35話 後編 ゲームの世界だと信じる者たち
人を襲いに町へ向かう赤いコートのピアスをつけた男。
「誰が邪魔しに来ても俺が倒す。俺はゲームプレイヤーなんだ。このゲームの世界でプレイヤーの俺が負けるはずがないんだ」
彼もまた自分をゲームプレイヤーだと信じていた。転生は彼にとってゲームの世界への参加に他ならなかった。女神によって転生を受けたあの時もイベントに過ぎない。
町にたどり着き、二本の刀を引き抜き獲物を探す。野菜を買っている主婦、子どもと出歩く女性。目に入る一般人すべてが獲物。
だが、彼の目の前に立ちはだかる影があった。ノワール・セブーンである。
「あんた、その赤いコート目立つのよ」
「邪魔しに来たのか。だが、俺は自分のやるべきことをやるまでだ」
ノワールは詠唱し薔薇のモンスターを召喚する。
「ローズウイップ」
薔薇のモンスターからつるが伸び赤いコートのピアスをつけた男を捕えようとする。だがピアスの男は二本の刀を腰から引き抜いて二刀流で薔薇のモンスターから伸びたつるを斬り裂いてしまった。
「俺はそう簡単に捕らえられねえぜ」
「ローズウイップが効かないなら!」
さらに詠唱しさらにモンスターを召喚する。
「いでよローズドラゴン!」
薔薇の姿をしたドラゴン。ローズドラゴンは棘の生えた無数のつるでピアスをつけた男を取り押さえる。最初は二本の刀で抵抗していたが、つるの数が多く対応できずに張りつけにされるように拘束されてしまった。
「くそ、お前、転生者か?」
「違うわよ。ごめんなさいね。強くて」
ピアスをつけた男は頭を垂らして脱力してしまう。
「よりにもよってNPCに。なんて様だ。こんなイベント、ひでえもんだぜ」
組織レッドコートの捕まったメンバーは三人。残るは四人となった。
〇
夜になるとレッドコートの組織のメンバーが集まる一軒家に松明を持った一般人が集まりはじめた。
オールバックの男は大声を出しながら頭を抱える。
「一体どうなっているんだよ! あいつも帰ってこねえし! 一般人はみんなNPCじゃなかったのかよ!」
坊主頭の男は「落ち着け」とオールバックの男を大人しくさせる。
「だがよ、これもイベントだっていうのか? こんなにNPCが集まって。NPCが復讐しようって考えるのかよ」
一般人の集団の中にはサメのきぐるみを着たサメガールことベッシ・アンデイスや元魔王である酒井王林に豊餅奏楽、さらに大木吉塚もいればノワール・セブーンやナナ・アルファスもいる。完全にここで終わらせる気がある集まりだった。
赤いコートの男たちは家から武装して出るとオールバックの男は大声を張り上げた。
「獲物からやってきてくれるとはありがてえじゃねえの! そこのサメ! お前とは決着をつけてやるよ」
赤いコートの男たちはそれぞれ戦闘態勢へ移っていく。
〇
オールバックの男が刀を振り下ろすとそれを受け流すベッシ。刀で横に切ろうとするもベッシは両手の両ひれで受け止め体を翻して刀の上に乗り胸を尾ひれで蹴り飛ばした。
胸を抑えて下がるオールバックの男。
「お前強ええな。俺も強いが!」
刀で斬りかかるも両ひれで受け流して隙あればひれで攻撃するベッシ。ベッシの方が押しているようである。
赤いコートの長髪を束ねる男は両手で印を組み、一般人に炎を吐いて攻撃するがその攻撃はナナによって塞がれてしまう。
「――私たちを守って、ゴールドスピードシールド!」
金色の膜のシールドが一般人を守る。
坊主頭の男は刀を口に咥えて突撃していく。王林はモンスターを召喚して人々を守る。左手の召喚板にカードを一枚配置し三頭の飛竜を召喚する。
「出ろ! 最強で強靭無敵のドラゴン! 三頭の飛竜!」
三つの頭がある翼が生えたドラゴンが坊主頭の男目掛けて飛んでいく。坊主頭の男は三頭の飛竜の頭突きを受け口から刀を放してしまう。
「がはっ」
胃液が口から漏れ出し地面を転がっていった。
赤いコートを羽織った首輪をつけた男が坊主頭の男へ近寄っていき「大丈夫か」と声をかける。
「ああ、それより、油断するな。奴ら強い」
首輪をつけた男は刀を握りしめ剣で戦う吉塚へと接近戦をしかけていく。




