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はい/いいえ勇者、母親が強すぎる。  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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21/24

第21話:最終決戦、勇者はほぼ何もしていない

 ――魔王の間。

「来い、勇者」

魔王ゼノスが静かに構える。 その一歩で、空気が歪んだ。

「……はい」

(来いって言われても) (どうすればいいのか分からない) (帰りたい)

ユウの膝は、すでに震えている。

「勇者殿!! 指示を!!」

ガルドが隣で叫ぶ。

(指示……?) (俺が……?)

「……はい」

「突撃ィィィ!!」

「違う違う違う違う!!」 ケンジが即座にツッコむ。 「今のただの相槌だから!!」

ガルドはもう止まらない。 全力で魔王に突っ込んでいく。

「よく来たな、愚か者!!」

魔王が腕を振る。 巨大な炎の塊が生まれる。

「《灼熱の暴風》!!」

「……っ!!」

ユウ、反射で横に転がる。

「……いいえ」

(来ないで来ないで来ないでの意)

「『いいえ(攻撃を無効化せよ)』!!」 セシルが叫ぶ。 「防御を解除、反射術式を展開!!」

「なんでそうなるの!?」

炎が反射され、魔王に直撃。

「ぐぉっ!?」

魔王、のけぞる。

「……はい?」

(え、当たった?)

「出た!! 『はい(想定内)』!!」 ガルドが震える。 「やはり勇者殿は未来を見ている!!」

「見てない!! ただ転がっただけ!!」

――戦闘は、完全におかしな方向に進み始めていた。

「ならばこれだ!!」

魔王が地面に魔法陣を展開。

「《大地の封縛》!!」

床が光る。

(なんか嫌だ)

ユウ、一歩横へ。

「……いいえ」

「回避指示!!」 レティシアが叫ぶ。 「全員、その場から離れてください!!」

全員、横へ。

直後、元の位置が石化。

「……はい」

(うわ危な)

「『はい(罠は見切った)』!!」 セシルがメモを取り出す。 「勇者様の行動パターン、更新します!」

「やめて!! 分析やめて!!」

魔王の額に汗が浮かぶ。

(全部避けている……?) (いや、違う……これは……)

魔王、ちらりと背後を見る。

(母親は……いないな……?)

「集中しろ!!」 ケンジが叫ぶ。 「戦闘中に後ろ確認すんな!!」

「気になるに決まっているだろ!!」

「気にするな!!」

――そして。

魔王、最大技の構え。

「終わりだ、勇者」 低い声。

「《終焉の解放》」

黒い光が集まる。 空間が軋む。

「全魔力を解放する。これで全てを消し飛ばす」

「勇者殿!! 指示を!!」

「……」

(終わった) (完全に終わった) (これ無理)

「……はい」

「突撃ィィィ!!」

「だから違うって言ってんだろ!!」

ガルド、突っ込む。

「いいえ!!」

「魔法中止!!」 セシル、術式停止。

「違う!! それも違う!!」

「では再開!!」

「はい!!」

「同時発動!!」

「何でそうなるの!?」

「つまり逆手に取れということですわ!!」 レティシアがなぜか悟る。

「何を!?」

――結果。

ガルドが懐に入り、 セシルの魔法が魔力の流れを歪め、 レティシアの神聖術が干渉し、

魔王の《終焉の解放》が――

内側に向かって暴発した。

ドォォォォォォォォン!!!!!!

「ぐぁァァァァァァ!!!!!」

魔王、自爆。

煙が晴れる。

「……」

「……」

「……倒れましたね」 セシルが言う。

「勝ったぞォォォ!!」 ガルドが叫ぶ。

「勝った……のか?」 ケンジが呟く。

「……はい」

(勝った……?)

ユウはその場に立ち尽くす。

(俺、何した?)

思い返す。

(転がった) (しゃがんだ) (逃げた) (はいって言った) (いいえって言った)

(……以上)

「勇者殿!! 素晴らしい指揮でした!!」 ガルドが肩を叩く。

「……いいえ」

「謙遜なさる!!」

「謙遜じゃない!! 本気で何もしてない!!」

「勇者様」 レティシアが優しく言う。 「あなたの沈黙が、我々を導いたのです」

「導いてない!!」

セシルが頷く。 「はい。現在、勇者語は四十二種類に分類されています」

「増えてる!!」

「……」

ユウは聖剣を見る。

――抜いていない。

一度も。

(まただ)

(また、勝手に終わった)

(俺は何もしてないのに)

魔王が、倒れたまま呟く。

「……最後まで……分からなかった……」

「何がだよ」

「……お前の……母親が……来るかどうか……」

「まだそれ気にしてんの!?」

「当然だろう……!!」

魔王、最後の力で叫ぶ。

「来なかったな……本当に……」

「来ない方が普通なんだよ!!」

「……それだけが……救いだった……」

「何その評価!!」

魔王、静かに崩れ落ちる。

完全に沈黙。

――戦いは終わった。

外へ出ると、空が明るい。

「終わりましたわ、勇者様!」 レティシアが微笑む。

「王都が待っています」 セシルが言う。

「宴だ!!」 ガルドが笑う。

「……ユウ」 ケンジが横に立つ。

「……はい」

「終わったな」

「……はい」

少しだけ間。

「……よかったのか?」

「……」

ユウは空を見る。

(よかったのか)

(俺は)

(何もしてないのに)

(でも)

(終わった)

「……いいえ」

ケンジは、小さく頷いた。

「……だよな」

風が吹く。

「帰るか」

「……はい」

その「はい」は、 これまでで一番、重かった。

――勇者は、 一度も自分の意志で戦わないまま、 世界を救ってしまった。

残ったのは、 勝利ではなく、

「また、勝手に終わった」

という感覚だけだった。

第21話 了

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