39話 後編 戦いの始まり
長髪を束ねた男は赤い髪の男は降りてきた吉塚とペガサスから人間の姿に戻った奏楽を面倒そうに見る。
長髪の男は「何をしにきた」と問う。吉塚は笑みを浮かべて答える。
「何をって、あんたらの殺戮行為を止めにきたんだろうが」
赤髪の男は「まだそんなことを言うのか」と怒鳴る。
奏楽は二人の間に割って入る。
「だいたいにしてなんで一般人の殺戮をする必要がある? あんたらの言うNPCっていうのが仮にそうだとしても、別に殺す必要なんてないだろう?」
「人間だけの世界を作りたいとは思わないか?」
「なんだと?」
奏楽の質問に対して予想ができない返答に言葉を失う二人。
長髪を束ねる男は赤髪の男を肘で突く。
「言ったって無駄だ。こいつらは正義を楽しみに生きている連中だ。なにせNPCを守って生きているんだからな」
奏楽は魔女として苦しんできた者たちが前向きに頑張って生きていることを知っている。
「守って何が悪い! みんな一生懸命生きているんだ! そんなみんなを殺そうとするだなんて、君たちは正気じゃない!」
赤髪の男は不機嫌そうに返す。
「だからそれすらも、コンピュータによって制御されている結果なんだって。苦しんでいる姿も、一生懸命な姿も全部コンピューターに制御されている結果なんだよ。それがこの世界のリアルだってこと!」
奏楽は「そんなことどうやって分かるっていうんだ! 決め手はなんだ!」
すると赤髪の男は奏楽を指さす。
「お前がペガサスの姿になるように。普通だったらありえないことが起こる世界。つまりこれをゲームの世界として見ると全てが片付く」
「そんな馬鹿な。もし違ったらどうするんだ! 取り返しのつかないことをしているんだぞ!」
「だから、ゲームの世界だから問題ないんだってば!」
このやり取りをしている最中に天から光が降り注いだ。実体を持った神が降臨する。
奏楽は「あれは」と呟く。夢で見た人物。ロオキだ。
〇
ロオキは地へ降りるなり高笑いしてこの場の者たちを見た。
「いやはや、面白すぎて本来であれば見物しているのだが、たまにはお礼を言わなくてはならないと思ってな」
赤い髪の男は腕を組んで述べる。
「こんな珍しいこともあるものだな。俺たちの前にしか出てこない神が」
吉塚は「神?」と言い、奏楽に問う。
「奏楽、分かるか?」
「うん、分かるよ。夢の中でフリイグと戦っていた神だ。神ロオキ」
「ロオキか」
吉塚は神の名を呟く。赤い髪の男はロオキに問う。
「いったい何しにきやがった!」
ロオキは杖を地に突き「挨拶だよ」と答えた。
「いやあ、いつも楽しませてもらっているよ。この話が通じ合わなすぎる光景がおかしくておかしくて。毎度楽しくてしょうがないよ」
奏楽は「神だったら彼らを止めたらいかがですか?」と聞くもロオキは首を横に振る。
「そんなもったいないことできるはずないじゃないか。君たちはこれからも彼らのような者たちの相手をしてもらわなければならない」
吉塚は神の発言とは思えない言葉の羅列に呆気にとられる。
「こんな鬼畜な所業を語りながらも神なのか?」
奏楽は手を前に出し詠唱する。
「――今我に勝利を約束したまえ! 勝利の剣!」
彼の手に光が収束し一本の剣となる。
ロオキはにっこり笑って手の甲を向けて指を動かしこいこいと挑発する。
〇
奏楽の勝利の剣の攻撃は全てにおいてロオキの杖で受け流された。
「つ、強い!」
「そうだよ。僕は神なんだから。それなりに強いさ」
剣を上から振るうと杖で横なぎに受け止め、その後杖を回して杖の先で奏楽の腹部を突く。
「がはっ」
「そらそらどうしたんだい。女神フリイグからもらった神の力を振るう勇者よ」
吉塚は剣を引き抜き助けに入る。
「俺もいることを忘れてもらっては困る!」
だが吉塚も戦闘に加わったことでロオキはさらに楽しそうに笑う。
「君たちまだ僕は魔法も使っていないのにこの様かい?」
吉塚の剣を弾き杖で薙ぎ払い、奏楽の剣を受け止め流し杖で殴りつける。
奏楽は頭から出血し頭を押さえて倒れる。
「奏楽っ! 大丈夫か!」
「大丈夫。こんなんでダウンしてたまるか! この神がいる限りこの世界に平和は訪れない!」
剣を地に刺し立ち上がる奏楽。
ロオキは杖を棒術の如く振り回し攻撃が届かない彼らを煽る。
「僕はねえ、思うんだけど。君たちでは勝てないと思うよ?」




