32話 後編 人間狩り
奏楽はエクスマキナの少女すずと共に警察署へと戻っていった。今異世界で起こっていることを伝えた。赤いコートを着た男たちが転生した冒険者以外をNPCだと思い込んでいて、人を殺して回っているということ。これからは彼らから一般人を守っていかなくてはいけないということだ。
大島警部は「大変なことになったなあ」と言いつつも、エクスマキナの少女すずの仕事は魔女の保護には変わらないという。なぜならば異世界への遭難者の保護の方が優先されるからだ。自分の世界の人民が優先される。それは仕方がないことだった。
〇
吉塚はモンスターを狩るため森の中に入っていった。モンスターの見た目は巨大なフクロウのようで胴体に巨大な一つ目があるらしい。
森は静かで何かがいそうな気配はない。だが、一瞬吉塚の前を何か横切った。
「なんだ?」
その何かはお探しのモンスターなのだろうか。
モンスターを探す吉塚であったが、横切ったのは普通のフクロウのようであった。
「なんだよ」
しかし背中の鎧を何かが掴んだ。
「なんだっ?!」
すると体が宙へ浮き吉塚は後ろを向くとそこにあったのは巨大な目玉。お探しのモンスターであった。
吉塚は剣を引き抜くと背中の鎧が離され落下していく。
「くっこの!」
落ちながら物理防御の詠唱を始める。
「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス!」
地に背中から落ち転がっていく。
吉塚は立ち上がると木の上に留るモンスターの姿を目にする。
「くっそ、最近は奏楽のペガサス化に頼りすぎていたからなあ」
それでも冒険者のプロとして討伐しなくてはならない。
〇
赤いコートを着た七人の男たちが町へと出てきた。用事というのが一般人を狙った殺人行為だ。
彼らにとってこの異世界はゲームの世界だから殺人は正当化される。そんな危険な思想を持っている。
町に火が放たれ、逃げ惑う人々を刀で切り殺していく。
そんな残忍な行いをしているところに奏楽と王林が駆けつける。
奏楽は大声でその行いを止めるべく訴える。
「やめるんだ! 赤い奴ら!」
レッドコートの一員であるオールバックの男が「またお前か」と呟く。
「一体何の用だ? 俺たちは今NPC狩りで忙しいんだ」
王林は怒りを込めて発言する。
「そんな勝手すぎる物の見方をして! ふざけるな!」
召喚板にカードを一枚配置しモンスターを召喚する。
「出ろっ! 三頭の飛竜!」
頭が三つある翼を生やしたドラゴンが召喚される。
「お前たちに手加減なんかしないっ!」
奏楽も詠唱してペガサスの翼を生やし飛翔する。
「ペガサスの翼!」
レッドコートの一人オールバックの男は声を上げて反発する。
「お前らみたいなNPCも殺せない奴らが同族殺しなんてできるはずがねえ!」
王林はオールバックの男の言い分を否定する。
「殺すつもりなんてない! お前らと一緒にするな!」
「そんなんで俺たちを相手にできると思うな!」
レッドコートのメンバーは七人。それに対抗しようとしているメンバーは奏楽と王林だけしかいない。勝ち目があるとは思えない。
翼を生やした奏楽は王林に語り掛ける。
「勝たなくていい。皆が逃げる時間を稼ぐんだ」
長髪を束ねた男は彼らの語り合いに突っ込む。
「正義の味方ごっこ。子どもか」
〇
王林は三頭の飛竜に指示を出す。
「いけ三頭の飛竜! 閃光のバースト!」
三つの口から光線が放たれレッドコートのメンバーは散り散りになって躱す。空を飛ぶ奏楽はライフルを使わずに急降下して手加減しつつ翼で打つ攻撃を繰り出した。
七人の組織であるレッドコートは彼らの相手をしていることで一般人に攻撃することができないでいた。奏楽と王林の作戦通りである。




