28話 後編 忘れられない痛み
魔王城の玉座では白髪の少年の酒井王林が座っており、モンスターの絵柄のカードを眺めて笑みを浮かべていた。
「ねえオーウェル、かっこいいのが揃ってきたと思わないかい?」
金髪の男オーウェルも微笑んだ。
「はい、これも魔王様のお力あってのこと」
「褒めるなよ、照れる」
玉座から立ち上がり左腕に装着した召喚板を掲げる。
「いでよ! 三頭の飛竜!」
召喚板にカードを配置すると三頭の飛竜が召喚される。三頭の飛竜に駆け寄り頭を撫でる王林。三頭の飛竜は三つある頭を彼に差し出している。三頭の飛竜は彼のことを完全に信頼していた。
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奏楽はもう一つ重要なことが頭の中を巡っていた。それは新しい魔王のことだ。彼は自分の気に入ったモンスターを仲間にしている。つまり魔王軍が作られていることに気付いたのだ。
きっとギルドにも討伐依頼が掲示される日も近いのではと思う奏楽であったが、それを目にするのはすぐであった。
ギルドに向かうと掲示板に張り紙が張り出されている。
『――討伐依頼、魔王と魔王軍』
この異世界は魔王の存在を許しはしない。
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魔王の討伐の依頼を受けたのは奏楽一行であった。討伐するのではなく話し合いでなんとかできるかもしれないから進んで受けたのだ。
魔王城へたどり着く奏楽と吉塚とノワールとナナ。一行は魔王の城の中をずんずん進んでいく。城を守るモンスターは皆無であった。玉座の間まで行くのに時間はそうかからなかった。
玉座のある謁見の間へたどり着くとそこには白髪の少年の新魔王酒井王林が座っていた。隣には金髪の男オーウェル・スカッシュがいる。
王林は「よく来たね。歓迎するよ」と言って背もたれに寄っかかった。
奏楽はそんな余裕ぶっていられないとばかりに話し合いを始める。
「新魔王、あなたの討伐命令がギルドに届いています。あと魔王軍の討伐も」
「魔王軍って、僕は軍隊なんて作った覚えはないんだけどな」
王林は魔王軍を持っていることを否定している。魔王軍として見られているのは召喚魔術によって呼び出されるモンスターたちのことだろう。
「あなたはモンスターを召喚します。多分そのことです」
困ったように顎を手で触りながら思考する。
「でも、他の人もモンスターを召喚したりするよね?」
ノワールが口を挟む。
「それは、あなたがこんな場所を根城にするからよ!」
王林は反感を覚える。
「どこを根城にしようが僕の勝手。魔王を語るのも勝手。そこに反感を覚え討伐しようと思う人間の勝手。自由なんてないんだな。魔王だってよい魔王ならよいだろうに」
ナナは反論する。
「今までに最善の魔王がいた試しがありません」
なるべく穏やかに奏楽は言葉を選んで言った。
「君がその椅子から降りるだけでいいんだ。そうすれば討伐なんて誰もしなくて済む」
だが予想もしてない答えが返ってきた。
「嫌だ」
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戦闘にまで発展してしまうことになった。
王林は左手の召喚板にカードを配置しモンスターを召喚する。
「いでよ! 雷獣ライオウ!」
雷を纏った獣が現れる。ライオウは唸り声をあげて奏楽たちを威嚇していた。
「魔王で何が悪いか! 最善の魔王たる僕が、何故討伐などされないといけない。行いを見て決めるのが人道だろう?」
吉塚は剣を抜いてやれやれといった様子で構える。
「どうしようもないな。魔王なんかになりたがる酔狂さんなんだからな」
王林が「いけ!ライオウ!」と指示を出すと走り出し吉塚にとびかかろうとするライオウ。
吉塚は詠唱をして己のスペックを上げる。
「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス! ――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー! ――今我が剣の威力を上げよ、スラッシュナイフ!」
ライオウの牙を剣で受け止める。
そして受け止めながらもこれからどうするか奏楽たちに問う。
「どうする? このまま戦うか? いっそ逃げるか?」
奏楽が「戦おう」と言うと吉塚は「おーけー」と言って剣でライオウを薙ぎ払った。
「じゃあ、やってやろうじゃないの。お熱いバトルを」
ナナは全員に防御の魔法をかける。
「――皆を守って、リフレクトバリア!」




