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転生錬金術士のほのぼのスローライフ ――拾った少女とモフモフと、なぜか聖騎士もついてきました  作者: しぃ太郎


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第12話 聖騎士、カブに敗北する


 エルの朝の日課、うちの庭での素振りは無事に木刀に変わった。

 内心ほっと息をつく。

 お陰で平和な村の風景が守られた。

 偉いな、私。

 そして今日もフライパンを――。

 ぶん回した!


「ヴァルーー!!避けるな、こらーー!なんでキッチンに変な生物を持ってくるのよ!」

「えー。だってさぁ。狩った獲物は自慢したいし?――それにどうやったら、こんなにヘボい攻撃に当たれるの?」


 うっ!

 そりゃ、私はか弱い美少女だけどーー!


 こちらの攻撃がヒョイヒョイと避けられる。

 何故私がこんなことをしているのか。


 それは、現在家の中に――しかもキッチンに、また巨大な『食材』が置いてあるからだ。


 やめてくれ。

 いや、本当にお願いします。

 清々しい朝に、モザイク処理をかけたいモノを見る衝撃を想像してほしい。

 神獣って何?アレなの?やっぱり猫的な生き物なわけか。


「早く、ガルドさんの所に持っていってよ。こっちはしばらく夢に見そうなんだけど……!」


「わかったわかった。でも、あれ触手が厄介なやつで――」

「聞きたくなーーい!」


 思い出しそうになって、フライパンを振った。

 力み過ぎて、前によろける。


「危ないですよ、ミーナさん」


 ふわりと肩を支えられる。

 うちに居着いてしまった、イケメン銀髪聖騎士だ。さすがだ。

 スマート過ぎる。


 イケメン馬鹿の、黒髪神獣とは違いすぎる。

 ――そして私の家にイケメンのインフレが起きている……。

 おばちゃんがまた、偶然を装ってうちの前を散歩していくじゃないか。


 そして、最近はエルの呼び方が『ミーナ嬢』から少しだけ変わった。

 ただそれだけの変化だ。

 しかし、どこかくすぐったい。


 そして、そんなほのぼのとした(?)朝の光景は、畑のおじさんの悲鳴で終わりを告げた。


 ◇◇◇


「うわ……。これはまた」

「随分と巨大なカブ?ですね……」


 私とエル、そしてちょこんと付いてきたリリの前には巨大なカブ?らしき物がひとつ土から覗いている。


 葉の部分がエルの身長ほどもある。

 リリが、両手に乗せたモフたん――ラーフェを、私の目の前にそっと差し出した。


「モフたん……昨日のカブが入ったスープをすごく気に入っていたから……」


 昨日の夕食は、確かに根菜たっぷりゴロゴロスープだった。

 え、それでこんなことに??

 神獣、怖っ!


「あ~、なんだ野菜かよ。テンション下がるな」

「こら、ヴァル!作ってる人に失礼でしょ!」


 もう、この人(神獣)がいきなり現れても驚かなくなってしまった。

 私だけじゃなく、村人も。

 適応力が高すぎる。


「ミーナ、これ。お前の錬金術か?何とかしてくれ、これじゃ他の野菜にも影響がでちまうよ」


「わかりました。なんとか……」

 出来るのか?ちらりとそのカブを見る。

 そう言えば、微かな前世の記憶に似たような話があったような気がするな。


 腰をもってえんやこら〜、みたいな感じだったような……。

 まぁ、あれは使えないな。


 ――というか、トラブルの原因を全部私のせいにされるのが納得できないわ。


 ぎろり、と――モフたんを睨めなかった。

 だって小動物なんだもん〜……。


「なんだ?あれを抜けばいいだけ?簡単じゃん。……そこの騎士さんにも出るんじゃね?いや、うーん無理か?」


「なっ!私だって力には自信があります」

「葉がこのサイズってことは……本体、かなり巨大じゃない?」


 エルは引き合いにだされて、反論する。

 銀髪騎士は、もうちょっと煽り耐性をつけたほうがいい。

 私の言葉も聞こえていない。


 あのサイズは、普通の人間には無理じゃないかな〜。

 いや、イケメンなら出来るのか?

 物理を超えられる??――知らんけど。



 エルが腕まくりをして、カブの葉の部分を掴んだ。

 まぁ、彼なら出来るだろう。知らんけど。


 しかし……。

 モフたんが、気に入ったからカブが大きくなった。

 彼が気にいってくれれば、他の野菜も同じ結果になる?


 うちの庭に家庭菜園を作れば、結構いいんでは?

 急激にうちのエンゲル係数が上がっている。

 いや。

 原因の男どもは、そこまで野菜を食べないしな。

 やっぱり駄目かな。


「おぉ~!さすが若い兄ちゃんは違うな!助かったよ」


 その声に顔を上げると。


 エルは地面に両手を突き、一発でわかる敗北ポーズだ。

 さすがのポージング選択。


「ふん、余裕〜余裕〜」


 もう一方では、力こぶを強調するように腕を曲げているヴァル。

 ――そりゃ、そうだよねぇ。


 私が色々と考えているうちに二人の間で勝負が繰り広げられていたみたいだ。


 しかし大きい。

 やはり、小さな小屋??それは言い過ぎか。でも私が見上げるほどのサイズだ。いや、本当に大きい。


 食べるの大変だろうな。私とリリでは絶対に無理だ。


「お礼に、全部やるよ!これじゃ、毎日カブ料理になっちまうからな〜」

「いやいやいや!おじさん、うちも似たようなもんです!食べきれません!村の人達に――」


 私が首と手を振って、お断りする言葉を口にしていたら、隣の聖騎士が先に答えてしまった。


「ご厚意感謝いたします」

「待て待て待て!食べきれないって」


 必死に訴えると、エルは銀髪を揺らしながら首を振る。


「ミーナさん。人のご厚意を断るのは失礼です。……そう教わって育っています。私の信念なのです」


 ぴきり。

 私の頭からそんな音が聞こえた気がした。

 村中に配ればよかった。

 しかし、彼にその覚悟があるなら別だ。


 乗ってやろう。その覚悟、引き受けてあげるわ。


「あ、俺は遠慮しとくからな!早く獲物をガルド食堂に持っていこうっと」


 ヴァルはキッチンの得体なしれないものを取りに戻った。

 出来れば後片付けも頼みたいが無理だろう。

 しかし、そんなわかりきった事はどうでもいいや。


 ――明日からが楽しみだわ。




「ミーナさん。……あの、流石にもう……カブは見たくないです……」


 エルが音を上げたのは二週間経ってからだった。

 毎日カブ料理づくしだった。


 カブのスープ、カブのステーキ、カブの漬物、カブの煮物――様々な料理が彼の目の前にだけ並んだ。


 因みにモフたんは三日目で飽きていた。

 私はお肉を摘みながら笑顔で答える。


「好意を全て受け取る前に、断るってことも学びました?」


 ――こくん。


 項垂れて頷く、その姿がちょっと可愛かったから、お肉の乗った皿を彼の前に置いた。

 隠しきれない喜びの表情を浮かべるエル。


 うっ!またもや銀髪長髪イケメンの笑顔……!

 ちょっと慣れてきた。


 そして残りのカブは、村の人に配って解決したのだった。

 その日からしばらくは村の食卓に毎日カブが乗っていたらしい。


 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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