35話 前編 ゲームの世界だと信じる者たち
巨大なスライムを相手にするのに必要なのは火力である。霧が出ている町の中をスライムはのっそのそ進んでいる。
すずは左手を外すと右手で左手を掴み、左腕を巨大スライムへと向ける。
「ロケットランチャーです」
奏楽は「撃ってしまいなさい」と指示を出すと、ロケットランチャーを発射するのだった。
直撃を受けたスライムは散り散りとなり跡形もなく爆散する。
モンスターを倒してからしばらく時間が経っても霧は消えなかった。おそらくこの辺りに魔女が存在しているのだろうと奏楽は推察する。
「ちょっと探してみようか」
「任務了解。保護対象の捜索に入ります」
〇
霧の出た町で一人佇む影。あれは人ではない。モンスターである。本日二体目である。人の形をしているが、背中から多数の触手が伸びてうねうね蠢いている。
奏楽はライフルをライフルバックから取り出しすずは拳銃を背中のホルスターから引き抜く。
「いくぞ!」
奏楽はスコープでモンスターを狙い、すずは拳銃を持った状態で接近していく。
ライフルの引き金を引くと人型のモンスターは体を曲げて躱してしまい、すずが拳銃で撃ち込むがそれもやはりくねくねした動きで躱してしまう。
「あいつに銃弾は効かない。接近戦だ!」
奏楽は両手を合わせて詠唱する。
「ペガサスの翼!」
白い翼が背中から生え飛翔する。
すずはナイフを取り出しモンスターに接近していく。
急降下した奏楽は白い翼でモンスターを打とうとするが、モンスターは腰を折ってくねらせて躱してしまう。
すずが接近するとモンスターの触手が彼女を捕えて動けなくさせてしまう。
「すず!」
奏楽は再び急接近し翼で打とうとするもそれも躱されてしまう。奏楽はペガサスの姿へ変化すると地を蹴り走り出した。前足を上げて攻撃するもやはり当たってはくれない。
捕まっているすずは触手をナイフで切り付けて引きちぎり自由を取り戻すと、触手を右手で掴んで動きを奪い左手で握ったナイフでモンスターの胴体に狙いを定めるのだった。
ナイフで胴を刺されたモンスターは悲鳴を上げながら真っ黒い血しぶきを上げる。数本の触手がすずに絡みつき抵抗をするも、すずは何度もナイフでモンスターを切りつけていった。悲鳴の声は段々となくなっていき動かなくなる。
〇
モンスターを倒し終わり魔女探しに移る。ペガサスの姿から人間の姿へと戻った奏楽は「どこにいるか分かるか?」とすずに問う。すずは辺りを見回すと、指をある方向へ向けた。
「こちらの方向に反応があります」
魔女はモンスターと同じ反応を出しており、すずはその反応をキャッチすることができる。
とある家の中でうずくまる一人の女性。年齢は二十代ほどの女性だった。彼女は己のせいで霧が出てモンスターを呼び込んでしまうことを知っていた。だから誰にも会うこともできずに一人家の中に引きこもっていた。
霧は自分がいるところでは急に発生し、モンスターが出現すればギルドに討伐依頼が出される。安全な町になるには自分が出ていくしかない。でも行き場なんてない。そんなジレンマで頭の中がいっぱいであった。
すると家の中に知らない人がやってきた。若い女の子と二十代くらいの男だ。エクスマキナの少女すずと奏楽である。
「保護対象確認。これより教会へ同行します」
奏楽は手を差し出す。
「魔女で苦しむ時代は終わりました。一緒に行きましょう」
「一緒に? どこへ?」
奏楽は微笑みながら答える。
「教会です」
〇
赤いコートの男たちの住処である一軒家では残った五人がこれからのことを話し合っていた。
オールバックの男は「イベント続きできつー」と呟いている。
一人が捕まり、さらに仲間を助けようとやってきた六人の内一人が捕まってしまった。残るは五人となる。
坊主頭の男は腕を組んでソファーにもたれかかりながら意見を述べる。
「もしかしたら、こちらから助けに行ってはならないのかもしれない」
オールバックの男は「どういうことだよ」と問う。
「つまりだな。助けに行こうとすると負けイベントが発生する可能性が高いという訳だ」
「なるほどな。じゃあどうする? あいつらが自力で脱出するのを待つか?」
坊主頭の男は頷く。
「そうだな。この世界はゲームの世界なのだから脱走のイベントが発生するはずだ」
彼の発言を聞くなり一人の男が玄関へと向かって歩き出す。ピアスをつけた男である。
「じゃあ、俺はやるべきことやってくるわ」
坊主の男が「NPC狩りか?」と聞くと笑顔で頷くピアスをつけた男。二本の刀を腰に下げて玄関の扉を開いた。
「行ってくるぜ!」




