ヤマ君の説明
2:ヤマ君の説明
文は母さんと家が斜線になるのを見た、次に斜線は大きな部屋になるのを見た。
「ここ何処?」
「山頂のお城の中よ」
「何すればいいの?」
「まずは影地球の王、ヤマ君に会ってもらうわ」
「その前にミニスカートの中を覗かせてくれ」
「嫌。絶対いや」
文は無理やりスカートをめくろうとしたが、目の前に現れた赤い光によって、拳を受けたような衝撃に遭い、こけた。
「痛いのでもうしません」
「あたりまえ!次はこんなもんじゃすませないわよ」
「Yes!」
二人はヤマ君のいる大広間に着いた。そこには大勢の人が居た。二人が広間に入ると、少年の顔を持つ三十歳の男が言った。
「そのこで全員だね。サクライさん」
「そうですヤマ君」
「それはじゃあ説明を始めようか。
実は、この世界は影の地球と言って、地球とは対になっている世界です。地球が生まれることによって生まれたこの影地球は、地球が滅ぶと滅んでしまいます。その逆に影地球が滅んでも地球が滅んでしまいます。だから今日みなさんに集まってもらったのは・・」
「もしかして影地球が滅びそうなんですか?」
文は大きな声で訊いた。
「察しがいいな。君、名前は?」
「あー。アー助です」
ヤマ君が文のほう指差して問うと、文の隣でぼうっとしていたアー助が勘違いして応えた。
「君アー助っていうのか。いいコンビになれそうだ」
文はチビでデブの少年アー助に微笑んだ。
「だまれアホ」
「短気は損気」
「説明を続けます。影地球はある者の手によって滅びようとしています。それを阻止する為に、今日は影地球の兵士たちと力を持っている地球の三人に、こうして集まってもらったわけです」
「ハイ質問!」
めがねを掛けて大きな荷物を背負っている華奢な中年の男が手を上げた。
「どうぞ」
「私の名前はメガネ外人と言いましゅ。何で地球からは三人っしゅかねえ?」
「この影地球にはルールというものがあり、それで地球からは三人しか呼べないと決まっているからです」
「なるほどねえ。ハイも一つ質問!そのある者ってのは何者っしゅかねえ?」
「黒い風を吹かす者。悪魔の子供、シュガーリョウです。黒い風を浴びたものは生きるために必要な想いを失ってしまうのです。愛する人への想いや、好きなことへの想いを。そして想いを失った者は心が死んでしまいます。その者たちの目は黒い光を放つようになり、その目で見られたものは少しずつ少しずつですが破壊されてしまうのです。シュガーリョウはそれを利用してこの影地球を滅ぼそうとしています。シュガーリョウは自分では何も作り出せないものだから破壊するのが大好きなのです」
「それじゃあシュガーリョウを止められれば破壊も止められるっしゅかねえ?」
「そうです。そのためには黒い風を何とかしなければいけません。奴の黒い風は直接、心の中に吹くので防ぐのは無理です。風を受けても心を死なせないでいるためには、とてつもなく熱い思いを心に持ち続けることが必要です」
「ムリッしゅね。それは。人の心ってもんは絶えず変化するっしゅからねえ」
「そのとおりです。だから“永遠の冒険心”を手に入れるのです。この影地球には遠い昔から、いくつかの謎の場所があります。人々はそれを“永遠の源”と名付けました。永遠に何かを創り出す場所、ということで永遠の源です。例えば、壁画を生む洞窟、時を生む塔があり、音楽を生む泉、夕暮れを生む丘などがあります。永遠の冒険心を手に入れるためには、そんな永遠の源の一つ“ギーシフンケキ島”という島へ行き、炎で描かれた炎絵の鳥に会わなくてはなりません。と、言うわけでみなさんにはまず永遠の冒険心を求めてギーシフンケキ島を目指してもらいたいと思います」
「ヤマ君。ギーシフンケキ島って不思議と危険に満ちた島ですよね?そこへ行って戻ってきた人は、ここ二百年くらい居ないていう話ですけど・・」
影地球の兵士がヤマ君に言った。
「確かにそのとおりです」
ヤマ君の目は鋭くなり、声は重たくなった。
「そんなことは解っている。しかし影地球、および地球が滅びることを考えたら、君にも・・解るね」
「僕が馬鹿でした」
「では明日さっそく旅立ってもらうので今日はゆっくり休んでください。解散」
影地球の兵士たちは徐々に大広間を後にした。文とアー助は居眠りをしている。メガネ外人はギーシフンケキ島のことを考えてぼうっと立っている。
「サクライさん。後は頼むよ」
「ハイ。ヤマ君」
ヤマ君も部屋を出て行った。大広間に三人とサクライさんだけが残った。
「地球から来た三人付いてきて」
「へ!?地球から来た三人ってこの三人っしゅか?」
「そうよ。あなたと、アー助君と、エロガキよ」
「僕はエロガキじゃないんだよ」
眠っていた文が目覚めた。突然、低く巨大な音がした。三人は身構えた。
「腹減った」
アー助のお腹の音だった。
「まあとにかく付いて来て」
三人はサクライさんの後を付いて歩いた。広い空間の白く美しい廊下を歩いた。さらに広大な広間に出て巨大な階段を昇ると、三人は階段へ突き飛ばされた。
「鼻血でばれたな」
アー助が笑った。
「鼻血は拭くべきだったね」
「白っしゅね。白っしゅからね」
三人の部屋は巨大な階段を二つ昇って、廊下の一番奥の部屋だった。
「もう少ししたら昼ゴハン来るから、それじゃ」
サクライさんは冷たく言って部屋を出て行った。部屋に入ると三人は窓から見える風景に感動した。大きな窓からは、赤く乾いた大地や岩が何処までも広がっているのと、濃い青の空が見えた。アー助は巨大なベッドに飛び込んだ。メガネ外人は荷物の整理を始めた。文は子供の眼差しで窓の外を眺めている。




