36話 後編 組織レッドコートメンバーの確保
サメのきぐるみを着たサメガールことベッシはオールバックの男との戦いに身を投じていた。オールバックの男が詠唱し刀に炎が巻かれる。
「炎刀!」
炎に巻かれた刀が振るわれベッシはサメのきぐるみの両ひれで受け止める。
前にもあった展開にオールバックの男は舌打ちする。
「お前、転生者か?」
「違うよ。私はこの世界で生まれてこの世界で育った」
オールバックの男は「NPCごときに」と呟く。
「サメの嬢ちゃんよ。俺はな、NPCには負ける気がしねえ。何故なら俺は選ばれたゲームプレイヤーだからだ。転生イベントでこのゲームの世界に呼ばれた。そんな存在だからだ!」
炎に巻かれた刀を手放し、蹴りをベッシにくらわせ再び刀を手に取る。
「斬り斬り斬り!」
刀を振るい襲い掛かるオールバックの男。ベッシは躱しながら両手の両ひれで受け流しながら隙を見て尾びれで蹴りを浴びせた。
「がはっ」
腹部に一撃をくらい腹を抑えて身を引く。
「俺がこんなところで負けるはずがねえ、こんなところで負けイベントだなんて、俺は認めねえ!」
炎に巻かれた刀を構えなおしベッシに接近していく。
「斬り斬り斬り! 斬りたい! 斬りたい! 斬りたいいい!」
ベッシは両拳を腰まで引き左足を下げて刀が届く直前に両拳を突き出した。刀は折れ、拳が腹にめり込みオールバックの男は吹っ飛んで転がっていった。
〇
赤いコートの男たちは全員捕まり王国の兵士たちによって拘留所へと連行されていった。
ベッシはオールバックの男にひれで手を振る動作で見送った。奏楽と吉塚とノワールとナナは脱走しないよう拘留所まで見張りとしてついて行った。
吉塚は首輪をつけた男に「まだこの世界がゲームの世界と信じているのか?」と問う。
「そうじゃなかったら、あんたの力も魔法も何もかもが説明がつかねえ」
吉塚はやれやれといった様子で頭をかく。
坊主頭の男は「いずれ脱走イベントが起こることだろう」と語り、長髪を束ねた男は何も語らなかった。オールバックの男も何も言わずに淡々と歩いている。
なにがともあれ赤いコートの組織レッドコートのメンバーを全員捕まえることに成功したのだった。
〇
拘留所に全員収監されると、奏楽たちは王都の城へと呼び出された。報酬が支払われたのだった。
王は頭を下げてお礼を言った。
「ありがとう。これで様々な町に、王都に安心と安全が戻ってくる」
吉塚は頭を下げながら語る。
「恐縮です殿下。ただ捕まったあやつらは脱走のチャンスを常に窺っているらしいです。どうかご注意ください」
王は「分かった」と言い奏楽たちを下がらせたのだった。
〇
報酬を手に異世界の焼肉屋に入っていく奏楽一行。肉を焼き、ジュースや酒で乾杯をしていく。
奏楽と吉塚はビールを飲み、ノワールとナナは柑橘系のジュースを飲んでいる。ノワールはお酒が苦手らしく、ナナはまだ未成年である。
何がともあれ危険な組織レッドコートのメンバー確保に成功した祝杯である。途中からベッシや王林も同席して飲むも食うも共に味わうのだった。王林もまだ未成年らしく同じくジュースを頼んだが、ベッシの方はビールを頼んでいた。
サメのきぐるみを着たベッシがぐびぐびお酒を体に流し込んでいく。遠目から見るとサメがビールを飲んでいるようでなかなかにシュールな光景である。
吉塚は酔っぱらうと奏楽に肩を組んで「俺も空飛びたいよお」と訴える。奏楽は宥めながらビールを飲む。
「はいはい、吉塚飲みすぎだな」
「全っぜん飲みすぎじゃないから」
ノワールが吉塚の酔いを覚まそうとお冷を頼んだ。
「ノワール! 何やってんだ? お冷なんてまだまだ早いだろ!」
「あなたが酔っぱらうのが早いのよ」
ナナが「ジュース頼もうよ」と提案するも、吉塚はやだやだ駄々をこねて足をバタバタさせる。
奏楽はビールを飲みながら思った。
――この人にお酒飲ませたらめんどくさい。




