38話 後編 戦いが始まる気配
奏楽はライフルバックからライフルを取り出して構える。モンスターは逃げていってしまうもライフルならば遠くからでも狙いがつく。
スコープを覗きモンスターの背後から狙撃。
命中したモンスターはごろごろ転がって血を流す。
仕留めると知った姿がモンスターに近づいていくのがスコープで確認できた。
木の棒を持った二本足で歩く黒猫がつんつんとモンスターをつついているのだ。その片方の手には犬を繋ぐリードを握っている。犬は二メートル越えのミニチュワダックスフンド。尻尾をぶるんぶるん振るっている。
奏楽は駆け寄っていくと「ほら、危ないから近づかないの」と言って黒猫からモンスターを引きはがす。
モンスターを倒すと霧が晴れていった。どうやら今回は魔女はいないらしい。
ミニチュワダックスフンドと散歩を続ける黒猫。その後ろを奏楽とすずも続いた。黒猫とミニチュワダックスフンドの主人は女主人で魔女だったことが判明しており、すでに教会で洗礼を受け呪いは解けている。
〇
黒猫の家に着くとお茶を出してもらい奏楽たちはゆっくりしていた。女主人にでかいミニチュワダックスフンドはお腹を撫でてもらっている。
魔女ではなくなった女主人に今朝見た夢のことを告げる。女神フリイグがロオキという男神と戦っていた夢だ。
フリイグという女神は良く知っているが、ロオキという神は知らないのだ。
この世界の住人ならば知っているかもしれない。
女主人によるとロオキというのは神オーディオデに敵対する神らしい。ロオキという神はこの世界を混沌に陥れ平和や自然を壊す存在。だとしたら最近捕えた好き勝手に殺戮を繰り返す赤いコートの組織レッドコートと何か関係があるかもしれない。
夢の話だがおそらくフリイグが戦っていた理由に世界を守る重要な意味があるのかもしれない。
〇
ローブのフードを深く被り杖を突いて歩く男。まるで見た目だけ見ると魔法使いである。王都の拘留所へと向かうと警備兵たちを眠らせていき、赤いコートを着た連中が捕まるエリアへとやってきた。
拘留所の個室のドアをノックすると窓から姿を現す髪がオールバックの男。
「なんだよ来たのか。やっとイベント発生かよ」
オールバックの男は「おい、早く出せよ。脱出イベントだろ?」とローブを着た男を急かす。
フードを外すと顔が露わになる。褐色肌に金髪の男だ。
「待ってたぜ。俺たちにゲームプレイヤーの権利を与えてくれた神! ロオキ!」
ロオキは頭をかいて問う。
「でも、君たち、僕を神という役割のNPCだと思っていたよね?」
オールバックの男は肩を鳴らしながら「何言っているんだ」と訴える。
「神は全員NPCだろうがよお」
「そうか、それなら……」
部屋のドアが開かれる。
「ここまで痛い目を見てそんな物の考え方なら信頼できる。君たちならば、この世界を混沌に陥れることができる」
そんなことを言われながらもオールバックの男の脳裏には自分を倒したベッシ・アンデイスという女の姿があった。自分を倒したNPC。ゲームプレイヤーでもない存在に彼は負けたのだった。この世界をゲームの世界と信じながらも彼女の存在はオールバックの男にとって特別になっていた。
それはともかく、ロオキの手によって厄介なことに再びこの異世界がゲームの世界であると思い込んでいる組織レッドコートが復活するのだった。
〇
すずが右手を外してワープ装置を起動しようとしたその時、天から舞い降りる一人の女神の姿があった。
奏楽は呟いた。
「女神フリイグ」
近くで元の世界に戻るの見守っていた女主人は実体化した女神を見て驚いていた。
「うそ。……本物の女神フリイグ」
初めて実体化した神を見る女主人。こんな光景を目にできることが幸栄であった。
「すごいすごいすごい」
まるでサインを求めそうな勢いであった。
奏楽は「何用でしょうか?」と問うと、フリイグは一本の剣を差し出した。
「これは?」
「勝利の剣です。これが必要となる時がくるでしょう」
剣を手渡されると奏楽は「ロオキですか?」と聞く。
「分かっていますね。あなたの力が頼りになる時がくることを」
「分かりました。いざという時はきっとこの力を使って活躍しましょう」




