第22話「経済封鎖発動」
封鎖は、宣言より早く始まった。
「北方同盟、交易路を一時閉鎖!」
「共和国、関税倍増を正式発表!」
「帝国、通貨連合からの離脱検討!」
王都の城内は騒然となる。
市場にも波は届いた。
「魔王領への輸送が止まる!?」
「鉱石が入ってこないぞ!」
ゴルドが顔を青くする。
「また俺か!? 俺の剣か!?」
エルマは帳簿を抱えて震えている。
「物流指数、急落! 回転率が……回転率が……!」
「落ち着いてください」
レオンは静かに言う。
だがその視界は、明らかに薄い。
赤も青も、くすんでいる。
「第一波は三日以内に収束可能」
「どうやって!」
「在庫調整、代替路確保、通貨安定措置」
「また三手か!」
「四手だと遅い」
◆
王都中央市場。
価格がじわじわと上がり始める。
鉱石不足。
香辛料不足。
地方特産も滞る。
「芋が消えた!」
「芋が消えると困る!」
「なんで芋が基準なんだ!」
混乱は笑いを含んでいるが、不安も滲む。
アルドが剣を担いで言う。
「最悪、武力で突破するか?」
「却下です」
レオンが即答する。
「戦争はコスト過多」
「だが封鎖だぞ」
「封鎖は圧力です。戦争ではありません」
セレネが静かに言う。
「相手は試しています」
「何を」
「あなたを」
レオンの視界に、帝国の線が走る。
ヴァルケンの意図。
王都がどこまで耐えるか。
合理がどこまで使われるか。
「……最短で帝国通貨を崩せます」
小さく呟く。
セレネが強く言う。
「使わないでください」
声がはっきりと届く。
レオンは目を閉じる。
最短。
帝国の金融基盤を揺らし、
投機筋を動かし、
信用を削る。
三手。
帝国は後退する。
だが――
視界が一瞬、真っ白になる。
音が消える。
市場の喧騒が遠い。
「……負荷増大」
壁に手をつく。
「レオン!」
セレネが肩を掴む。
「今、何を見ました」
「帝国破綻ルート」
「実行しないで」
「実行していません」
だが、見ただけで削られる。
◆
会議室。
レオンは新たな案を提示する。
「代替物流ルートを魔王領経由で再構築」
「北方同盟を迂回できるのか」
「可能です」
「共和国の関税は」
「一部吸収」
ゴルドが呻く。
「吸収って誰が」
「我々が」
「俺らか!」
「税収余力があります」
エルマが震える声で言う。
「持ちますか?」
「持ちます」
だが視界は白い。
数字は読める。
線は見える。
だが色が戻らない。
ヴァルケンの言葉が蘇る。
『合理は暴力だ』
◆
三日後。
封鎖の第一波は、予想より小さく抑えられた。
市場は不安定だが崩壊していない。
「持ちこたえた……」
ゴルドが息を吐く。
「まだ第一波です」
レオンは淡々と言う。
セレネが横で囁く。
「あなたが削られています」
「許容範囲」
「嘘です」
視界が、灰色だ。
市場の赤い旗も、薄い。
アルドが低く言う。
「お前、無理してないか」
「合理的範囲内です」
「顔色が合理じゃねぇ」
沈黙。
遠くで鐘が鳴る。
封鎖は続く。
外交は硬直。
市場は揺れる。
レオンは静かに空を見る。
色が戻らない。
「……最短を使えば、終わる」
だが使えば、白くなる。
壊せる。
だが壊さない。
合理は国境を越えた。
今度は、限界が試されている。
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