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子供の遊び  作者: Ryo Yoc
34/35

「人生は一度だ!」


29:「人生は一度だ!」

 文は針で刺された風船のように飛んで行ってしまったシュガー・リョウを追っている。炎絵の鳥はスピードを上げていき、やがてシュガー・リョウの姿が見えた。

 「くうっっ。何であんなムチャな飛び方でこんなスピード出せるんだ!?」

 文は風圧に耐えるのがやっとだった。シュガー・リョウは突然上昇した。ポーーーーーンと高く高く。だから炎絵の鳥も上昇した。文は少しだけ開いている眼から青い空から黒い空へパッと切り替わるのを見た。

 ドッッン!!!!!

 大きな音がした。大砲が弾を発射したような音だ。遠くの黒い空にはオレンジ色の小さな太陽みたいなものがツーーーとガラスの表面を滑って行く水滴のように見えた。シュガー・リョウはその小さな太陽に向かって更にスピードをUPした。そしてあっというまにその太陽に近づくと

 「うわああああああああああ!」

 と叫んで黒い風をぶつけた。だけどオレンジ色の小さな太陽は何事もなかったように黒い空を滑って行く。

 「文!あの光を止めないと影地球は終わるぞ」

 炎絵の鳥は言った。

 「なんだあて!?」

 文はびびくった。

 「文、あれは相当な魔力でできている」

 「なんかよくわからんけど止めないと大変なんだな?」

 「Yes」

 文は右手に青い雷を溜めている。バチバチィ、ピピピピピピ。文はサクライさんを守ると思ったけど、それはヤマくんに任せて影地球を守る、と思った。

 バドゥーーーーーン!!

 文は特大の雷玉を放った。小さな太陽はバチバチッと青い雷玉を消し去ってしまった。

 「オイ!シュガー!あれは一体なんだ?」

 文は次々に黒い風を放っているシュガー・リョウに聞いた。

 「あれはオレの手下のネコが何十年かけて溜めた魔力と、破壊の黒い光だ。あれが最期の一発だ」

 「止めるぞ!」

 「分かってる!」

 小さなオレンジ色の太陽はすでに青い空まで降りてきている。

 「オイ!」

 シュガー・リョウが文に言った。

 「次は自分から逃げん。次はきちんと生きる」

 シュガー・リョウは体中に黒い風を巻き付けた。

 「まて!」

 文の声と同時にシュガー・リョウは身体ごと小さな太陽に突っ込んで行った。

 ドムン!

 ボールの弾むような音がとてつもなく大きく響いた。たくさんの光がはじけ散ったあとで。しばらく後に文が目を開くとかすかに2人の男が映った。


 マジャはヨロヨロの黒い身体でどこかの空へ弾き飛ばされてゆくオレンジ色の光を見た。

 「く、くあああああああああーー。なーーーーーーーーー・・、ん、く」

 マジャの口から悔しさの音が漏れた。

 「あ、あのネコまだ生きてやがる」

 キーポはマジャを見つけて言った。バグンはマジャへ近づくように飛んだ。キーポはマジャをつかまえるためにそっーと両腕を広げたがマジャは抵抗せずにおとなしく捕まった。

 「捕獲完了」

 キーポはニカッと笑った。


 ライは腹を押さえてシュガー・リョウに言った。

 「痛いなあ、本当に。あんなスピードで突っ込むなよ。オー痛」

 「信じられんなオマエあれを殴るなんて、・・・」

 シュガー・リョウは目を丸くして頭をさすりながら言った。

 「コロシアンだからな。あんなものがオレの場所をめがけてやってきたんだ。壊されたくないからな。殴ってやったさ」

 腰まである長い髪が風に風になびいている。頬には斜めの大きな傷がある素っ裸の黒人はあぐらをかいてフワフワ浮かんでいる。文はそんな2人の会話を放心状態で聞いていたがやっと現実に帰ってきて、小さなオレンジ色の太陽は、空高く飛び上が

ってきたライが殴り飛ばしてしまって、その太陽に突っ込もうとしたシュガー・リョウはライの腹に突っ込んでしまったことを理解した。文は思いっきりシュガー・リョウの背中を叩いた。

 ばちん!

 「いてえな!!!」

 振り返って怒鳴ったがシュガー・リョウの目に映った文の目には涙が溜まっていたのであっけにとられた。

 「人生は一度だ!」

 文はアホな目で笑いながら言った。


 空から最後の一発が放たれ、それが何者かによって再び空へ弾かれたのを見たヤマくんはもう一度それが空から放たれる前にキーポとバグンを空に急上昇させマジャを捕獲するように命じたのだった。

 「ほっ、これで影地球が破壊されずにすんだ」

 ヤマくんはマジャを捕獲して戻ってきたキーポとバグンを見て言った。


 空で円をつくっていた人ゴミは目に輝きを取り戻しながらゆっくりと回転しながら地上へと帰っている。シュガー・リョウとともに生まれた黒い風は今はもうただの風になって世界のどこかへ吹いていった。シュガー・リョウが小さなオレンジ色の太陽に突っ込んで行った後くらいに。


                   ※

 それから、みんなは影地球の山のお城へ帰ってきた。シュガー・リョウとマジャはどういうふうに処分されるか決まるまで牢屋に入れられた。

 「なぜ裏切ったな?」

 黒い身体のマジャは冷たい石タイルの床に身体をべったりつけたまま言った。

 「オレなりに考えオレの道を選んだ」

 シュガー・リョウは黄緑色に変色した壁を見ながら言った。

 「オレを裏切ってまでか?仲間も裏切っても進みたい道か?」

 マジャはシュガー・リョウを見上げて聞いた。

 「おう」

 シュガー・リョウは強く答えた。

 「今の、黒い風を失ったオマエを殺すくらい簡単なことだぞククク」

 マジャは両目をオレンジ色に光らせてシュガー・リョウめがけて飛んだ。シュガー・リョウの目の前でオレンジ色の炎がボワボワっと燃え上がった。シュガー・リョウは目を閉じた。瞼の内側が明るかった。3秒後、瞼の内側に暗闇が降りた。シュガー・リョウが目を開くとマジャも炎も消えていた。

 『じゃあなリョウ。オマエなんかとやってられん。オレは違う世界で破壊を行う、・・・ワスレン』

 マジャの声だけがそこで聞こえた。シュガー・リョウはいろんなことを思った。これからまた何かを破壊しに行くマジャの事、みんなで破壊作業をしてたこと、閉ざされた心の事、開かれた心の事、自分の道を歩くこと、いつか似たような道を歩くマジャと出あう日の事・・・。涙が床を叩いた。


 何日か後、シュガー・リョウは牢屋から出された。

 「お前は今まで破壊してきた自然や建物を治していけ」

 ヤマくんはシュガー・リョウにそう命じた。本当はもっと重い処分を影地球の人々の会議で決まっていたのだが、キモンという太った少年と、オレンドという少女、カモというやせた少年の3人が「りょうを返せ!」と叫び続けたのと「あいつはイイやつさ!」と、影地球を守ろうとしてオレンジ色の太陽に突っ込んでいったシュガー・リョウの事を文が語ったので処分は軽くなった。文は影地球を守るためけっこう活躍していたので発言力が大きかったのだ。円になって空から降りてきた黒い風を浴びた人々はすぐにもとの生活に戻って行き、ほとんどの人が傷や怪我を負っていなかった。マジャの処分はいなくなってしまったために保留だった。


※    ※

 「私、ザオ、生きていると思うの」

 カトリーがタチバナさんに言った。

 「うん。ザオちょっと死にそうにないわ」

 タチバナさんとカトリーはお城の屋上にいる。星たちの輝きがレンガで造られた城をやわらかく照らしている。

 「明日、私、旅に出るの。サクライさんとヤマくんの結婚式の後で」

 カトリーは夜風を浴びながら言った。

 「そうかザオの半分を探すのね」

 「うん」

 ザオの身体の半分は文がライから受けっていた。機械で出来た身体だった。

 「ザオって誰が機械の身体とくっつけたの?」

 「それは宇宙の中のこことは別の星にいるトミーという少年よ。大けがをしたザオを発明した機械の手足、目を使って治してくれたのよ。ザオは人間の半身さえ生きていたら、また元通りのザオになれるの。トミーのところに行けばね」

 「へえ。カトリーてそんな素敵な友達がいるんだー」

 「他にもたあくさんいるよ」

 カトリーはたくさんの星がつまった空を見上げて言った。

 「ここにもいる」

 タチバナさんを指差して宇宙の娘はほほ笑んだ。

 「こっちこそ」

 タチバナさんはそう言いながらカトリーに抱きついた。

 「逢えてよかったよカトリー。ザオが治ったら、・・・絶対に帰ってくるのよ。・・・帰ってくるのよ」

 タチバナさんは涙ぐんだ。

 「とうぜんでしょ!帰ってくるよ。泣くな。泣くな」

 カトリーは大きな眼に温かさを感じながら言った。夜のお城の上で夜風は2人の別れを月に伝えた。月は夜風に出あうためには別れるものさと言った。


 次の日にはお城にたくさんの人々が集まった。

 「僕は君を良いパートナーだと思ってきた。僕はこれから君と支え合って生きていきたい」

 ヤマくんはりりしい顔でサクライさんに言った。

 「私はあなたの側でいつも私がするべき事をしてきた。それはきっとこの日のため、これから全ての生きる時間のためだと思う。あなたといるためだと思う」

 サクライさんはヤマくんを見つめて言った。

 「ここに誓う我らは共に生きることを」

 2人は同時に言った。そしてキスを交わした。

 オ オ  オ オ  オ オ

 人々は大歓声で2人を祝った。花火、ゾウのパレード、美味しい料理、お酒、みんな盛り上がったところで歌が流れ始めた。カトリー、タチバナさんは、ハッと思った。

カーン カカーンカ カカカ カーン カカカン カン カカ カカ カン・・・。

 キーポ、アデ、メガネ外人、テンネコ、アー助もアッと気がついた。

 「ギーシ・フンケキ島の洞窟!」

 「足音メロディー」

 「そうそう」

 「なんかなつかしい」

 「いいメロディーだ」

 いろいろな声が上がった。

 「光るカニ星みてえじゃった」

 「メガネ外人の笑い方、最高に面白かった」

 「そ、そっしゅかあ、ふ、ふはふははあは、はっ」

 みんなが盛り上がる中でカトリーはザオの足音を聞いた気がして涙がでてきた。そしてサクライさんは歌をうたいはじめた。

 みんなで歩く時がある

 忘れちゃいけない時間だよ

 1人で歩く 逃げたくなる日

 耳の奥では 聞こえるだろう

 みんなで歩いてるって 足音が


 いつか交わる 誰かの道と

 いつか別れる 誰かの道と

 1人で歩く どこかへ続く

 みんな歩いてる どこかへ向かい

 だから 信じてる 想っていることがある

 最期の地点で みんあ逢えるって


 涙も、夢も、無駄に流れた時間も、

 昼の、庭で、虫と語った日々も、

 その時 ながめた 雲も、風も、太陽も、

 土の匂いも、


 心、深く、闇へ沈んだ頃も、

 人を傷つけ、後で痛んだ胸も、

 すべて 受け止めて 想ってることがある

 最期の地点で みんな報われるって

 

 最期の地点で みんな逢えるって


 今も歩いてる 平穏な空にも

 聞こえてくるよ 誰かの足音

 いつか交わる その地点のため

 誇れるように 歩き続ける


 1人で歩く 逃げたくなる日

 耳の奥では 聞えるだろう

 みんなで歩いてるって 足音が


 サクライさんは歌いながら泣いた。そして歌い終わって言った。

「私、今回の旅で知ったの、1人1人、大切なこと・・・。1人1人、頑張って生きてるってこと。・・・。この歌には、そんな想いをこめてみました。ありがとうございました」       

サクライさんが話し終わったあと少しの沈黙があった。みんなそれぞれの思いをかみしめてからお城が壊れそうなほどの拍手を送った。

 「いいゾ サクライさん、よかった。さすが僕の認めた女だ」

 文は手を叩きながら大声で叫んだ。拍手はまだ続いている。

 「いい女じゃ、ほんとに、・・・、いい女だ」

 キーポは誰にも見られないようにして涙を拭きながら呟いた。拍手はまだまだ続いている。



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