第九章 虚校忌譚(3)
2012年1月9日(月)始業式終了後 樋串武学園・自転車置き場
「(弦雄:)......。冬休みも明けて...呼び出しのひとつも食らうかと思ったけど、どうやらあの日のことはお咎めなし、というのとでいいみたいだな...よかった。」
冬休みを明けてなお、「虚校忌譚」のことは咎めてこないことに安堵する帰宅部幹部「サイスマン」こと「鎌田弦雄」。
「(杏璃:)あの...。」
「(弦雄:)ヒイイイイ!?」
背後に「杏璃」が立っていて、「弦雄」は驚く。
「(杏璃:)そんなに驚くことですか?うまく立ち回れたのならあたしのほうから言うことなんかありませんよ。」
「(弦雄:)...なんだ、放送委員長か。」
「(杏璃:)それより知りたいのはあの日の調査結果です。差しささえなきゃ聞かせてもらって構いませんか?」
「(弦雄:)帰宅部のお前なら、よし。いいだろう。まず、今回の異変の正体についてなんだが...。」
帰宅部幹部「サイスマン」こと「鎌田弦雄」は「杏璃」に「虚校忌譚」の正体を話す。
「(弦雄:)どうやら、この学園そのものの防衛本能...プログラムと言ったほうが適切か。そういうものが働いた結果らしい。」
「(杏璃:)...防衛プログラム?...この学園そのものに搭載されましたっけ?どうせ生徒会の連中が何かしたとか?」
「(弦雄:)そうじゃなくて、第一会長不在時にそんなのとしても何もならないんで。加えて上等部や例の勢力達の差し金でもない。あれはこの学園が『自らの意思で』おこなった防衛行動なのさ。」
「(杏璃:)...?」
「(弦雄:)特殊能力を持つ生徒達の学び舎として存在し続けてきたことが影響しているのか、あの出来事すべて、この学園が能力で引き起こしたものだったらしい。」
「(杏璃:)...つまり、この学園そのものが『自律した能力者』である...という解釈でいいのですか?」
「(弦雄:)そうなるな。敷地内のあらゆる事象を好きなようにできる能力...どういう基準でそれが発動するようになっているかはわからないが。」
「(杏璃:)......にわかには信じがたい話ですがあなたの調査結果ですし。あたしらみたいな身分の低い人間がいる以上、『学園』が意思と能力を得ようが不思議ではありません、というですか。変な輩や危ない輩は元々多かったけど、いけ好かない桃姫の煽動やいけ好かない先生(アレグロ雪郎)のような外部関係者の出入りが頻繁になったこともあって最近ますます増えてますからね。」
「(弦雄:)学校からの忠告かなにかか?これからどうなるんだ?」
「(杏璃:)......。なんとでもありませんか。元凶らしい元凶もいないのでは手の出しようがありませんし、対策ねろうにもまずこの話を信用しない輩が出てくきますし。あたしらで学園を刺激しすぎないよう気を配るくらいしかできないじゃないですか。それに、学園が怒るかもしれないからって魔女狩りみたいなことするのはまっぴらです。そういうのは『外』で十分でしょう。あたしはみんなともとも毎日笑って過ごしてもらえたらそれでいいんです。」
「(弦雄:)...いい話っぽくしてごまかしたな......。」
怪奇現象「虚校忌譚」の正体は、この学園の防衛プログラムとのことで話は終わるが、陰でその話を立ち聞きしている生徒が3人いる。いつもの3人「生徒会ガールズPlusインキュバス」、第二部の主人公である「清子」のほか、3月に留学満了が控えている「ダイアナ」と「ハイペリオン」だ。3人は胡散臭い真実を聞いて疑問を抱く。
「(清子:)あの日の怪奇現象がこの学園の防衛プログラムなら、どうしてローズマリーさんが出てきましたの?」
「(ダイアナ:)え?あたしだってわからない。赤いレベッカが出てきたという話は知らない。考えられるのは、この学園の防衛プログラムが範囲外(学園にまつわるものじゃないほう)の怪異を召喚したことくらい。」
「(清子:)かくなる上は、学園長に直接聞くしかありませんわね。ハイペリオンさん、急行でよろしくてよ。」
「(ハイペリオン:)あいよ。2人分を運ぶのは久々な気が。」
学園長「ラザール夢ノ橋」のいる部屋へと向かったが、肝心の「ラザール」は不在だった。
「(ダイアナ:)...ここにいられるのはあと3ヶ月しかないのに......ラファ兄...調べられなくてごめん......。」
「(ハイペリオン:)...俺とダイアナはニューヨーク州に帰らなければならないからな......。おかっぱ風紀委員、あとは頼めるか?」
「(清子:)ラファエルさんを含め、あなたがた2人の役目はわたくしが引き継ぐっということでいいかしら?」
「(ダイアナ:)この学園の異変や違和感に気づいているのはあたしらアトラス家3人のほかに、清子とキャプテンくらいかな。キャプテンがこの学園を去った理由は、清子にはわかっているはず。」
「(清子:)...?中等部卒業して、多様性を求めるべくラファエルさんのもとでホームステイくらいしか思いつきませんわ。」
「(ダイアナ:)...何も聞かされてないよね?憶測だけど、彼はそう感づいたからかな...。学園はもう長くはないって。」
「(清子:)根拠のない冗談を。情報源がない限り、閉校はありえません...と言いたいところですが将来あり得るようなので、学園長ならびにこの学園に関する調査はわたくしが可能な限りを尽くしますわ。」
「(ダイアナ:)信頼できるあなたがいて本当に良かった。安心して任せられる。」
2月19日(日)20時30分
この日は「アビス」こと「音無涼香」との関係を修復するべく説得するために、「シチメン」は組織「シャドウオーガニゼーション」の高層タワーに乗り込む話だ。幹部クラス2人「桑田キョウ」「安広浅香」を片っ端から下していき、組織の中枢までたどり着き、戦わずにして説得を試みるも「アビス」の底知れぬ絶望により撤退を余儀なくされた。それはもはや「シチメン」の手に負えるものではなく、落ち込んだ次の日。
2月20日(月) 放課後パトロール
「虚校忌譚」が終わって1カ月経ち、いつものようにパトロールしている「清子」は、河川敷で「シチメン」を見かける。
「(清子:)赤毛さん?」
「(シチメン:)...あ、清子か。」
「(清子:)河川敷で座り込んで、どうしましたの?」
「(シチメン:)...こっちの話だ。気にしないでくれ...。」
「(清子:)何があったかは知りませんが、何らかの理由で落ち込んでいるとは赤毛さんらしくありません。わたくしでよければ相談してあげますわ。」
「(シチメン:)......ああ。」
「清子」は「シチメン」の事情を聴くことにした。
「(清子:)...赤目女を止められなかったこと、赤毛さんの力でもどうしようもなかったこと、結局は力不足で悔しい思いをしている。ですが、ここで立ち止まってはどうにもなりませんわ。このイラスト集を見て、気を晴らしてみてはいかがです?」
先日、夢から覚めたときに手に持っていたイラスト集「レベッカと愉快な仲間達」を「シチメン」に見せる。
「(シチメン:)これは...2010年1月発行の同人誌か。」
同人誌の付録としてミニ鉛筆、ステッカーが付いている。
「(シチメン:)......レベッカ...。」
「(清子:)赤毛さん、いかがなされましたの?」
「(シチメン:)...なんとなくわかった気がする。涼香が絶望なら希望はレベッカしか考えられんしな。絶望には希望を。ならば私の友かつ希望であるレベッカでぶつければいい。...レベッカに希望を委ねようかな。」
「(清子:)赤毛さんのすべきことを見つけられたようでなによりです。ローズマリーに感謝ですわ。」
「(シチメン:)ローズマリーって?」
「(清子:)...いえ、こちらの話ですの。気にすることはありませんわ。」
相手が絶望なら希望は、2010年伝説の勇者「レベッカ」で対抗すると考えた「シチメン」は「レベッカ」に希望を委ねることに。
3月1日(木) ダイアナ・アトラスandハイペリオン・ザ・インキュバス卒業式(事実上「留学期間満了日」)
この日をもって「ダイアナ・アトラス」ならびに「ハイペリオン・ザ・インキュバス」の留学は満了する。この学園の高3は2人だけであるため、さみしい感じであるが卒業は卒業、在校生一同は3月いっぱいで帰国する2人を見送ることにとなった。小さな卒業式が終わると「ダイアナ」と「ハイペリオン」は「清子」に感謝と謝罪を述べて、この学園を去った。
「(ダイアナ:)清子、ありがとう...。そして...ごめん......。」
「(ハイペリオン:)俺達アトラス家の分までよろしくな、清子。」
「(清子:)おふたりさん......。」
「清子」は当分の間の別れか永遠の別れの日が来たことを涙しつつ2人を見送った。
3月22日(木)22時40分 高層タワー
「シチメン」の想いを受け取った「レベッカ」は組織「シャドウオーガニゼーション」親玉「アビス」と対峙。希望と絶望の対決が始まり、「アビス」は自身の心の闇を一挙吐くものの、「レベッカ」が「アビス」の虚言全てを論破した結果、希望が絶望に打ち勝ったはいいが「アビス」は未だに闇に染まったまま完全とは言いきれないものの、それでも昔同様、おしとやかで天然な性格に戻りつつあることが確認されたので、これにて一件落着。
第二部の主人公「清子」がいたからこそ、伝説の勇者「レベッカ」に希望を委ね、「アビス」の絶望に打ち勝つことができた。「シチメン」は勝利に貢献した「レベッカ」だけでなく、勝利の道を示した「清子」に感謝したい気持ちであった。
8ヶ月間、学園の防衛プログラム発動することはなかった...。




