黒い結晶の眷属
茂みの奥から現れたのは、これまで見たどの魔物とも違っていた。
全身の所々に、黒い結晶のような突起が突き出している。動くたびに、その結晶が鈍く光った。まるで、魔物自身の体を突き破って、内側から何かが芽吹いているかのようだった。
「気味の悪い見た目だな」
フェリクが、剣を構えながら呟いた。
「あれが、核の眷属の本来の姿なんですか」
「おそらく、末期の姿だ。黒い結晶に浸食されるほど、力を増す代わりに、本来の意志を失っていく。核に取り込まれるというのは、そういうことなんだろう」
シャナの声は、抑えていても隠しきれない怒りを帯びていた。
*
三体の眷属が、同時に襲いかかってきた。僕は誓の力を引き出し、鍛え直した剣術でその一体を迎え撃つ。刃を交えた瞬間、これまでとは違う重い手応えが腕に伝わった。
「硬い!」
「結晶の部分を狙え。あそこが弱点のはずだ」
シャナの指示に従い、僕は狙いを変えた。剣先を、眷属の肩に浮き出た結晶へと突き立てる。甲高い音と共に結晶が砕け散ると、眷属は途端に動きを鈍らせた。
「効いてる!」
フェリクも同じように、結晶を狙って攻撃を集中させる。三体の眷属は、しばらくの抵抗の後、次々と地に伏していった。
*
戦いの後、僕らは砕けた結晶の欠片を拾い上げた。黒く濁った、あの物体と同じ質感をしている。
「これが、核の力の源、ということですか」
「断定はできない。だが、少なくとも、核と眷属を繋ぐ何かではあるはずだ」
シャナは欠片を懐にしまい、周囲を警戒するように見渡した。
「この先、もっと濃い気配が待っている。今の比じゃない」
「覚悟はできています」
僕がそう答えると、シャナは小さく頷いた。
「その意気だ。だが、無茶はするな。お前には、まだやるべきことが残っている」
日はすでに沈みかけていた。僕らは、暗くなる前に野営の準備を整えることにした。焚き火を囲みながら、誰も多くを語らなかった。それでも、その沈黙の中に、確かな覚悟が満ちているのを、僕は感じていた。
明日には、核の気配の中心――使徒がいるはずの場所へ、いよいよ足を踏み入れることになる。




