魔法談義で人類が脅威になる
月での事故から這い上がりを目指すあのプロデューサーは、実はまたひと騒動起こしていた。番外編的に、この世界での思わぬ事件を描きます。
◆〇〇小学校 学習発表会
世界は魔法でできている!
恐ろしいことに気づいたんだよ、僕が住んでいる地球に、とんでもない事実が判明した!
時間の基準としているらしい本初子午線というものがあるのだが、なんと子午線が北極点から赤道まで、ちょうど1万キロメートル。サッカーのピッチは縦105メートル×横68メートルが推奨されているらしいが、子午線がこんなにちょうどの長さだというのはすごいことではないか!
しかも水は、1センチ四方の立方体の量を集めたらちょうど1グラムになる。1メートルを100分割した長さでこんなことをぴったりできるなんて、まるで魔法ではないか――
◆城南大学光学科発行『社会と化学』 黒本建平執筆『アホを生む魔法』
とまあ、こんな論文を大真面目に書いた小学生がいて、しかもその生徒の担任教師は「世の中を一生懸命見た結果」として大舞台の発表会でこれを読ませたらしい。
そんな結果に価値があるかい?
それどころか、長さや重さは先人が水や地形を使って一生懸命作った基準であり、このような甘い考えを無視するのは、人類が歩んできた歴史への冒涜である。そしてその当たり前に対する発見を生徒に喜ばせること自体、それはぬか喜びであり先人が歴史を作ったのだと重要な情報を教えなければ、生徒の未来まで潰してしまう。正しい情報を集める意味で「学び」の意味すら誤っているのだから。
情けないね……本当に情けない。
◆YYYY年7月末 〇〇小学校終業式にて
確かに、あの子に発表をさせた先生は甘かったと思います。すごく反省しているし、もっといい先生になれるよう、先生をやめようと思います。
だけどね、世の中の不思議なことに興味を持つ、そのこと自体は、みんなにも忘れてほしくないの。
今そんなこと言っても言い訳でしかないし、みんなが大人になればあの記事を書いた人の方が正しいと思うかも知れません。でも、世の中の疑問から面白い未来を見つけるきっかけだってあるはずです。
それだけは、忘れないでね。
◆週刊毎朝 YYYY年30号 社説
環境破壊の温床か。
かつて特撮映画のプロデューサーをやっていた男が、ある脚本家からの伝手で小遣い稼ぎとして書いたらしい、小学生の評論発表に関する批判のコラム。月面での爆破撮影で大きな事故を起こし、業務上過失傷害に問われつつ不起訴処分となり、カムバックの映画を作っていたらしいが、その映画を作っているうちに、とある火薬を使いすぎると環境問題になることが発覚した。
なんでも、環境に影響しないクリーンな火薬をある企業とのタイアップで紹介しようとしていたらしいが、特定の素材で作ったものをその火薬で焼くと、ダイオキシンを大量に発生させることが判明したらしい。
環境破壊防止を主張しようとして、逆に環境破壊をしてしまう――いつから人間は、クリエイターなどと偉ぶった職業を名乗りながら、こんなにも情けないことをしてしまうようになったのか。
……ダイオキシンという言葉すら20世紀の一時期しか騒がれなかったから、昔からこうならば、人類が抱えてしまった、地球に対する脅威とも言えそうだが。ちなみに、あのプロデューサーは特撮ヒーロー作品を作りたがっているらしいが、確か赤い宇宙刑事を扱った大昔の特撮ドラマで、その頃は世間に知られてもいなかったダイオキシンを扱ったことがあったという情報も手に入れた。先人の功績をなめくさっているのはこのプロデューサーじゃないか。




