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ヤバい写真  作者: 森好子


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第5話 踊る男たち

不気味な写真のことを考えながら見た夢は、意外と温かい空気のあるものでした。

 夢の中の私は、例の公園にいた。

 夜なのに、東屋の下だけは不自然なほど明るい。

 蛍光灯とも違う、どこかステージ照明めいた白い光が、

 石のテーブルとベンチをくっきりと浮かび上がらせていた。


 そのベンチの前で、男たちが踊っている。


 5、6人はいただろうか。

 みんな20代の後半くらいに見える。

 だぶっとしたTシャツやパーカー、腰の位置がやたら低いパンツ、キャップを斜めにかぶっている男もいる。

 90年代のヒップホップ番組からそのまま抜け出してきたような格好だ。


 なのに、どこか古びていない。

 服は少し色あせているのに、彼ら自身は妙に生き生きとしている。

 汗が飛ぶたびに、光を受けてきらりと光る。

 その顔には疲れよりも笑いが浮かんでいた。


 耳を澄ませても、音楽は聞こえない。

 ただ、彼らのスニーカーが地面を踏む音だけが、はっきりと伝わってくる。

 ステップを踏むたびに、砂利がかすかに鳴る。

 腕を振り上げ、身体をひねり、肩でリズムを刻む。

 静かなはずの公園に、見えないビートが満ちていく。


 私は東屋の柱の陰に立って、それを見ていた。


 なぜか怖くはなかった。

 ついさっきまで、あの写真を見て心臓が止まりそうになっていたはずなのに、

 これが夢だと認識していたからか、目の前の男たちをどこか見守るような気持ちで見ていた。


 ひとりの男が、少し前に出た。

 他のメンバーが、自然と輪になって場所を空ける。

 真ん中に出た男は、キャップを後ろ向きにかぶり直し、肩をぐるりと大きく回した。

 だぶだぶのTシャツがふわりと揺れる。


 その瞬間、私はなぜだか確信した。


 「あ、写真の人だ」


 顔立ちに、これといった特徴があるわけではない。

 だけど、Tシャツのサイズ感も、パンツのだぼっとしたラインも、スニーカーの履き方も、

 すべてがあの写真の男とぴたりと重なって見えた。


 彼はにやりと笑った。

 照れくさそうでもあり、自慢げでもある、不思議な笑顔だった。

 そして、音のない音楽に合わせて踊り始めた。


 ステップは決してプロのように洗練されてはいない。

 ときどきリズムから少しずれ、足がもつれそうになって、周りの仲間から笑いが起きる。

 それでも彼は気にしない。むしろ、そのたびに笑いながら、さらに勢いよく身体を動かす。


 仲間のひとりが、パチンと指を鳴らした。

 別のひとりが、手拍子を入れる。

 音のないはずの空間に、楽しさだけが濃く積もっていく。


 私は、いつのまにか笑っていた。

 声は出ていないのに、頬が緩んでいるのが自分でわかる。

 胸のあたりがふわふわと軽くなり、足元の暗さすら気にならなくなる。


 彼らの踊りは、うまいとか下手とか、そういう次元を少し外れたところにあった。

 ただ、そこに集まった友人同士が、音楽が好きで、身体を動かすのが好きで、

 今この瞬間を楽しんでいる。

 その事実だけが、何よりも強く伝わってくる。


 輪の外側で見ていた誰かが、デジカメを取り出した。

 デジカメが一瞬、白く光った。

 その瞬間、私は胸の中で、何かがすとんと腑に落ちた。


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