ギーシフンケキ島3・不思議が動き出す
11:ギーシフンケキ島3・不思議が動き出す
ヤマ君たちはどんどんジャングルの深部へ入って行った。
「ヤマ君。炎絵の鳥はどのあたりにおるん?」
アデが問うた。
「この島の最深部です。太古からある石の台座の上に描かれているのです」
「ねえアー助さん。文君大丈夫かな?」
カトリーが心配そうに言った。
「あいつはどこででも生き残れると思う」
「そうさ。心配はいらん。親友のアー助が言ってるんだ。大丈夫さ」
ザオはカトリーの肩を抱いた。アー助は、頑張れ文、死ぬな死ぬな、と心の中で祈った。
「あれっしゅよ。あそこでジャングルが終わってるっしゅよ」
メガネ外人は木々が退き明るくなっている前方を指した。
「あー。オレん家の近所みたいだ」
ジャングルが終わり、そこから先には和風の田舎の町並みがあった。古く大きな瓦の家や、藁葺き屋根の家、それらを囲う竹の垣根や、ブロックの塀。古風な木造の家が連なっている。
「アー助さんの家の周りはこんな感じなのですか?」
テンネコはアー助に訊いた。
「ああ。ノラネコも一杯いる」
「ネコは好きですか?」
「飯盗って逃げるから嫌い」
テンネコは下を向いて歩いた。路地はとても狭いのでみんなは一列になって進んだ。人も動物も現れなかった。突然後方でキーポが叫んだ。しましまとらとらでかい、と叫んでいる。みんなはキーポが一人で遊んでいるのだろうと思って気にしないで歩いた。ぎゃあいたいてかまれたて、サクライさんは、うるさいなあと思いながら振り返った。
「い~や~、うそぉ」
そこには巨大なトラがいた。その声にみんなも振り返ってトラを見た。細い道を埋め尽くすほど大きな体を持っている。キーポの腕についた歯型の穴から血が噴出している。みんなは全力疾走を始めた。トラはブロック塀を倒し、竹の垣根を折り、瓦や茅葺屋根を弾き飛ばしながら追ってきた。
「行き止まりだ。戦いましょう」
ヤマ君の目に映ったのは、赤いブロック塀に囲まれた短い枯れ草の広場だ。ザオはブルーライト・ソードを右手から伸ばした。ブルーライト・ソードは高く振り上げられ、トラノ頭へ振り下ろされた。軌道は僅かに逸れトラの右耳が切り落とされた。トラは右耳のあった場所から血を噴出させながら攻撃した。右前足を打ちつけ、アー助、メガネ外人、タチバナさん、キーポをなぎ払った。カトリーは鼻の先に淡黄色の光をトラに向けて放出した。ぎざぎざの光は空を走りトラの右肩を貫いた。テンネコはしっぽに溜めた蚤をトラに向けて放った、トラは血の吹き出る右肩の痛みのために痒さを感じなかった。
「やいと」
アデは頭に白い熱をため、トラの後ろ足に押し付けた。トラは吼えながら後ろ足でアデを弾いた。サクライさんの右手を衛星のように回る赤い雷玉が無数にある。トラが吼えて大きな口を開けると、サクライさんは雷玉をその中に放り投げた。サクライさんは速いテンポの高音で発声した。その声にあわせてトラは腹をよじって苦しんだ。
「よしゃ。今度こそ決める」
ザオは有言実行し、トラの頭部をブルーライト・ソードで串刺した。トラが息絶えると同時に壁の一部からレンガが飛び出し、ヒト形になった。
「あんまりいらいらさせるな」
ヤマ君は目に青い光を宿してレンガ人形に言った。レンガ人形は親にしかられた子供のように身をすくめ、ぼろぼろと崩れ落ちた。レンガの飛び出してきた部分の壁に穴が空き、向こう側に抜けられるようになった。
「少しここで休むことにしましょう。テンネコ君、みんなの治療を頼みます」
「はいヤマ君」
テンネコは傷ついた者たちの傷を舐め始めた。ザオは壁にもたれて座り、カトリーはその横に座った。
「腕が少し鈍ってるなあ」
「私ちょっと疲れたよ」
ヤマ君とサクライさんも同じようにして座った。
「ギーシフンケキ島。不思議と危険に満ちた島か。炎絵の鳥に会えるのかなあ?」
「会ってみせるよ。それと、さっきの歌良かったよ」
テンネコは寄り添う二組のラバーズと目前の傷口とを交互に見つめた。テンネコは再びピンク色の舌を出し、治療に取り掛かった。




