第九章 虚校忌譚(2)
「赤薔薇のアキンド」。「レベッカ」に似た女で、赤いエナメルショルダーバッグに無数の同人誌が入っており、憧れの「レベッカ」を売りつける、かまってちゃん。学園での「虚校忌譚」が終わった今、彼女の素性がわからないまま新年を迎えた。
2012年1月8日(日)
「清子」は目を覚ます。ここは「清子ンち/実家」の自室。周囲を見る限り、いつものとは変わらない。
「(清子:)...もう少しだけ寝かせて。」
ベッドに籠る「清子」。
「(清子:)...一日中ベッドに籠っては面白くないし、ゲームでも遊ぼうかしら...。」
暇つぶしにゲームを遊ぶべく棚を調べる。怪異らしきものが棚の隙間に隠れていた。
「(清子:)...これも夢?なんだか遊ぶ気なくなった。気分転換に外に出よう。いつものように制服に着替え、右腕に腕章をつけて。」
遊ぶ気分じゃなくなったので、気分転換に「清子ンち」を出て、外の空気を吸う。
「(清子:)外の空気はいつもうまい。...にしても、違和感だらけだ。見回りしてこようかな。」
異様な空気に違和感を覚えながらも街をパトロールする「清子」。
「(赤薔薇のアキンド:)やっ、また会えたね。」
「(清子:)あ、赤薔薇さん!?やけに静かかと思ったら赤薔薇さんがいる、ということは...つまり、まだ虚校忌譚が終わってませんこと?」
「(赤薔薇のアキンド:)ま、そうなるか。まだ終わっちゃいない。お嬢さんだけに。」
「(清子:)わたくし以外の方々はいますの?」
「(赤薔薇のアキンド:)さぁな。それより、私の思い出話を語りながら歩いてこうか。」
「(清子:)あなたがたの話、ぜひ聞きたいですわ。あなたがたの人物像を知る機会ですもの。」
「清子」は「赤薔薇のアキンド」の思い出話を聞きながら歩き回ることになった。
「(赤薔薇のアキンド:)私の家の隙間に覗き魔がいてね、赤目女ほど怖くなかったが荷物をまとめ、外に出たんだ。脱出方法を探しながらね。」
「(清子:)それで、赤薔薇さんの知っている雅史さんとはどのような人物でして?」
「(赤薔薇のアキンド:)住宅を出てからの話になるがな。顧客として接しただけではなく、一緒に会話をしてた。君のことも。それから私の顧客ハンナが来て、連絡先交換した。これがその証拠さ。」
「赤薔薇のアキンド」は自身の携帯電話(P705i/Daylight Blue)を「清子」に見せる。
「(清子:)...異界を通しておふたりとの出会いとは不思議なことですわね。」
「(赤薔薇のアキンド:)その後、トンカラトンとかいう異形にバッタリ会ったけどね。ハンナの助言でなんとか乗り切ったがな。」
「(清子:)トンカラトン...包帯の異形のことかしら?」
「(赤薔薇のアキンド:)お嬢さんが外に出たということは、既にゲームが始まっているかもな。ほらっ、噂をすれば。」
「トンカラトン」らしき異形が現れる。
「(清子:)...ハンナさん?包帯巻いたハンナさんですの?」
「(赤薔薇のアキンド:)おっと、ゲームは始まったばかりだ。どう攻略するのか、君ならなんとか乗り切れるはず。」
「(トンカラトン?:)...トンカラトンと言って。」
「(清子:)ト...ンカラトン?」
たった一言で「トンカラトン」は去るものの、あの異形はただの「トンカラトン」にあらず、後ろを振り向く。
「(赤薔薇のアキンド:)...これでやっと解放されたな。次のステージに進むたびに消えていなくなったハンナよ...お嬢さんが一歩踏み出したんだ。」
「(トンカラ...並行世界側のハンナ:)解放してくれたことに感謝する...清子さん。」
「(清子:)赤薔薇さん、これはいったいどういうことですの?」
「(赤薔薇のアキンド:)ハンナはどういうわけか消えていなくなった敗者。君がハンナを都市伝説の呪縛から解放した。」
「(清子:)よくわかりませんが、苦しみから解き放たれたのなら、それはなによりです。さて、次はどう来るのかしら?」
その次、3枚の問題用紙と1枚の解答用紙が落ちてきた。
「(清子:)テスト用紙...内容は...いかに難しいものばかりですわね。」
「(赤薔薇のアキンド:)ルールは簡単。問題を解く、ただそれだけさ。」
第一問、第二問...最大第十問まで解くと、解答用紙は回収され、答え合わせをする。果たして結果は...?
「(赤薔薇のアキンド:)100点中"90点"か...。私は50点くらい取ったけど...。」
「(清子:)どれもわかりやすかった...ですかね。わたくしは書かれていた文章にとらわれるほど愚かではありませんので。」
さらに次のステージは学校全体。
「(赤薔薇のアキンド:)やっと学校か。いよいよここからが本番だ。お嬢さん、私と鬼ごっこしよう。」
「(清子:)...あ~、そういうことでしたの。あなたがたは怪異、あちら側のハンナさんと同じく都市伝説の敗者。あなたがたはあちら側の雅史さんに詳しいのに納得がいきましたわ。」
「(赤薔薇のアキンド:)のみ込みが早いとはさすがだね。そうだよ、私は都市伝説の子供に敗れて怪異になった『赤薔薇のアキンド』さ。足の速さが自慢だから、君はどれだけ私から逃げ切れるか見てみたいものだ。雅史とは音信不通ってことはつまり、雅史も怪異だよ~。」
「(清子:)...あちら側の雅史さんは......わたくし側の雅史さんとはたいして変わらず、わたくしの顔を見ればきっと...。この遊び、必ずや乗り切って見せますわ!!」
「赤薔薇のアキンド」との鬼ごっこが始まり、「清子」は校内に入り、フロア2(3階)の4-2教室前まで上がる。そこには「スレンダーマン」の格好をした「雅史」が「清子」の前に立ちはだかる。
「(清子:)...雅史さん......このように怪異に負けてしまったのですわね。わたくしが解放してあげますわ。」
怪異に捕まるが最後、ゲームオーバーになるにもかかわらず、「清子」は危険を顧みず「スレンダー雅史」に口づけをする。
「(スレンダー雅史:)き...清子......ぼ、僕を......許して......よ......。」
「清子」の口づけで並行世界側の「雅史」は都市伝説の呪縛から解放、浄化される。
「(清子:)あちら側のわたくしはきっと、雅史さんを愛してたことに違いありません...。」
「向こう側の清子」はきっと彼を愛してたんだなと涙を浮かべる「清子」。
「(清子:)感傷に浸っている場合じゃありませんこと。赤薔薇さんから逃れるためにはどこかに隠れないと。」
「清子」は「赤薔薇のアキンド」から逃れるために体育館にある倉庫に移動し、身を隠すも「赤薔薇のアキンド」が倉庫の中に待ち受けていた。
「(赤薔薇のアキンド:)身を隠すならロッカーか倉庫の中。私ならそうしたからね。チェックメイトだ。」
「(清子:)わたくしは間違っていたのでしょうか...。でも、向こう側のハンナさんや雅史さんのために負けられませんわ!!」
「(赤薔薇のアキンド:)うん、その意気だ。くじけない、あきらめない、勇気があるからこそ一歩前に進めるってもんだ。...君の勝ちだよ。都市伝説の敗者である私に勝てたんだ。次のステージに進もうか。」
なんだかわからないが、鬼ごっこ対決にて勝利した「清子」は次のステージに進むために校門付近まで歩く。
「(清子:)...赤薔薇さん?わたくしとは行きませんの?」
「(赤薔薇のアキンド:)君との同行はここまでみたい。ここから先は君ひとりで終点への道を進むことになる。この先のことは私には知らない。学校を出たとき、大きな困難が待ち受けているだろうが、君なら乗り切れる。心してかかるといい。」
「(清子:)...つまり、学校での鬼ごっこに敗れたあなたがたはこの先を知らない。なるほど、あなたがたがそういう怪異だから未知のエリアに行けない。そうである以上、あなたがたとは一旦ここでお別れってことですのね。心配いりません、こう見えてわたくしは風紀委員でして、柔軟に、冷静に対処できますわ。......赤薔薇さん、ごきげんよう。」
「清子」は学校を出る。校門付近に置いてあるのは、都市伝説の中盤まで進めた「赤薔薇のアキンド」すら知らない奇妙な箱。「清子」は首を傾ける。
「(清子:)この箱...落とし物を拾って交番に届けることがわたくし風紀委員の仕事ですわ。では、この箱を持って交番に届けるとしましょう。」
「清子」はこの箱を落とし物と見据え、拾った。この箱は「赤薔薇のアキンド」さえ絶対に知らない代物。もっとも恐ろしい災いを降りかかることになる。
「(清子:)まずは交番へ向かわなきゃ。......?」
この箱を見ると開けたくなる衝動に駆られる「清子」。
「(清子:)...いけませんわ。落とし物とはいえど中身を確認しようなんて、どうかしてますわ、わたくし。開けてしまうまでにどうにか交番まで急がなきゃ......。」
この箱を持っている限り、「清子」は開けたくなる衝動に駆られて苦しみ続ける。
「(清子:)い、や...。いや......。」
開けたいと思っても開けたくないと抵抗する「清子」。交番とは逆方向で進んでいる。
「(清子:)た、助けて...。」
箱を開ける動作をするも抵抗する「清子」。交番ではなく、ある場所へと向かっている。つまり、目的地は交番ではなく、ある場所こと神社のことだ。鳴り響く踏切の音、気が付けば山にそびえる神社に到着した。
「(清子:)...結局箱の中身は何だったのか、わからずじまいですわね。ただの落とし物ではないのは確かなようですし...。...それにしても神社に来てしまったからには引き返すわけにはいきませんし、せめて一度だけ拝礼しておきましょうかね...。」
まずは手水舎で清め、その次は賽銭を投げ、二拝二拍手一拝の作法で参拝。絵馬に願い事を書き、絵馬掛けに掛けて終わり。絵馬掛け付近に筆があっても、社務所に絵馬が置かれていない。
「(清子:)絵馬はどこかしら...?」
「清子」の足元に絵馬が転がってある。それを拾い、願い事を書き、絵馬掛けに掛けた。内容は下記の通り。
―私は雅史さんのそばにいたい。
掛けたばかりの絵馬のほかに、5人分の名前を記載された絵馬を確認。字が掠れていて、わからない状態。おそらく1年前のものと思われる。
「(清子:)......。」
夢と思わしき世界は真っ暗になり、「赤薔薇のアキンド」と「並行世界のハンナ」、「並行世界の雅史」が「清子」の前に立つ。
「(赤薔薇のアキンド:)おめでとう。私に代わり、よくここまで終点にたどり着いた。これでやっと私は未練から解放される。雅史、ハンナ、最後までやり遂げた向こう側の清子に感謝しよう。」
「(並行世界の雅史:)目の前の清子は僕の知っている清子同様、僕を想う良き理解者で信頼に足る最高の友だね。」
「(平行世界のハンナ:)都市伝説はまっぴら。得体のしれないものにはもう触れない。」
「(清子:)つまり、わたくしがあなたがた3人をわけのわからない世界から解放したとか。絵馬掛けに掛けた時点でわたくしは元の世界に戻る。そういうことでしたの。お別れの前に赤薔薇さんの本名を。」
「(赤薔薇のアキンド:)礼として特別に教えてあげよう。私はローズマリー・バウアー/Rosemary Bower。それと、イラスト集1冊贈呈しよう。さ、受け取りたまえ。」
「清子」が受け取ったイラスト集1冊、それは「レベッカと愉快な仲間達」がたくさん収録されている同人誌か何かである。
「(清子:)レベッカさんの絵...。昨年のフェスティバルで直接会うことはなかったものの、いつか本物と会ってみたいものですわ。」
「(ローズマリー:)お召しになされたかな?夢から覚めた数年後でもいい。あちらの本人によろしく伝えてくれよ。これより私が責任をもって君を帰す。夢から覚めれば現実、それと同時に夢の終わり。この都市伝説で過ごしてきたことは全て忘れることになるが、レベッカに会ってみたい気持ちはけっして忘れない。さ、さらばだ。」
「(並行世界の雅史:)向こう側の僕とは幸せにね。」
「(並行世界のハンナ:)向こうの私とゲームをしてあげて。最後まで進んでないことがあるから。」
「(清子:)皆さん...。」
そして「清子」は現実に戻った。夢で過ごしていたことは記憶にないものの、「ローズマリー」からもらったイラスト集1冊「レベッカと愉快な仲間達」が彼女の手に持っていた。
「(清子:)年明けのクリスマスプレゼントかしら...。時間いっぱい寝ておいたのに...どういうわけか疲れた......。もう少しだけ寝かせて......。」
寝ぼけた顔をしながらも二度寝する「清子」であった。




