たりも会ってないのにな。」
「(マデリーン:)なんとなく。第六感、単なる勘かな。」
「(ラファエル:)...妙な子だな。」
「(ダイアナ:)それよりラファ兄、朝早いんじゃないの?仕事始まるし。」
「(ハイペリオン:)御主人様、超官は先に寝ましたよ。朝早く出るために。」
「(ラファエル:)俺はまだ起きとく。2人は先に寝なさい。」
「(ダイアナ:)うん。目覚まし掛けとくから。」
「エドガー」は先に就寝している。「ダイアナ」と「ハイペリオン」は「ラファエル」より先に就寝することに。
「(ラファエル:)さて、そろそろお開きの時間だな。風紀委員...清子の両親よ、その節はお世話になりました。」
「清子」の両親「ケネス」「澄子」は笑みを見せる。
「(ケネス:)うちの娘がいつも世話になっていて、周りにいい友達がいて、恵まれているね。」
「(ラファエル:)は、はあ...。」
「(澄子:)雅史のことをお願いするかしらね。」
「(ラファエル:)...言われるまでもない、俺が雅史の面倒を見ます。」
「(ハンナ:)雅史くんの姐分であり、保護者でもある私に代わり、ラファエルくんが面倒を見てくれるとはさすが。あの時(2010年春)、私情があってから長い間、雅史くんに何もしてあげられなかった。」
「(ラファエル:)なんだ、まだ起きてたのか。朝早いんだ、早く寝なさい。」
「(ハンナ:)雅史くんの本心を確かめたい。雅史くん、清子さんをどう思っているの?」
「(雅史:)...。」
「(ハンナ:)好きになったのはわかっている。清子さんとは気が合っていて、その清らかな心に惹かれ、好意を抱く。私にとって清子さんとは仁雄くんの可愛い部下、ゲーム友達だった。雅史くんは私を姐のように慕ってくれた。私の胸に顔を埋めるほど。私の手料理をおいしそうに食べてくれた。でも雅史くんにとって、それはひとりっ子による寂しさを補完するための愛情表現に過ぎず...。」
「(ラファエル:)能書きは結構だ。雅史よ、清子を愛してるのか?実際はどうなんだ?答えなさい。」
「(雅史:)...。」
2人のクエスチョンに対する「雅史」は無言のまま。さて、発言を聞いている「清子」はどう動くのか?「清子」は確実に「雅史」を自分のものにしようと、自身の胸を触らせようと彼の右手を掴む。
この時、学園消滅に連鎖して花びらとなって消えたはずの「ローズマリー」が唐突に再び現れ、「清子」の手を掴む。召喚呪文を通さずに。
「(ハンナ:)戻ってこなくてもよかったのに。」
「(ローズマリー:)やっぱ、清子の傍にいたい。永遠の別れだと寂しいだし。それより清子、他にやり方があるはず。」
「(清子:)恋敵がいなくなった以上、雅史さんはわたくしのものですもの。」
「(ローズマリー:)確かに君の言う通り、恋敵がいなくなった。なにせ学園はもう存在しない。だが学園の防衛プログラムを通さず、こうして私は存在している。なぜなのかはわからないがな。」
「(清子:)不思議ですね。学園が消えて召喚できなく、呼んだ覚えはありませんのに。」
「(ローズマリー:)私はただ、雅史と清子の幸せが見たいだけだ。雅史よ、正直に申すのだ。」
「雅史」は自分の気持ちを「清子」に伝える内容を考えこむ。一方的に誘われる側ゆえか、恋愛感情の浅い、好意があるとは思えないがな。「ハンナ」を姐のように慕っているのは、ひとりっ子の自分の心の隙間を埋めるための愛情表現に過ぎない。
「(マデリーン:)やっぱり清子と雅史はカップル。」
「マデリーン」のそれだけの一言により、「雅史」の気持ちははっきりとする。
「杏璃」と「健太」は幼少期より彼の幼馴染だった。中学生になるにつれ、サッカー部の主要部員だった「ツヨシ」と「典子」との会話が頻繁にするようになっていて、仲間意識があるとはいえど、「杏璃」と「健太」の関係が疎かになっていった挙句、「清子」の介入によるものなのか、いつの間に彼の心から離れていってしまった。学園消滅と同時に、学園での交流で発生した幼馴染との思い出が消えた今、ひとりっ子である「雅史」にとって「清子」は、たった一つだけ最後に残った道しるべ。
「(雅史:)...清子。」
3年前の海水浴場と夏祭り(第一章)、デート(第二章)、勉強会(第三章)、「ハンナ」の文化祭(第四章)、翌年2010年のバレンタイン(第五章)、アトラス実家の滞在(第六章)、復学と共闘(第七章)、送別会(第七章幕間)、SKET夏休み(第八章幕間)。学園在学での交流で発生した「清子」との思い出を振り返る。全て彼女による一方的とはいえ、気づかないうちに「雅史」の内なる愛が芽生えたに違いない。無意識に接吻する動きをするものの、「清子」は彼より早く動き、キスを交わす。ここにいる皆は見た。双方の愛を。
「(マデリーン:)[おしるこヌードル食べ終えて]愛の証!!」
「鵲親子」、「ローズマリー」ならびに「清子の両親(澄子とケネス)」以外の者の反応はいかに?
「(ラファエル:)...人前でやることなのか?」
「(ハンナ:)......お幸せに。」
「(雅史:)げほっ...清子、僕の口の中の臭い平気?ニシンの臭いしたでしょ?」
「(ラファエル:)雅史、愛する者に対する言葉なのか!?」
「(清子:)わたくしは大丈夫です。愛さえあれば、これしきのニシンの臭みだって...。」
「(ハンナ:)清子さん、ごめんなさい。私のニシン蕎麦を食べさせて。」
「清子」は「雅史」が食べた「ハンナ」の手料理「ニシン蕎麦」の臭いに悶える。
「(雅史:)あ...。」
「雅史」の恋人は「清子」、今をもってカップル成立。それが答えであった。成立したところで打ち上げ大晦日はお開きとなり、この場の人々は腑に落ちたのち、就寝につくのであった。
2013年1月1日(火)朝早く ターミナル
いつもの空港で「清子」は「雅史」と「アトラス兄妹」、「ハイペリオン」、「エドガー」、「鵲親子」、「ハンナ」と「仁雄」を見送ることになると同時に、ねぎらいの言葉をかけてやることになった。まずは「ハンナ」と「仁雄」から。
「(ハンナ:)私はポーランドに戻る。そうでもしないと、お父さんに怒られる。」
「(清子:)記憶が抜け落ちた風紀委員長をよろしく頼みます。」
「(仁雄:)...雅史とその幼馴染のことは一切わからない。記憶が混乱していて申し訳ない。ハンナとの思い出を作り、2年前の空白を埋めるのが俺の使命。それだけは覚えている。」
「(ハンナ:)私はこれで......雅史くん。」
涙ながらに「ハンナ」は「雅史」を抱きしめる。当分の間、会うことはないことをわかってのこと。2010年3月の出来事によって彼とともに過ごす時間が大きく削がれてしまったこと、大きく成長したことに涙して。
「(雅史:)...姐さん...。」
「(ハンナ:)...何もしてあげられなくて、ごめんなさい。お幸せに......。」
「(仁雄:)I'll be back.」
「ハンナ」と「仁雄」は去る。その次は「鵲親子」。学園とは無縁な親子だが、どう言葉をかけるのやら。
「(マデリーン:)カップル、幸せに!!」
「(清子:)マデリーンさん、ごきげんよう。また次の機会に遊びに来てくださいませ。きっとまた会える、その時までは。」
「(マイケル:)縁があれば、また会えるさ。2人ともお幸せに。」
「鵲親子」は去っていく。残るはニューヨーク組5人「雅史」「ラファエル」「ダイアナ」「ハイペリオン」「エドガー」となった。
「(ラファエル:)俺らはそろそろ帰還しよう。シティデベロップメント・シンクロ高校(CDS)設立プランを練らなければな。」
「(ダイアナ:)元気でね、清子。そう遠くない日に、セレーネに会わせてあげるから。」
「(ハイペリオン:)最初は生徒会だけあっていけ好かなかったが、今は良き友人になったな。御主人様の学校設立を手伝わなきゃな。清子、元気でな。」
「(エドガー:)学校卒業までお待ちしております。それまでに良い成績を残せ。教師としての言葉です。」
「(雅史:)清子、その翌年2014年に結婚する日が来るまで待っててよ。」
「(清子:)ええ、卒業まで待ってますから。」
「ダイアナ」は「清子」を抱きしめる。
「(ダイアナ:)清子...あたしにはあなたが大切な親友......。いつかまた会える日まで...。」
「(清子:)...ダイアナさん......。」
3年間の物語を振り返り、涙する「ダイアナ」。彼女に続き、「ラファエル」も。
「(ラファエル:)...清子、今まで世話になった。卒業まで待ってる......。」
立て続けに「ハイペリオン」も。
「(ハイペリオン:)おかっぱでも愛らしく見える...それも悪くないな......。」
使命を果たし、解放された気持ち。その解放感、自由の身になった3人。涙して「清子」を抱きつく。つまり、3年間ぶっつづけて「ラザール」の調査に疲れているのか。その役目が終わった今、こうして話すのが最後であり、それが永遠の別れになると思うと、涙流さずにはいられない。それと最後に「雅史」は。
「(雅史:)清子、愛してる。」
その言葉に応えるのか、「清子」はまたもや「雅史」にキスを交わす。
「(清子:)雅史さん、その別れは一時的なもので、来年でまた会えます。わたくし、待ってますから。」
「(雅史:)...このミサンガを持ってて。婚約指輪のようなものだし、他の男に取られないようマジナイをかけて編み込んだものよ。」
「(清子:)すてきな贈り物ありがとうございます...。」
光り輝く彼の「トラスティマトリクス(Trusty Matrix)」を込めて編んで作った特別なミサンガは、いかなる場合でも他の男に取られない、御守のようなものであると同時に婚約の代物だ。
「(エドガー:)...そろそろ時間です。風紀委員...清子さん、来年までお待ちしております。」
「(ダイアナ:)さよならとは言わないよ!!セレーネを連れてでも!!」
「(ハイペリオン:)元気でな...とは言わない!!海の向こうへ飛んででも、会ってやる!!」
「(ラファエル:)学校設立した暁には、見学させてあげよう。清子、達者でな!!」
「(雅史:)清子、また会う日まで!!」
5人は航空機に乗り、ニューヨークへ飛んでいった。「清子」にとって身内に限らず外部の人に囲まれた3年間は恵まれたものであった。それともう1人、呼ばれてないはずの「ローズマリー」が床から出てくる。怪異だけに。皆が旅立つ前からずっと見守っていたらしい。
「(ローズマリー:)さて清子、名残惜しいが私はそろそろ。」
「(清子:)わたくしが呼んでないにもかかわらず、陰で見守ってくれたようで感謝のほかなくってよ。」
「(ローズマリー:)とはいえ、あの日、虚校忌譚以降...つまりだ。2012年1月9日月曜日始業式から君が召喚魔法を使わなくても私は自由自在に出入りできた。それからずっと君を見守ってきた。」
「(清子:)それに、あの学園は跡形もなく消え去ってもこの世界にいるのは驚きました。防衛プログラムとは全く関係ない、レベッカさんの加護があってこそ、この世界にいられる。まさに不思議ですね。それに、これからのことに関してはご心配いりません。わたくしは都立高等学校に籍を置き、運命のレールを元に戻すだけです。それに、わたくしら当事者7人以外の他の皆さんは学園に関する全ての記憶を消された今もきっと、何事もなかったかのように元の平穏な日常を送っているはず。いかなる時でも当事者7人は今までの出来事を忘れません。最後までご協力していただき、ありがとうございました。この恩は忘れません。ではごきげんよう。ローズマリーさん...平行世界のレベッカさんこと赤薔薇のアキンド......。」
「ローズマリー」は思い残すことはなく、ほっとした顔をして薔薇の花びらとなって消えた。当事者7人以外の全員は学園に関する全ての記憶を消され、全て元通り(学園編入前状態に戻した)になったことに涙してターミナルを後にする「清子」であった。
涙を流しながら腕にミサンガをつけて。泣き続けていく......。泣くほど何がどこが悲しいのかは、誰にも知らない。本人のみぞ知る。




