対峙
黒い結晶の塊から、いくつもの眷属が生まれ落ちた。
昨日戦ったものよりも、さらに禍々しい姿をしている。結晶に体の大半を侵食され、もはや元の魔物の面影を残していない個体もいた。
「囲まれるな、背中を合わせろ!」
フェリクの声に、僕らは互いの背を守るように陣形を組んだ。
「シャナ殿、僕らで足止めします。核の本体は」
「今は、あの眷属を片付けるのが先だ。核自身は、まだ本気を出していない」
シャナの言葉通り、核の塊はまだ、洞窟の中央でうねるように脈打っているだけだった。
*
眷属の一体が、僕へ向かって突進してきた。誓の力を纏った剣で迎え撃つが、結晶に覆われた体は、以前よりも硬く、剣が弾かれそうになる。
「弱点は変わらない、まだ結晶の薄い場所を探せ!」
シャナの指示に従い、僕は眷属の関節部分――結晶の侵食が薄い箇所を狙った。剣先が僅かに食い込む。渾身の力を込め、そこを貫く。
眷属が、断末魔の声を上げて崩れ落ちた。だが、その隙に、別の一体がフェリクへと迫っていた。
「フェリク!」
「分かってる!」
フェリクが剣を返し、辛くもその一撃を防ぐ。だが、体勢を崩し、片膝をついた。
「フェリク!」
僕は誓の力を全開にし、地を蹴った。フェリクに迫る眷属の側面へ回り込み、剣を叩き込む。二人がかりで、ようやくその一体を沈めることができた。
*
「はぁ……はぁ……このペースだと、いずれ数で押し切られる」
肩で息をしながら、フェリクがそう漏らした。実際、眷属は次々と生まれ落ち、切りがなかった。
「核そのものを止めない限り、意味がない」
シャナが、剣を構えたまま、洞窟の中央を見据えた。
「私が、道を開く。ロナン、お前は核の本体へ向かえ」
「シャナ殿は」
「ここで、眷属を食い止める。フェリク、手を貸してくれるか」
「もちろんです」
フェリクが即座に頷いた。僕は、一瞬の迷いを振り切り、剣を握り直した。
「必ず、決着をつけます」
「信じている」
シャナの言葉を背に受け、僕は核の塊へ向かって、まっすぐに走り出した。誓の光が、これまでにないほど強く、手のひらの中で燃え上がっていた。




