ギーシフンケキ島5・メシを食い終わるまで
14:ギーシフンケキ島5・メシを食い終わるまで
気絶していた者は気を取り戻し、傷ついた者はテンネコによって完全回復した。キーポの腕の2つの大きな穴も塞がった。
「サンキューテンネコ」
回復した人は言った。
「いいえどういたしまして」
「なんで早く振り返ってくれなかったんだ?」
キーポはサクライさんに言った。
「うるさい。あんたのことだからどうせウソだと思ったのよ」
「ぶつぶつもごもご」
「さて先へ進みましょう」
ヤマくんが言い、みんなは壁の開いたところから先へ進んだ。壁を抜けるとそこには乾いた地面が広がっていた。そしてヤマくんが3歩あるくと、3歩目に燃焼する音とともに足が炎に包まれた。
「うおっ 3歩以上あるくと火が出る!」
ヤマくんが言った。みんなは壁伝いに横に歩くことにした。
「カニみたい私たち」
カトリーが言った。
「うん」
アー助が頷く。
「ちょきちょきちょき」
「あっはっはっ」
「不思議っしゅよねえ。3歩以上歩くと火がでるんしゅからねえ」
「私けっこうこういうの好き。なんかワクワクする。この島いいわ」
タチバナさんはメガネ外人に言った。
「わたしくらいの年になると、も少しのんびり楽しめるところの方がいっしゅけど、まあタチバナさんは若いっしゅからねえ」
「じゃあオッサンはいま楽しくないの?」
「いや、こういうのも嫌いじゃないっしゅよ。たまにだったらねえ。今は楽しいっしゅよ」
「それは良かった。楽しいのが一番」
「テンネコ飛ぶのって疲れるの?」
アデがテンネコに聞いた。
「いいえ。歩くのとほとんど変わりません」
「テンネコって子猫に見えるけど、子猫なの?」
「姿は子猫でも、人間で言う青年ですね」
「じゃあ僕より大人なんだね」
「ま あ ね」
「でもあんまり変わらないね。精神的に」
「・・・。・・・。・・・」
「あ!地面に穴が空いてます」
穴は壁のすぐ横に空いている。穴は波紋によってゆがんだ水面に映る月のような形をしている。穴の入口は大人4人が同時に降りて行ける広さで底までは5m程だ。
「このままカニ歩きやっててもしかたないのでこの穴を調べてみましょう。ここから先へ進めるかもしれません」
ヤマくんは言った。
「どうやって降りるん?飛び降りるん?」
アデは聞いた。
「はい!ロープあるっしゅよ」
メガネ外人は言った。
「さすが!」
みんなは言った。
「どう?」
メガネ外人はでっかい荷物から杭と木槌を出して地面に打ち込み固定して、それにロープを縛りつけ穴にたらした。
「さすが!」
みんなは言った。
「そっしゅか?そっしゅか?そっしゅかねえ?ほっほっほっ」
みんなはとっとっと穴に下りた。穴は底から横に伸び島の中央の方を向いているようだ。
「大丈夫そうなのでこのまま先へ進みましょう」
ヤマくんは3歩以上壁から離れても炎が出ないのを確認すると言った。トンネルのような穴の中は苔がやさしく白く光っているので夜が明けたばかりの朝の中にいるようだ。みんなはヤマくんを先頭に歩き始めた。すると・・・。
『カーン カカーンカ カカカカカーン カカカンカン カカ カカ カン・・・』
と、みんなの足音がオルゴールの音のようにやさしくメロディーを奏でた。みんなは驚いて立ち止った。
「まあ!まあ!なんてステキ!ステキ!」
カトリーは感激した。
「いいメロディー。私こういう曲好き。歩こ!歩こ!」
タチバナさんは共感した。他のみんなも心が安らいでいくのを感じた。そして歩き出した。
「なんか保育園の遠足みたいだな」
キーポはつぶやいた。
「あーっ!光るカニだ」
「うおう!」
アー助がみつけてみんなは言った。アー助のみつけた光るカニをはじめとし、進むにつれてあちこちで光り出した。
「星みてえ」
「本当に星みたいだ。綺麗だなあ」
アー助とザオは言った。
カカカーン カーンカーカカーカカカン・・・。足音メロディーはやさしく、たえず流れを変えながら響いている。
「いいメロディーっしゅね。なんか子供のころを思い出すメロディーっしゅ」
タチバナさんはメガネ外人の顔を見てどっか情けない顔だなと思った。
「子供の頃がそんなによかったの?なんでそんな諦めたような顔するのよ?」
「子供のころはすべて単純だったからっしゅねえ。ただただ何かに喜んでいりゃよかったしゅから。何かに傷ついても1日寝りゃ忘れられたしねえ」
「ばーーーか。そしたらまた単純になればいいじゃない」
「それがそんなに簡単なことでもないんしゅよ。ははは・・・ま、大人になればわかることっしゅけどねえ」
「大人になるってヤなことね」
「そういうことでもないんしゅけど、まあ・・・そっしゅねえ まあ確かに、・」
「ヤなことじゃないんだったら、その情けない諦めたような顔は二度と見せないで欲しいな。ヤなことじゃないんだったら、いつも笑っててよ。そうしてよ」
メガネ外人はタチバナさんの真剣な目と声に困った。
「そんな困った顔しないで、違う。笑っててって言ったのよ」
「・・・。・・・。・・・。・・・。・・・。タチバナさん。・・・。えいくそ。よし笑うしかないっしゅね。笑お。笑お。ふほ ふほっほっ はっ はふほっ ほっ ほっ ほっ」
みんなはその笑い声を聞いて大爆笑した。
「オッサンは素敵な大人だね。私けっこう嫌いじゃないよ」
「おーう」
タチバナさんが言ってみんなが反応した。
「うっ ふほっ ほっ ほっ ほほっ そっ そっしゅかあ。 うっほお ほっほっ ほっ ほっ ほっ そっしゅかあ うっほお」
みんなは一気に和やかになった。朝の新しい白、黄色い星、足音のメロディーも手伝って。このメロディーできるだけ覚えといて今度うたをつけてみよう。やさしい歌になる。ふふ、とサクライさんは思った。
「サクライさん。ニコニコしてなんかいいことでもあったの?」
ヤマくんが聞いた。
「ふふ。え。さあ」
「おまえらいちゃつくな」
キーポが言った。
「うるさい」
サクライさんが返した。
「おい、アー助。あんな風に笑うと女の子にモテるのかなあ?」
アデはアー助に聞いた。
「さあ。わからん。でもあの笑い方は笑えた」
「うん」
「本当に笑えたのはメガネ外人が本当に真剣だったからさ。本当ってのは大人になるとなかなか出せないんだぜ。あいつは心の中の本当をだしていた、あいつはステキな大人だぞ」
ザオが二人に説いた。
「あー?よくわからん」
「僕もよくわからん」
「あっ出口です!」
テンネコが言った。穴はだんだん登り坂になっていて、その頂上にある穴から光が逆さの日の出のようにのぞいている。みんなが穴から出ると島は夕暮れを迎えていた。ヤマくんが、今日はみんなで野宿しましょう、と言い、そうしよう、とみんなは答えた。
※
穴から出た島の景色は、前方の遠景に乾いた白い岩が牙のように地面から突き出して巨大な森を造っている。左方に黄緑色の小さな森があり、残りの地表は半透明の黄緑色の、水分を含んだ柔らかい草に覆われている。カトリーとタチバナさんとサクライさんは小さな森へ果実を探しに行くことにした。
「夕暮れって一日の終わりを感じる」
カトリーは言った。
「そうよね。子供のころには遊びを終えて友達と別れをする時間だったわ。なにか悲しい時間だなー」
タチバナさんは言った。
「え、そう?私あのピンクの空が好き。きれいじゃない」
サクライさんは言った。
「サクライさんは夕暮れを悲しいと思わないの?」
タチバナさんは聞いた。
「なんで?思わないよー。カトリーは?」
「うーん。一日が終わるなあって、終わりを感じるけど、悲しいとは思わないねえ」
「えっ終わりを感じるのに悲しいと思わないの?」
「次は夜がはじまるもの」
「なるほどね。考え方の問題か。私もそう考えよう」
「それがいいよ。悲しいことは少ない方がいいもの」
「ねえねえだから結局は、夕暮れはきれいだってことでいいのよね?」
サクライさんが聞いた。
「それでいい」
2人は答えた。3人は小さな森に入った。全体が黄緑色で、ところどころに野球ボールサイズの穴が開いた木があった。木々は、3mほどの高さで知恵の輪のように絡まり合っていた。あまり葉を付けない木らしく、森の中は外と同じくらいに明るかった。大きくなった木には果実がないが、細く背の低い木には黄色い果実が成っていた。さらに低い木には赤い果実が成っていた。3人は20分くらい赤い実を取ったが暗くなってきたので野宿をする場所へ帰った。
§
ヤマくんとザオとメガネ外人は白い牙のような岩の森を調査しに行った。あの辺りがいよいよ島の中央なので調べておきましょう、とヤマくんが言い2人がそれに同意した。しかし、白牙の森はかなり遠くにありたどり着く前に日が暮れそうになったため、途中で引き返すことになった。
「すみません。私の計算ミスでした」
「誰にでもミスはあるっしゅからねえ。仕方ないっしゅよ」
「気にしてないぜ」
「ありがとう。本当にすみません」
「よし。早くみんなのところへ帰ろうぜ」
「そっしゅね。アー助くんたちがきっとたくさん肉を用意してましゅよ」
§
アー助とアデとテンネコとキーポは夕食の肉を用意することになっていた。
「いたぞ、巨大なヘビだ。まかせろ!」
キーポは木の枝で造った弓矢で巨大ヘビを射た。見事に命中している。
「あっー、すげえ。上手いなあ」
「お見事、お見事!」
「野生的な事は得意だなあ」
アー助、アデ、テンネコはそれぞれ言った。
「ま あ ね」
キーポは言った。その後は調子に乗りほとんど一人で狩りをした。だけどヘビばかり。
「ヘビばかりだと女の子嫌がりませんか?」
テンネコは心配した。
「とっとと料理して鳥肉だと言えばいい」
キーポは言った。
「さすがキーポ」
アー助は言った。キーポはジーンズのポケットからライターを出して集めた枯れ草に火をつけた。サバイバルナイフで上手に捌いたヘビに、いつも持ち歩いている銀色の缶に入っているキーポ特製の調味料をまぶしたものを、尖った丈夫な枝で刺して焼いた。そんなふうにとっとと料理したので女の子が帰ってくる3分前には鶏肉料理のような蛇肉料理は完成していた。その15分後にヤマくんたちも帰ってきて夕食が始まった。
「いただきます!」
みんなは言った。
「うまい。ゴブゴブゴブ。うまい。ゴブゴブゴブ」
「のどにつまらせんように食えよ。パクパク」
ザオはアー助に言った。
「パクパク。おいしい!これ誰が料理したの?」
カトリーが感激した。
「キーポだよ」
テンネコが言った。
「本当は?」
カトリーが聞いた。
「だからオレだ」
キーポは言った。
「分かったアデくんでしょ?」
サクライさんは聞いた。
「おーいおーい」
「本当にキーポですよ」
アデは説明した。
「へーーーーーえ。料理は上手いんだあ」
カトリーは言った。
「力もつよい!」
キーポは言った。
「ふーん料理は上手いんだ」
サクライさんは呟いた。
「力も・・・。パクパクパクパクパク。・・・。・・・。パクパク」
※
みんなが美味しい夕食を食べ終わるとヤマくんは白牙の森を調査できなかった事を報告し、とにかく明日は白牙の森に向かいます、そしておそらく炎絵の鳥にも会うことになると思います。いや会います。しかし今まで以上の危険にも会うでしょう。みなさん今日はゆっくり休んでください、と言った。
みんなはメガネ外人の持ってきた3つの虫よけテントで休むことになった。1つ目にヤマくんとザオとメガネ外人が入り、2つ目にアー助とアデとキーポとテンネコが入り、3つ目に残りの女の子たちが入った。




