表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい/いいえ勇者、母親が強すぎる。  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/24

第18話:魔王軍四天王、だいたい自滅する

 魔王城へと続く街道は、霧に包まれていた。

視界は悪い。空気は重い。

普通の冒険者なら足が止まる場所だ。

だが——

「……この辺りですな」

セシルが、例の地図を広げた。

ミツキの字で、丁寧に書かれている。

『この先、順番に来ます。大きいの→頭いいの→キラキラしたの→様子見の人』

「雑な分類だな!!」 ケンジが叫ぶ。

「しかし的確です」 セシルは真顔で頷いた。

「……はい」 ユウも頷いた。

(来るのは知ってた) (知ってたけど) (来てほしくはなかった)

その時だった。

ドゴォォォォン!!

地面が割れた。

霧を押しのけて現れたのは——

三メートル級の巨体。

筋肉。斧。圧。

「ガァァァァァッ!!!」

「来たぞ!!」ガルドが構える。

「我こそは四天王、豪腕のガルザム!!」

「一番わかりやすいの来たな!!」ケンジ。

「順番通りです」セシル。

「……はい」

(でかい) (無理) (帰りたい)

ユウは固まった。

「……」

「……なんだ、その態度は」

ガルザムが目を細める。

「構えない……? 喋らない……?」

「……」

(できないだけです)

「この沈黙……!!」

ガルザムの肩が震えた。

「俺を“敵として認識していない”ということか!!」

「違う違う違う!!」 ケンジが叫ぶ。

「うちの息子は人見知りなんです!!」

「ほざけェェェ!!」

ガルザムが突撃した。

その瞬間——

ユウは、反射で一歩横にズレた。

ただそれだけだった。

カチッ。

足元のタイルが沈む。

次の瞬間。

ガルザムの足元の床が——跳ね上がった。

「ぬわああああああ!?」

巨体が宙を舞う。

シャンデリア直撃。

斧が絡まる。

自重で落下。

ズドォォォォン!!

「……」

「……」

「……」

「……はい」

「見事!! 重量差を利用したカウンター!!」 ガルド大興奮。

「罠だよ!!」 ケンジ即ツッコミ。

「偶発的罠誘導」 セシルが記録。

「書くな!!」

ガルザムはピクピクしていた。

終了。

霧が、さらに濃くなる。

「……やれやれ」

細い影が現れた。

「四天王、策謀のリグドールです」

「二人目だな」ケンジ。

「頭いいやつです」セシル。

「……はい」

(怖さの種類が違う)

「勇者殿」

リグドールが微笑む。

「一つ質問を」

「この先に進みますか?」

「……」

(進みたくない) (でも進むしかない)

「……はい」

「……なるほど」

リグドールの目が光る。

(この“はい”……) (罠への誘導だな?)

(つまりこの先に進ませたい……) (ならば私は——逆を行く!!)

「私は進まん!!」

くるりと振り返る。

一歩、後ろへ。

ドゴォォォォン!!

「ぐぁぁぁぁ!?」

爆発。

「……あ」

「後ろに罠あったな」 ケンジ。

「前方はミツキ様が解除済みです」 セシル。

「後ろは?」 「そのままです」

「なんで前だけ優しいんだよ!!」

煙の中からリグドールがよろめく。

「なぜ……私の罠を……」

「……いいえ」

ユウが小さく首を振る。

「——っ!!」

「全否定……!!」 リグドールが崩れる。

「違う!! 普通の否定!!」 ケンジ。

「……完敗だ……」

勝手に納得して気絶。

「自己策略自爆」 セシル記録。

「だから書くな!!」

ふわり、と花びらが舞った。

「……来ましたね」

現れたのは、美しすぎる存在。

「四天王、美の探求者ルシアード」

「ジャンル変わったな」 ケンジ。

「最も危険なタイプです」 セシル。

「……はい」

(まぶしい)

「勇者よ」

ルシアードが静かに言う。

「私の美を——どう思う?」

「……」

(困る) (すごく困る)

視線が逸れた。

ほんの少し。

「——っ!!」

「え」 ケンジ。

「否定された……!!」

「してない!!」

「この私より……石ころを選ぶとは……!!」

「選んでない!! 目が疲れただけ!!」

ルシアードが震える。

「……なるほど」

「私の美は……未完成か」

「違う方向に解釈した!!」

「勇者よ」

ルシアードが問う。

「私は……美しいか」

「……」

(どっちも地雷)

「……はい」

「……っ」

涙。

「認められた……」

スッと道を開ける。

「行け、勇者よ」

「え、戦わないの!?」ガルド。

「不要だ」

「なんでだ!!」

「答えは得た」

「何の!?」

そのまま退場。

「……」

「……」

「……終わったな」 ケンジ。

物陰から、最後の影。

四天王・バルガス。

(……無理だろ)

(あいつ何もしてないのに三人消えたぞ)

(絶対関わったら終わる)

その時。

ユウが、そちらを見た。

「……はい」

軽く頷いただけ。

「ひぃぃぃぃ!! 全部バレてる!!」

バルガス、即逃走。

「四人目が一番判断早いな」 ケンジ。

静寂。

敵、全滅。

「……」

ユウは自分の手を見た。

(剣、抜いてない)

(歩いた) (頷いた) (ちょっと動いた)

(それだけ)

「勇者殿!!」 ガルド大興奮。

「四天王を瞬殺とは!!」

「……はい」

(違う)

「伝説確定です!!」 レティシア。

「記録更新」 セシル。

「だから違うって!!」

ケンジが叫ぶ。

「こいつ何もしてないからな!!」

「……はい」

(本当に何もしてない)

歩きながら。

(なのに)

(全部終わった)

(俺がやったことになってる)

(世界が勝手に進んでる)

(……これ)

(ちょっと怖い)

「勇者殿!! 見えましたぞ!!」

ガルドが指差す。

霧の向こう。

巨大な門。

魔王城。

「……はい」

(来てしまった)

「いよいよですな!!」

「……はい」

(いよいよ)

(でも)

(魔王より)

(お母さんの方が怖い気がする)

ケンジがぼそっと呟く。

「……なあ」

「これさ」

「もう勇者いらなくね?」

「いるわ!!」

誰も否定しきれなかった。

第18話 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ