精神の再生
19:5・精神の再生
海の街のドラム缶広場に8歳のの男女が3人集まった。でぶで短め白髪の男の子キモンはおかしぶくろを両手に持ってにこにこしている。チビでやせのカモは落ち着いたまなざしでオレンドに話しかけた。
「リョウノ奴に今日はこの本をやるんだ」
「あいつ字よめるそ?」
「くはは!読めないよきっと僕のはおかしだからいいけど。おかしは食べればいいからね。きっとよろこぶ」
「キモンもリョウもでぶやからね。私は何もやらんけど」
「オレンドってけちだもんなあ!」
「いーうるさいよ。あのね、久しぶり私が会いに行くだけですーーーごいプレゼントだと思わないのお?」
「お、うん、よし、そろそろ行こうか」
キモンとカモはシュガー・リョウの家に向かって歩き出す。オレンジ色のショートカットでメガネの可愛い女の子オレンドも、こーらー、おーいー、と言いながら2人の後に続く。黄色い太陽を包んでいる青い空の下。良い風が吹く。透き通る緑色の海が見える小さな平和な街。3人はちょっと問題を抱えているけど大好きで大事な友達に会いに行く。親に止められているけどしらん、しらん、しらん。5日もとめられたけどもうええ、もうええ、もうええ。3人はしかられてもいいから会いに行く。
§
ジジーザザザザ、う、うーん砂しか見えない。ザザ、ジーもっとアンテナを、・・いや違う、ザ、ザザザそ、そうだ。引き裂かれたんだった。ジ、ジザザザ。あ!僕の身体が勝手に動いている。ザ。ザザ。そ!そうか黒い風のやつが手に入れちゃったんだ。ちくそう!ザザザアー。ま、ま、まだ消えてたまるか・・も・・も、も、もう少しだけ・・あ、力が抜ける。ザザザ。ザザーーーーザザザ・・プツン!シュガー・リョウの身体と風を手に入れた黒い風は、かぜを身体に巻きつけてシュガー・リョウの家へ飛んだ。ジジジジジ・・・ザーーーーザーーーーく、あ、あのヤロ!僕の家の方へ飛びやがったぞ。ズジージジ・ザーくっ・・・まだ消えるわけにいくかよ!ザザザー。銀の剣によって引き裂かれたシュガー・リョウの意識はふらふらと黒い風の後を追い始めた。
彼らのまわし始めた運命のダイヤルは・・・とてつもない黒を生み出すことになる。それから18分が過ぎた・・・そろそろベルは鳴り響く。
ガン!ガン!ガン!りょーお!ガン!ガン!ガン!りょーお!3人はリョウの部屋の窓をガンガンやって、りょーお、と叫んでいる。でも返事が返ってこないのでカモは手を止めた。
「どっかにでかけてるんだろう。たぶん」
「ゆるせんやつね。私が会いに来てあげたってのに」
「僕おかし一人でたべなきゃな」
その時、お友達―あがってちょうだい、と家の中から声がした。3人は赤レンガでカクカクのシュガー・リョウの家の中へはいって行った。部屋に入るとカアさんがベッドの上で上半身を起こしていた。そして、3人に黒い長ソファに坐るように言った。
「ありがと。よく来てくれたわ」
「・・・。オバさん大丈夫?」
キモンは聞いた。
「全然大丈夫よ。ごめんね。リョウはうすぐ帰るから。もう少しまってねえ」
「うんうん待ってるよ。私たち暇なひとたちやもの」
「ぼくらもオレンドほどじゃないけど確かに暇人ですから」
2人も頷いた。
「はー?なんてー?」
「はっはっはっ」
「ありがとう」
カアさんはそのありごとうの言葉にたくさんの想いをこめた。そのなかでも一番強く込めた思いは、いつまでもリョウと一緒にいてやってほしい、だった。もう自分の命が残り少ないことも分かっていたしリョウが人として曲がってしまわないためには彼らが必要だということも分かっていたから。
ガ、ガ、ガ、ガ、ガ!!!
シュガー・リョウの身体が黒い風と共に天井を突き破って入ってきた。カアさんと3人は落ちてきた天井と空を舞う砂ぼこりに何が何だか分からないでいる。天井の石が砕けて降っている。
「3人ともけがはない?」
「なんとか」
「リョウ!!!」
3人は驚いて言った。その時ふらふらと引き裂かれたシュガー・リョウの精神が天井の穴までやってきた。
「どうしたのリョウ?」
シュガー・リョウの身体はカアさんに近よった。
「ただいまカアさん。それと、クケケケケ・・・」
シュガー・リョウの精神は穴から下を見下ろした。
「それと、バイ!」
「やめろお!!!」
ズガガ、ガガガガガ、ズガガガ、ガガガ!!!!!カアさんの身体は黒色の風の無数の線に刻まれた。オレンドとキモとカモンは突然と混乱と恐怖と怒りと悲しみで固まっている。
「リョ・」
カアさんは最期の力で口を開いた。シュガー・リョウの身体は黒い一筋の光でカアさんの心臓をついた。カアさんはばったり倒れた。3人の少女と少年は眼の光を失いショックのために身体の動かし方と物の考え方を忘れた。
「行った行った。クケケケケ。親子そろって同じところへケヒヒヒヒ」
「きさま」
「おい!引き裂いたはずだぞ。ばかな!!!精神の再生!?」
「きさま」
シュガー・リョウの精神はいつの間にか銀色の剣を握っている。シュガー・リョウの身体はそれを見た。
「よ、よ、よっせ。よせよ!」
シュガー・リョウの精神はシュガー・リョウの身体を引き裂いた。ザクリ。黒い風は目の前が砂嵐のようにザーッとなろプツンと永遠の闇に包まれた。シュガー・リョウは生まれて初めてシュガー・リョウになった。身体も黒い風も自分1人のものになった。そして、1人になった、と思った。




