32話 前編 人間狩り
奏楽とすずが駆けつけた時にはもうすでにオーディオデの完封勝利に近い状態であり、赤いコートの男たちは立っているのも精一杯であった。着ているコートも神との激しい戦闘の末ボロボロになっていた。
王林は近くにいたが無傷である。
奏楽とすずは王林のもとまで行き何があったかを聞く。
「何があったの?」
「あいつらが人を襲っていたから神の粛清を受けている。と言えばいいのか」
ボロボロの二人組の内の一人は知っている人である。モンスターを代わりに討伐してくれていた人だ。
オールバックの男は叫ぶ。
「なんでだよ! 俺たちはプレイヤーだろうがよ! ゲームのプレイヤー! 負けイベントかよ畜生!」
何を言っているのか。彼はこの異世界で生きるのをゲームだと思っていたのだろうか。
オーディオデは奏楽に声をかける。
「おい貴様」
「はい?」
「あとは貴様に任せた。我は帰る」
なんじゃそりゃと言いたくなるような神の言い分だ。奏楽はこの状況を理解しておらず何も分からない状態だ。
〇
オールバックの男から話を聞くとコンピューターで動いているNPCを狩っていたら、神が現れるイベントが発生してボコボコにされたという。
NPCとは何ぞやと思いながらも王林が「ゲームのプレイヤー以外のキャラ」と説明した。奏楽にとってその後の思考は考えたくない内容であった。
「つまり、罪なき人たちを殺しまわっているということ?」
王林はゆっくりと頷く。
「そんな馬鹿な話があるのか!?」
オールバックの男はイライラしながら話し合いを聞いていたが口を挟んできた。
「お前らの言い分が間違っている。俺たちは人を殺してねえ! NPCを倒して回っていただけだ! 人を悪者扱いするんじゃねえ!」
奏楽は声を張り上げる。
「コンピューターで動いている保証ってどこにあるんだよ! そんな保証どこにもないだろ!」
「いやあるね。魔法使えたり、モンスターがいたりする。つまりゲームだ」
話が通じない。
奏楽はさらに問いを続ける。
「魔法仕えたり、モンスターがいたりするとなんで、一般人がコンピューターで動いていることになるんですか?」
「それはゲームだからだよ。ゲームじゃなきゃ魔法も使えるはずないし、モンスターもいるはずがないんだよ!」
奏楽は話し合いは無理だと悟った。価値観に異世界が存在しないのだ。よって全てがゲームだからで片付いてしまう。
〇
赤いコートの男たちは帰ってしまった。何一つ解決せずに。奏楽はあのままにはできないと感じた。このままだとあの赤いコートの男たちは殺人を繰り返してしまうことになる。たくさんの犠牲者が出る。
本日の人殺しが終わって赤いコートの男たちはとある一軒家へと入っていった。そこにいるのは同じく赤い服を着た男が五人いて、入ってきたオールバックの男と長髪を束ねた男合わせると七人になる。
リーダーの十本の指すべてに指輪をはめた坊主頭の男が「俺たちはプレイヤーだけの世界をつくる」と言う。
オールバックの男は「そんなことは分かっている」と言ってソファーに腰掛ける。
長髪を束ねた男が負けイベントが発生したと説明した。
「神が現れて俺たちは敗北した。もうすぐで死ぬところだったが……」
小柄な男に「見逃されたのか?」と問われる。
オールバックの男はやってられないとばかりにソファーに横になる。
「プレイヤーの俺たちがイベントで殺される訳がない。俺たちのやっていることを人殺しっていうやつもいるし、嫌になるぜ」
〇
赤いコートの男たち、レッドコートという組織である。彼らの目的はプレイヤーだけの世界にすること。つまり転生した冒険者以外の者をコンピューターで動いているNPCだと思っている。危険な思想を持った組織であった。
このままにしておけない。そう思った奏楽であったが、どうしたらよいかも分からない。ギルドで赤いコートの組織について聞いてみところ王国の軍隊でも勝てなかったらしい。
神オーディオデが自ら出向いたところ優勢であったところから神ならば楽勝なのだということが分かる。だが神が直々に手を下すことを望むのは難しいだろう。勝てるにしても人間の問題は人間に任せるのが神の世界の決まりのようだからだ。
今回赤いコートの男たちに手を下したのはオーディオデが我慢ならなかったからだろう。




