ただいまカアさん
30:ただいまカアさん
「さよなら。サクライさん」
文は地球の自分の家の自分の部屋のベッドの上に立っ言った。
「ええ。お世話になったわね。ありがとう」
サクライさんは部屋の中央に浮かんでいる。
「また逢えるよね」
「ええ。また来るわ」
「アー助に今度電話するって言っといて」
「分かったわ」
「それじゃバイバイ!」
「さよなら」
ピシュシュン。サクライさんは消えてしまった。次はアー助を家へ送りに行くのだ。メガネ外人はしばらく影地球を旅する事になった。タチバナさん、テンネコ、アデの4人で。
文は出た時と変化の見られない部屋で影地球って本当にあったのか、みんなは本当に射たのかが分からなくなった。壁のポスターも、机も、窓の外の景色も、匂いも、全てがあまりにもいつも通りだった。
今日の朝、炎絵の鳥とバグンはギーシ・フンケキ島に帰っていった。
「アホな目を大切にしろ!」
バグンは言った。
「次の冒険にも必ず呼んでくれ」
炎絵の鳥は言った。
それに今さっきサクライさんと別れたばかりなのに、そんな気がしなかった。ただいつも通りの時間がいつも通り流れて、いま部屋にいるような気がしている。文は眠たくなったのでベッドの上に転がって目を閉じた。
目を覚ますと夜になっていた。時計は8:30を指している。文の頭の中を急に影地球のみんなの顔が次々と浮かんできた。文はそれで影地球の存在感を強く感じて、みんなが今ここにいないことを思うとつらくなってきた。文はサクライさんの歌を思い出して耳を澄まして見た。地面に横たわるザオの鼓動が、額に汗して作業するシュガー・リョウが、それを手伝うキモン、オレンド、カモが、1人旅をするカトリーが、他にもたくさんの足音が聴こえたきがした。
「おお、すごい!」
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、
そしてはっきりした足音が聞えはじめ、それがだんだん近づいてくるのが分かった。
「お お お!」
文は声をあげた。
ガチャ!
そして文の部屋のドアが開いた。
「帰ってきたんならただいまだろバカタレ!」
聞きなれたその声と見慣れたその顔と足・・・。
「ただいま 母さん」
読んで頂いてどうもありがとうございました。




