誓の墓場
遺跡の奥には、地下へと続く階段があった。
石段は苔むし、踏むたびに、ひどく冷たい空気が足元から立ち上ってくる。松明の明かりだけを頼りに、僕らは慎重に足を進めた。
「妙な匂いがする」
フェリクが、鼻を覆いながら呟いた。焦げた金属のような、それでいてどこか生々しい匂いが、階段の奥から漂ってくる。
「核が近い証拠だ」
シャナの声も、緊張で硬くなっていた。
*
階段を下りきると、そこには、想像を超えた光景が広がっていた。
広大な洞窟の中央に、無数の黒い結晶が寄り集まり、いびつな塊を形作っている。その表面には、うっすらと、無数の顔のようなものが浮かんでは消えていた。まるで、かつて誰かだったものが、そこに閉じ込められているかのようだった。
「あれが……」
「核だ。太古の昔、誓が歪みきった成れの果て」
シャナの声が、洞窟の中に低く反響した。
塊の表面が、僕らの気配を感じ取るように、大きく脈打った。
「――誓の民、か。久しいな」
低く、幾重にも重なった声が、洞窟全体から響いてきた。一つの声ではなく、無数の声が折り重なっているようだった。
「お前が、核か」
僕は、剣の柄に手をかけながら、そう問うた。
「核、誓、名前など、どれでも好きに呼ぶがいい。私はかつて、誰かのために立てられた誓いの、成れの果てだ」
その声には、憎悪も、悪意も感じられなかった。ただ、途方もない疲れと、孤独だけが滲んでいた。
*
「お前は、何を望んでいる」
シャナが、鋭くそう問うた。
「望み、というほどのものはもうない。ただ、私は、私と同じ血を引く者たちを、探し続けている。誓の民の力があれば、あるいは――この果てのない渇きを、終わらせられるかもしれないと」
「私たちを取り込んで、何をするつもりだ」
「終わらせる。この、朽ちてなお消えない誓いを」
その言葉に、僕は言葉を失った。核は、ただの怪物ではなかった。かつて誰かのために立てられた誓いが、目的を見失い、それでも消えることを許されず、永遠に彷徨い続けている――そんな、悲しい成れの果てだったのだ。
「お前のその渇きを、私たちが終わらせる」
シャナが、剣を構えながらそう告げた。
「取り込ませはしない。だが、お前をこのまま、彷徨わせ続けもしない」
核の気配が、大きくうねった。洞窟中の黒い結晶が、一斉に禍々しい光を放ち始める。
「――ならば、力を示せ。誓の民の末裔よ」
戦いの幕が、今、切って落とされようとしていた。




