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22話 前編 争いの終わり

 忍たちは結局、人間の姿をした妖怪たちに手を出すことはできなかった。攻撃もせずにただ出方を窺うだけの者たちに刃を向けることができなかったのだ。

 朝になると忍たちは帰っていき奏楽は「よし!」と言った。


「みんな、よく頑張った。もうこれで争い合うことはなくなった! みんなこれから人間との間で平和に生きていけるんだ」


 奏楽は妖怪たちと握手をし、森から出ていくと攻撃しなかった忍たちの元へ向かって問うた。


「相手から何もしてこなければもうこれから戦う必要はありませんよね?」


 忍の装束を着た義経は「ああ、そうだな」と言って彼の発言を肯定したのだった。


      〇


 奏楽は眠らずに次々とネックレスの効力で石化されていた人々を元の姿へと戻していた。彼の目には確実な希望が見えていたのだ。だがもっと贅沢なことを言ってしまえば自分がこの世界に来る前にこのネックレスを誰かに託した方が早かったのではないかと思う。

 だが、これでこの世界は救われる。誰も傷つけあったり次は自分かもしれないなどの不安に苛まれなくともよいのだから。


 無数の石像にネックレスをかけていく奏楽。次々と石化が解け人間へ戻っていく様。その様子はこの世界では現実的じゃない願いで、本当は望んでいた結果である。


      〇


 夜になり石像がなくなってきた頃、女神フリイグがやってくる。


「やるべきことが済んだようですね」


 奏楽は「意外と早く」と返す。

 ネックレスを石像にかけ石化を解き、また人が解放される。これが最後の一人。十代の男であった。


「もう、家に帰れる。帰っておいで」


 奏楽の言う通りに解放された男は家に戻っていく。


「ありがとう」


 お礼を言われ奏楽はここまで来て良かったと思う。


      〇


 世話になったお礼に沙織の家へ戻ってきた奏楽はネックレスを彼女に託した。どこの者か分からぬ者を泊めるだけの心の持ちようがあるのだ。この人になら託してもよいと思える。それから義経にもお別れの言葉を伝えに行った。沙織に石化の呪いが解けるネックレスを預けたことも伝えなくてはならない。

 別れの言葉を伝え外に出るとフリイグが待っていた。


「お別れは済みましたか?」


「はい、お待ちいただきありがとうございます」


 フリイグの周りに魔法陣が展開されその中に奏楽も踏み入れていく。


「では、帰りましょう。あなたの世界に」


 魔法陣から眩い光があふれ出し、気が付くと見たことがある景色が広がっていた。会社帰りのサラリーマンや自転車で買い物に出かけている主婦、そして学校帰りの学生の姿。いつも通りの光景、戻って来たと思える情報が目に飛び込んでくる。


 フリイグの姿はなく、奏楽は一人で佇んでいた。

 まず奏楽は警察署へと足を運んだ。何故なら魔女の呪いがあった異世界がどうなったのか聞かなくてはならないからだ。


      〇


 警察署に着いた奏楽は異世界研究捜査部へ顔を見せた。そこにいたのは久しぶりに見る大島輝幸警部の姿、そして佐々木和則警部補の姿が。

 大島警部は久しぶりに見る奏楽に「おお」と声をかける。


「久しぶりじゃないか。どこに行っていたんだ?」


 奏楽は神によってまた違う異世界へ連れていかれていたことを伝える。

 お茶を出してくれる佐々木警部補にお礼を言う。


「大変だったね。まあ、お茶でも飲んで。いつ戻ってきたんだい?」


「ついさっきです」


 奏楽は別の異世界へ連れていかれてからの経験したことを伝えた。佐々木警部補は伝えている内容をパソコンに打ち込んでいるようだった。

 それから久しぶりに自分の住処である家に戻った奏楽は自分のベッドに久しぶりに横になった。


「あー」


 よく分からない声が漏れた。

 前日は徹夜をして石化を解いていた。どうやら疲労が溜まっていたらしい。そのまま目を閉じ眠りに落ちていった。

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