表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティーを追放された“総務担当”ですが、世界最強の無駄遣いでした  作者: 風見セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/34

第20話「合理は万能ではない」

 共同市場設立から二ヶ月。


 王都の経済は、ようやく落ち着きを取り戻した。


 価格は緩やかに揺れ、

 商人は怒鳴り、

 冒険者は文句を言いながら働き、

 勇者はときどき在庫を抱え、

 芋はなぜか定番商品になった。


「……暫定均衡」


 レオンは帳簿を閉じる。


 効率八七%。

 破綻ゼロ。

 暴動ゼロ。


 だが、完全安定ではない。


 それでいい。


 ◆


 王都会議室。


「最終報告だ」


 財務大臣が言う。


「共同市場は成功と見なす」


 ゴルドが腕を組む。


「成功……か」


「売上は戻ったぞ」


「でも、前より疲れる」


 エルマが目を輝かせる。


「揺らぎがあるからです!」


「疲労をポジティブに言うな!」


 セレネがレオンを見る。


「総括を」


 レオンは立ち上がる。


「合理は市場を壊します」


 会議室が静まる。


「供給を最適化し、価格を固定し、競争を排除すれば、短期的には安定します」


「だが?」


「活気が消えます」


 ゴルドがうなずく。


「確かに、つまらなかった」


「市場は数字だけでは動きません」


 レオンは続ける。


「感情、期待、衝動。揺らぎが必要です」


 アルドが小さく笑う。


「ようやく人間らしいことを言うな」


「記録済みです」


「記録するな」


 小さな笑いが起こる。


 ◆


 会議後。


 王都の広場はいつもの騒がしさを取り戻していた。


 値札はばらつき、

 商人は値切り、

 子どもは走り回る。


 レオンの視界に映る色は、鮮やかだ。


 完全ではない。

 だが豊かだ。


「第二章、完了ですね」


 セレネが隣に立つ。


「章?」


「市場編です」


「まだ業務は続きます」


「もちろん」


 彼女は少しだけ真顔になる。


「ですが」


「?」


「成功しすぎたことが、外に波及しています」


 レオンの視界に、新たな線が走る。


 王都の外。

 他国。

 別の勢力。


「周辺諸国が共同市場を警戒しています」


「経済侵略と見なされています」


 ゴルドが後ろで叫ぶ。


「今度は何だ!」


「戦争か!?」


 レオンは静かに答える。


「可能性はあります」


 アルドの目が鋭くなる。


「剣の出番か」


「まだです」


 セレネが言う。


「今度は“外交”です」


 市場は成功した。

 だが世界は狭くない。


 合理が一国を救えば、

 別の国が揺らぐ。


「……最短は?」


 セレネが問う。


「強硬策」


「却下です」


「承知しています」


 レオンは広場を見渡す。


 笑い声。

 芋の匂い。

 剣の鈍い光。


「合理は万能ではありません」


 静かに言う。


「万能なら、世界はもう終わっています」


 セレネが微笑む。


「ようやく総務らしくなりましたね」


「総務は世界を軽視しません」


 遠くで鐘が鳴る。


 平和の音。


 だがその向こうで、新たな揺らぎが生まれている。


 経済は安定した。


 だが世界は、もっと複雑だ。


 合理と揺らぎ。


 その均衡を保ちながら、総務は次の舞台へ向かう。


 市場は笑って弾け、

 そして静かに呼吸を続ける。


 物語は、まだ終わらない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ