ギーシ・フンケキ島・真夜中に起きた冒険者
17:ギーシ・フンケキ島・真夜中に起きた冒険者
もう真夜中。湖の水は深い夜の青色に染まって静かに美しい。白と赤と黄金の、無数の光の粉が水面を横切って眠る少年の顔に降りた。
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白がやってきた。どこまでもとにかく全部白になった。白い光を放ちながら燃える赤い線で何かが描かれ始めた。無数の線が踊る。
どきどきわくわくしてきた。一つ頼みごとをきいてくれるんなら、あばれる場所を用意してくれ。
眼が描かれた。翼、くちばし、するどい爪を持つ足、鳥だ。遠い昔の古い鳥だ。描かれたのは炎絵の鳥。炎絵の鳥は静かに眼をこちらに向けた。文と目が合った。同じものが息づいている。にこり。炎絵の鳥は、音を立てて燃焼し、或る方向へ飛んで行った。
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文は目を覚ました。
「呼ばれたーーーーーーーーーー!うおーーー!!!ウオオオオオオオォーーーーー!!!!!」
文は殴られた。
「いたい!」
「うるさくて目が覚めちまったぞボケ!ぐっすりスヤスヤ寝てたのに!!!ウンコタレ!」
バグンはどなった。
「たれてません!」
「反抗するな!人の眠りをぶち壊しやがって。いいか、人の眠りを邪魔するのはどんな罪よりも重いんだぞボケエ!」
「はい!ごめんなさい!でもちょっと聞いてください!」
「なんな?」
文はバグンに今までの事を話した。ギーシ・フンケキ島に来た目的、みんなとはぐれたこと、そして今、島に来た目的である炎絵の鳥が夢の中に出てきて、或る方向を示したこと。バグンは耳の手入れをしながら聞いた。
「炎絵の鳥を探していたのか。たしか子供たちの神にして、冒険者たちの神、そして冒険好きの鳥だと親から聞いた。でもオレも親も見たことはねえし、あれただの伝説だと思ってたが・・。オイ!本当にただの夢じゃないのか?」
「そんなバカな!本当にあれはメッセージだったって!本当に!本当に!だってそれまで見てた夢が突然白く消えたんだから!!」
バグンは文の目の中に再び、子供のころの力・単純だけど大きな力が息づいているのを感じた。バグンは文を手伝ってやることにした。
「お前の名前は何だったかな?」
「え?文だけど、あれ?言ってなかったっけ?」
「そうか文か、今からオレはお前、文の仲間になることにした。そして文に出来る限りの力を貸すことに決めた」
「え?いきなりどうしたん?」
「うるせえ!いちいち理解はいらねえよ。とにかくオレは文の仲間だ、いいな」
「ありがたい!」
「それでいい。で、どっちの方角へ飛んでったんだ?」
「あっちです」
「よし!とっとと乗れ。とっとと飛ぶぜ」
そして文はとっととバグンの頭に乗り、バグンは文を乗せると、とっとと飛び立った。炎絵の鳥へ向かって。バグンは夜の中をぶっ飛ばして進んだ。怖いくらいでっかい銀色に光る石には何度かぶつかりそうになってひやひやさせたが、夜を切り裂いて生まれてくる風の音に2人は遠い、深い、同じ所から流れてくるかすかな冒険の歌を感じ続けている。文は夜の淡い光に透けて黄金色になっているバグンの大きな耳の翼をやさしく温かく包んでくれる親の腕のように感じた。頼もしい仲間だ、と思った。
「飛ばせバグンくん!」
文はバグンの頭を叩いてそう言った。バグンは落としちゃろうかこいつ、と思った。




