25話 前編 ペガサスの力
奏楽と吉塚はカフェで食事を摂りながら新しい魔王について話し合っていた。新しい魔王はモンスターを保護することが目的らしいのだ。狩る必要をなくす方法なのだろうと奏楽は推察する。
それでも吉塚は反対意見のようだ。
「確かに共存できるモンスターはいるかもしれない。だがモンスターはどれもそんな生温い生態ばかりじゃない。出会っただけで命を奪われる可能性だってある」
「そうかもしれないが、ある程度はあの魔王に任せてもいいんじゃないかなと思う。モンスターにも人間と同じ心があるみたいだから。それが分かる人に任せるのが一番なんじゃないかな」
吉塚は「そうかねー」と呟き珈琲を手に取った。
「どちらにしてももし共存できるモンスターばかりだとしたらこっちは失業ということになるな」
珈琲を一口味わい「あー」と声を漏らす。
〇
霧が発生しているとある町でノワールは呪われている魔女がいるのではないかと一人で捜索をしていた。自分が経験したことと同じ辛い事情を抱えて誰かが苦しんでいるのではないかと同情して行動しているのだった。
町の中を歩く彼女の目の前に人型のモンスターが現れた。顔に大きな赤い宝石が埋められていて目も口もついていない。手は鋭い棘になっており五本の指もない。
――ルルルルルルル。
そして変な声で鳴いている。
ノワールは魔法を駆使ししてこの場を乗り切ろうとするが、急に頭上から「ちょっと待ったー」と声が聞こえ、見上げるとそこには三つの頭があるドラゴンが空を飛んでいたのだった。
ドラゴンの背から降りてきたのは白髪の少年、酒井王林であった。
地面へ着地した彼はノワールの前に出て召喚板を掲げた。
「あのモンスターは僕のだ!」
顔に宝石が埋まったモンスターは腕から伸びる棘を彼に向け走り出す。
王林は攻撃してくるモンスターに対処しようと三頭の飛竜に指示を出した。
「三頭の飛竜よ! 奴の動きを止めよ! 閃光のバースト!」
三頭の飛竜の三つの口から光線が放たれ顔に宝石が埋められたモンスターは吹き飛ばされてしまう。かなりのオーバーキルだ。
ノワールは呆れて口が開きっぱなしになる。
〇
町の遥か遠くで横たわる顔がないモンスターのところまで徒歩でやってくる王林とノワール。
ノワールは「こんなのが欲しいの?」と問う。
「ああ、そうさ、モンスターにだって心はある。仲間さ」
ノワールは口元を指で触り短い思考をする。
「あなた、もしかしてモンスターとの混血ね」
「ちょっと違うけど。僕は獣人との混血なんだ。だからモンスターの気持ちが分かる」
珍しい者がいたものだと思いながらノワールは王林と別れる。
「じゃあね、珍しいハーフさん」
ノワールの目的はモンスター討伐ではなく、魔女の発見なのだ。
〇
自室で一人うずくまる四十代くらいの女性。そこへやってくるノワール。
「もう大丈夫です」
「あなた、誰?」
勝手に他人の家に堂々と入ってくる彼女に警戒する女性。ノワールは腰に左手を当てて右手を胸に当てて答える。
「元魔女。ノワール・セブーンといいます。魔女の時代時はもう古いみたいですよ」
「元って、どういうこと?」
元の意味を答えた。教会へ行けば今の時代、大抵の呪いは解かれるということ。そしてそれは魔女になる呪いも同じということ。
女性は「本当に?」と言いながら目を輝かせている。
ずっと解けない呪いで苦しんできたのであろう。ノワールもあまりの苦しさに何もおかしくないのに笑い出す始末だったのだから。
〇
魔王城では保護したモンスターとの契約を行っていた。顔に赤い宝石の埋まったモンスター、真っ白な空白のカードをそのモンスターへと向けるとモンスターの絵柄が印刷されるように自動で描かれていく。
「君も新しい僕の仲間。名前はルビーマンだ!」
ルビーと言うのはルビーの宝石のように顔の宝石が赤かったからだ。
ただ先ほどの戦闘で少々弱っているようで少し休ませてあげることに。何しろドラゴン三体分の光線を浴びたのだ。弱っていないはずがない。




