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転生錬金術士のほのぼのスローライフ ――拾った少女とモフモフと、なぜか聖騎士もついてきました  作者: しぃ太郎


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第11話 ガッツリ男飯


「おはよう〜!今日も――」

「おはよう、おねえちゃん」


 私の特技は、寝起きがいいことだ。

 そして、寝起きとともに昨日の記憶が曖昧になっている事がある。


 そう、すっかり忘れていた。

 新しくここに居着くと宣言した神獣のせいで、エルの様子がおかしくなってしまったことを。


「あれ……?銀髪騎士が居ないな??」


 私が辺りを見渡すと、リリがくぃくぃと袖を引っ張る。

 そして、窓の外を指さした。


 チラチラと何かが横切る影。

 一瞬、目眩がして倒れそうになった。


 ――剣かな?

 それも、あの白い煌めきは……真剣かな??


「なんで!?……あれ!ヴァルは!?」

「朝からいなかったよ」


 ちょっとホッとする。

 庭で戦闘シーンが繰り広げられている、ということでは無いらしい。


 じゃあ、素振りか。

 よく見れば一定間隔で揺れている。


 やめて欲しいな〜……。

 でも、真剣振り回している人に声かけるの嫌だもんな。

 私は何も見なかったふりをして、リリと朝食を食べた。



 ――しばらくすると窓の外が静かになった。

 終わったらしい。


「おはようございます。今朝は風が気持ちよかったですよ。洗濯日和です」


「ああ、うん。おはよう、それとお疲れ様。――はい、お水」


 スッキリした顔で扉をくぐってきたエルに内心ホッとする。

 穏やかな人ほどキレると怖いしね。


「あー……素振りさ。真剣だとご近所さんが驚いちゃうから、木剣か何かに変えてもらえない?トーマの所で何か相談したらいいのを譲ってもらえるかも」


 ――私も正直怖いし。知り合いでも、やっぱり刃物を振り回されると近づきたくない。


 彼は、言われて気づいたのか、少しバツが悪そうに視線を彷徨わせた。


「すみません。ちょっとストレス発散しようかと、以前の日課を無意識に……」

「へぇ……。本物の剣で素振りが日課かぁ。さすが」


 私は錬金術士でよかった。

 平和だ。私が振り回すのはせいぜい日用品だ。

 あぁ、そう言えば。


 まだまだ料理器具の強化依頼が残っている。

 村のおばちゃん達の心を鷲掴みにした本人は知らないだろうけれど、彼のおかげで今月は素晴らしい売り上げになりそうだった。


 そんな事を考えていると、まさに嵐みたいな存在が。

 ――バンっ!

 と、大きな音を立てて扉を開いた。



「よう!朝から獲物を仕留めてきたぞ!ミーナ、これ捌いてくれよ!」


 神獣ヴァルがいきなり帰ってきて、高々と掲げたのは見たこともない大きな鳥だった。


 カラフルで、赤を基調に青や緑など鮮やかな差し色がたくさん入っている。体長はリリくらいありそうだ。

 無茶振りが過ぎる。

 私は、血は苦手なのだ。血抜きをしてくれていれば………いや、それでも出来ないわぁ。


「ごめん……私じゃ無理!ヴァル、こっち来て!このまま食堂に案内して紹介までしちゃうから。鳥、放さないでよ!」


「もう仕留めてるってば」


 私は、ヴァルの背中を押して、村の中央にある目立つ建物へ向かった。もちろん、彼の手には巨大な鳥が。

 うぅぅぅ。村の人たちの視線が……!


『ガルドの大盛り食堂』


 大きく屋根を飾る看板。

 " 何事も目立ってなんぼだ!”

 そう普段から豪語している彼は、元冒険者で熊のような体躯のおじさんだ。

 性格も豪快で、男気溢れる気のいい人だ。


「おー!大物を捕まえたじゃないか!やるなぁ。こりゃあ料理しがいがある!」


「お!わかるか!?結構こいつ逃げ足が速くて」


 挨拶の前に、意気投合する二人。

 あー……うん。

 良かった良かった。これで、次からはこちらに流せそうだ。

 しかし、ちょっと気になって聞いてみた。


「ガルドさん、この鳥知ってるの?」

「何度か食ったな」


 へぇ。意外と有名な食材だったりするのかな?


「なんて名前?」

「デカい鳥って呼んでる」


 ……この世界、わりと大雑把だ。


「この人、ヴァルっていうんだけど、これからちょくちょく食材運んでくるらしいからさ……。食べられそうなやつだけ何か作ってあげて」


「おぉー!お前、見どころあるな!どんどんもってこい、毒かどうかは食べてみなきゃわからんが」


 ――おい!怖いからやめて!


「あ!ガルドさん!ヴァルは毒とか耐性あるから、味見はこの人にね!絶対に無茶しないでよ?」


 不安だ。ヴァルと相性が悪すぎるエルとの関係も心配だったけれど、相性良すぎるこの二人も不安にさせる……。


 帰ったら、解毒薬と回復薬をいっぱい持たせておこう。腹痛の薬も忘れずに。


 ◇◇◇


「じゃーーん!お前らの分も作ってもらってきたぞ!おっちゃん、包丁捌きが凄かったぞ!かなりの実力者だ」


「ふふん。昔取った杵柄ってやつだな!それに、もちろん、料理も渾身の出来だ」


 二人が、完成した料理を我が家に運んできてくれた。

 ありがたくないことに、お裾分けしてくれるらしい。


「毒味は……?味見は?」

「もちろんしたぞ。ワイルドでガッツリ、肉!って感じな上に、何故か舌が痺れて病みつき間違いなしだ」


 ――それは、軽い毒ではないでしょうか?

 とにかく、絶対子どもにはダメなやつだ!


「リリには食べさせませんからね!……私、私が……!」

「いえ、ミーナ嬢。女性にそんなことはさせられません、ここは私が」


 一大決心して声を上げたが、ガルドさんは笑って言った。


「女子どもに、この味はわからんだろうからな!食べさせたいのは、そこの兄ちゃんだ」


「……ほっ」

「ぐっ!」


 エルのダメージが深刻だ!

 しかし、彼は頷いた。その顔は、いつも以上にイケメンに見える。


「……ええ。いただきましょう。きっと、これは試練です。乗り越えてこそ私はもっと強くなれる」


「あなたはどこを目指しているの……?」


 彼は何かの修行に臨むような顔をしている。

 そして、食べさせる気満々なガルドさん。

 こうなったガルドさんは止められない。彼は、これを善意でやっている。

 そしてヴァルは面白がっている。ニヤケ顔でそれを見ていた。


「よし!さすが騎士の兄ちゃんだ!それでこそ、このガッツリ男飯がわかるってもんよ!」


「口だけじゃないってところを見せてもらおうかな」


 ――そんなに追い詰めないであげて〜!!

 また庭で真剣を振り回しちゃうからっ!


 でも、声に出す勇気がない私は、心の中でそっと彼に声援を送った。


 ――そして。


 無言で食べ進めていたエルのフォークが止まる。


「……く!これしき、耐えられねば聖騎士失格だ……!」


 そこまでか。


 別に聖騎士関係なさそうだけどな……。私はそう思ったけれど、男の世界に口は挟めない。

 盛り上がっているし。


「……まだまだ、いける……!」


 そして見事に完食して、そのまま机に突っ伏して動かなくなった彼だった。

 あ、満足そう。

 エルの口元には微かに笑みが浮かんでいた。


 いや……痺れているだけかもしれない。




 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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