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21話 後編 神の贈り物

 メドゥルは「やらせない」と言い第三の目を開ける。しかし奏楽はネックレスの力で石化はされない。彼女の髪の束が蛇となり、威嚇をはじめる。


「俺は石にはならないよ」


「そんなことは分かっておるわ戯け」


 走り出し向かってくるメドゥル。


 奏楽は詠唱し白い翼を展開する。

 メドゥルの髪が伸び蛇となるそれが奏楽に襲い掛かる。奏楽は翼で弾き抵抗する。

 あらゆる角度から蛇の牙が襲いかかり足や腕を狙ってくる。


「この翼は攻撃にも防御にも使えるペガサスの翼。フリイグ様からいただいた力だ」


 メドゥルは攻撃を諦め蛇を一旦退かせる。


「それで、神から力を貰いすぎなお主はどうする? 私が作り上げたこの世界を作り変えるとでもいうのか」


「いいえ、そんなことはしません。呪いがない元の世界へと戻っていくだけです」


 下唇を噛みながらメドゥルは後ろへ下がっていく。


「己惚れるなよ。これで終わったと思うな。人間の争いはバランスを欠ければすぐだぞ」


 そしてメドゥルの姿が消えていく。まるで最初からそこにいなかったかのように。


      〇


 奏楽によって石化された者たちが次々と解放されていった。その行いをいつの間にか忍の恵比寿義経も見守っていた。

 石化を解きながら義経に話しかける。


「これでもう、妖怪狩りをする必要はありませんね」


「……それとこれとは話は違う。奴らが襲ってこなければよいのだから、身を守るために戦う必要があるのだ」


 やれやれと思いながらも事は起こった。草原に牛鬼が突如発生したのだ。

 義経は「見たことか」と言い、自宅へ真っ先に帰っていく。おそらく戦いの準備のためだろう。

 奏楽は牛鬼の前に立ち慌てることなく語り掛けた。


「そこの妖怪よ。何を求める。何をどうしてほしい。伝えてくれ」


 牛鬼は人間の女の姿へ擬態し歩み寄ってくる。


「私たちを捨てた者たちへの復讐心が我々にはあります」


「もう石化の呪いは解け、君たちのような者たちが作られることがないとしてもか?」


 女の両手が握りこぶしとなり伝えきれていない感情があるように見えた。


「私たちは、ただ生まれてきただけ。それなのに人々の営みさえ許されなかった。この苦しみを、なかったことにはできないこの苦しみを如何にして浄化できるというのですか?!」


 奏楽は言葉に詰まった。どんな言葉をかけてやればよいのか分からなかったからだ。


「でも、それでも、戦うのは不毛だ。君たちが苦しんできたことも分かる。俺も君たちの仲間を撃ち殺してしまった。君の言う通りなかったことにはならない。それは本当だ。だけど、これ以上争い続けて、どちらかが死に絶えるまで争い合ってどうなるっていうんだ!」


      〇


 神の世界からメドゥルは奏楽と妖怪の人間に擬態している者とのやり取りを眺めていた。


「これはこれは。思った通りのことになっておるぞ。人間はそう変わらない。不幸を不幸のままにしておきたくないのは当然のこと。神である我もそうなのだから」


 世界の様子を覗くメドゥルを悲し気な表情で見つめるゼウシウ。

 そうなかったことにはならない悲しみの行方が大事なのだ。これからどうなっていくのかを見定め対処していくのが奏楽の役割だった。


      〇


 夜になり、忍たちが行動を始める。妖怪退治の時間だ。

 空を飛ぶ忍や草原を駆ける忍やらが森の中へと入っていく。森の中が妖怪たちの住処となっている。


 奏楽は妖怪たちとともに行動していた。

 人間の姿をした牛鬼たちの群れの中で奏楽は指示を出す。


「絶対に手を出してはいけない。こちらに戦意がないことを証明するんだ。報われる報われないはその後だ。戦い以外でその答えを探していくんだ!」


 妖怪たちは皆彼の声を聞き人間の姿を解く者はいなかった。

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