表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーを追放された“総務担当”ですが、世界最強の無駄遣いでした  作者: 風見セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/34

第21話「経済侵略認定」

 王都の空気が、変わった。


 市場は相変わらず騒がしい。


 芋は売れ、剣はそこそこ売れ、冒険者は文句を言いながら働いている。


 だが、城の上空には、三色の旗が翻っていた。


 帝国。

 共和国。

 北方同盟。


 同時に来訪。


「……同時ですか」


 レオンは城の窓から旗を見る。


「圧力ですね」


 セレネが静かに言う。


「外交的包囲網」


 城内会議室。


 三国代表が並ぶ。


 中央に立つのは、帝国宰相ヴァルケン・ロドス。


 灰色の髪。

 鋭い瞳。

 感情の揺れがほとんどない。


「王都と魔王領の共同市場は、周辺諸国に深刻な影響を与えている」


 低く、よく通る声。


「資本流出。価格破壊。雇用喪失」


 共和国代表リディアが続ける。


「我が国の若者が王都へ流れています」


 北方同盟代表は短く言う。


「経済侵略だ」


 沈黙。


 レオンは淡々と答える。


「侵略の意図はありません」


「結果が侵略だ」


 ヴァルケンの視線が突き刺さる。


「合理は国境を越える」


 レオンはわずかに目を細める。


「合理は損失を減らす手段です」


「誰の損失だ?」


 空気が凍る。


 勇者アルドが腕を組む。


「戦争はしていない」


「経済は戦争の延長だ」


 ヴァルケンは一歩前に出る。


「王都は市場を武器にした」


 セレネが冷静に言う。


「自由取引です」


「自由は強者の言葉だ」


 その言葉に、レオンの視界に線が走る。


 最短。


 帝国通貨信用崩壊ルート。

 共和国債務圧迫ルート。

 北方同盟資源依存切断。


 三手。


 帝国は一年以内に破綻する。


 共和国は王都依存。

 同盟は内部崩壊。


「……可能です」


 小さく呟く。


 セレネが横を見る。


「何がですか」


「最短で包囲網を解体できます」


 ヴァルケンが微笑む。


「ほう」


 彼は気づいている。


「見えるのだな」


 レオンの視界が、一瞬だけ白くなる。


 彩度低下。


 音が遠い。


「帝国通貨を売り、信用を削り、物流を遮断すれば」


 会議室がざわめく。


「一年で破綻します」


 ヴァルケンの目が細くなる。


「合理的だ」


「だが実行しません」


 レオンは静かに言う。


 視界がさらに白くなる。


 声が遠い。


「なぜだ?」


「損失が大きすぎる」


「誰の?」


 再び問われる。


 レオンの視界に、三国の民衆の線が走る。


 失業。

 飢餓。

 暴動。


 最短は、確かに可能。


 だが。


「……世界の損失です」


 音が一瞬途切れる。


 白い。


 会議室の色が薄い。


 セレネが小さく呟く。


「レオン」


 ヴァルケンがゆっくりと笑う。


「君は危険だ」


「承知しています」


「君は世界を壊せる」


 沈黙。


 勇者が低く言う。


「壊さない」


「壊さないと、壊されるぞ」


 ヴァルケンは告げる。


「我々は経済封鎖を検討している」


 空気が張り詰める。


「物流停止。通貨連合離脱。関税倍増」


 王都がざわめく。


 市場が止まる。


 レオンの視界に、封鎖後の線が広がる。


 税収減。

 価格高騰。

 失業再燃。


 最短はある。


 だが。


 白い。


 世界が白に近づく。


「……問題ありません」


 声がわずかに遅れる。


 セレネが強く言う。


「問題があります」


 彼女の声だけが、はっきりと聞こえる。


「あなた、色が」


 レオンは瞬きをする。


 視界は薄い。


 だが線は、鮮明だ。


 ヴァルケンが言う。


「合理は暴力だ。使えば使うほど、君は削れる」


 沈黙。


 レオンは初めて、少しだけ呼吸を乱す。


「……外交解決を優先します」


 ヴァルケンは頷く。


「それでいい」


 彼は静かに告げる。


「我々は敵ではない。だが対等でもない」


 旗が揺れる。


 包囲網はまだ解けない。


 だが、戦争も始まっていない。


 レオンは会議室を出る。


 廊下で壁に手をつく。


 色が、戻らない。


「……負荷、上昇」


 セレネが隣に立つ。


「あなた、今、帝国を潰せたでしょう」


「はい」


「なぜ止めたのです」


「世界が白くなります」


 初めて、はっきりと言った。


 セレネは一瞬だけ目を見開く。


「それが副作用ですか」


「恐らく」


 窓の外。


 王都の市場はまだ騒がしい。


 だがその向こうで、世界規模の揺らぎが動き出している。


 合理は国境を越える。


 だが世界は、それを許さない。


 総務は初めて、自分の力の重さを自覚する。


 壊せる。


 だから壊さない。


 だが、いつまで持つのか。


 白い世界が、夢の中で広がり始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ