27話 後編 魔女の救い
魔女の集会が終わると奏楽とノワールは魔女集会の中心である三十代の女性の元へと歩み寄った。
奏楽が「こんにちは」と声をかけると三十代の女性は微笑を浮かべて彼を歓迎した。
「はじめましてだね。何用かな?」
「お話聞きました。平等を求める声は最もだと思いまして。それならまず教会へ行って呪いを解くことから始めたらいかがかなと思ったんです」
彼の発言が耳に入ると眉間に皺が寄りイライラが湧き上がってくるようであった。
「つまり君たちはなかったことにしろというのか?」
「はい? なかったこととは?」
ノワールはため息を吐いた。何となく女性の言いたいことが分かったのだ。
「いいかい君。そこの彼女も。呪いを受けた身でありながら、健気に負けず生きているのだ。そこについての解決策としてはよかろう。だが、呪いを受け差別を受け、霧の発生やモンスターの発生など人の迷惑に強制的にかけてしまう悲惨な目にも合っている。教会へ行ってそれが起こらないようにすれば解決と申すのか? あなたたちも」
奏楽は「ええ、解決です」と言い返す。
女性はイライラが表に出てしまいながらも言葉を選んで語った。
「いいですか? 魔女としてどれだけつらい思いをしてきたと思っているんです? 事が起こらないようにすればそれで解決? 解決な訳がないでしょう?」
彼女の言い分はつらい思いをした分の何らかの保証がほしいと言っているようであった。
奏楽はノワールに手を向けて反論する。
「この人だって最初は魔女だったんです。だけど自分に負けずに魔女である苦しみが分かるから、魔女で苦しんでいる人を助けようと果敢に生きているんです」
女性は「だから?」と返した。
「あなたたちはそうしたいからそうしている。でもこの魔女集会へ訪れている人も同じでそうしたくないからそうしない。魔女として苦しんだ分、その分の保証も埋め合わせもないならば、魔女としての人生が終わっても何にもならない。寧ろ苦しみは増すだろう。なにせ、人生を失った者とそうでない者との間で苦しみ続けるのだから」
奏楽は「本気で言っているのか!」と言葉を返す。
「ええ、そうよ。その差を埋めなければこの世界に救いがないのと同じ」
〇
話している途中でモンスターが発生した。泥に身を包み頭に巨大な杭が刺さった両腕がないモンスターだ。
奏楽はライフルバックからライフルを取り出し狙撃する。
弾丸が命中したモンスターは後ろから倒れ子供がわがままをするようにじたばた暴れ出した。
ノワールが動きを止めようとローズウイップを唱えると薔薇のモンスターが現れつるでその動きを止めた。
奏楽はさらに弾丸を撃ち込むとモンスターはさらに地団駄を踏むように暴れ出す。
「まずい効かない」
そんな中で三十代の女性が前に出てきて「あなたたちは一旦下がりなさい」と言う。そして魔法の詠唱を始めた。
「――その穢れを浄化せよ。アンデッドクリーンアップ!」
モンスターの正体はアンデッドらしく、浄化魔法が適用されその身は動かなくなり、そのまま膝から崩れ落ちばらばらになったのであった。
「自己紹介がまだだったわね。私の名前はハンナ・スチュワート。職業はプリーストよ」
ノワールと奏楽は思った。随分とひねくれた僧侶がいたものだと。
「モンスターもアンデッドなら発生した時点で自分で処理できるのよ」
〇
魔女になると身の回りに霧が発生しモンスターを呼び込んでしまう。それに異世界と繋がることがあり、その場合別の世界から遭難してしまう者も出てきてしまうことがある。魔女がいていいことはないのだ。彼女ハンナもそれは分かっているはずだ。
それでもそのまま魔女の座から降りたくはないらしい。
これからどうするべきかを考える奏楽とノワール。
とりあえず宿を探そうとしたところ、ハンナが宿を紹介してくれた。なんとそこは教会の宿であった。
奏楽は思った。
――これ、どうしようもなくね。
ハンナの呪いを解こうと教会へ案内しようとしているのに、そのハンナに宿として教会の宿を案内されるのだから。
〇
宿で眠りに落ちようとするところに外で戦闘の音がした。窓からのぞくと闇夜の霧が薄く発生している中でアンデッドの対処をしているハンナがいたのだ。
奏楽は思った。本当にどうしたらよいのだろうか。
ハンナが魔女のままなのは心の問題だ。魔女になったのは自分の責任ではない。そのせいで苦しんできた分は報われたい。それが彼女の言い分なのだ。
別の部屋で休んでいるノワールはどのような気持ちなのだろうか。彼女も同じ魔女の時期があったのだから気持ちは分かるはずだ。




