18話 後編 知らない日本
ダメージが蓄積し動けなくなった牛鬼をしり目にフリイグに問う奏楽。
「聞きたいことがありました。……魔女は女神様の呪いによるものと聞きました。それは本当ですか?」
フリイグは答える。
「本当よ」
「それはフリイグ様によるものですか?」
「それは違うわ」
奏楽は聞きづらい感覚を覚えながらも問いただす。
「魔女の呪いを広めた女神様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
フリイグは「それはできません」と答える。
「そうですか。それにしても……」
倒れている牛鬼を視界に入れ、対処に困る奏楽。
「この妖怪もあの世界の魔女のように誰かが作り出したのだろうか」
〇
妖怪に関してはフリイヤは神の手が加わった結果ではないという。神が生み出したわけではないのであれば一体何による結果なのだろうか。
奏楽は顎に手を当て思考する。だが結果は、
「考えてもしかたないか」
思考したところで答えは出ない。魔女の時のようにたどり着くところにたどり着くことだろう。
一度近藤沙織の石造りの家へと戻ることにした。
お茶をもらい飲みながら彼女にこの世界の妖怪について問う奏楽。
近藤沙織は答えずらそうに答えた。
「知りたいんです。教えていただけませんか?」
「そうですね。……妖怪は口減らしのために犠牲になった者が変異した姿と聞いたことがあります。実際はどうか分かりませんが」
口減らし。またもや言いずらそうな内容だ。奏楽は思った。
――もしかしたらこれも呪いの内の一つかもしれない。
〇
夜になり布団を用意され睡眠をとろうとしたところ、外から女性の悲鳴が聞こえ飛び出していく。彼の様子を石造りの家の屋根の上から眺めていたフリイヤは静かに祈りを捧げていたのであった。
奏楽は白い翼を羽ばたかせ飛翔し高い位置から女性の悲鳴が聞こえた方向を見渡す。
「どこだ? どこから聞こえた?」
見渡している最中に黒い何かが奏楽の目の前を通り過ぎた。
「なんだ?!」
黒い翼を生やした何か。その何かは草原に立ち翼を蝙蝠のように折りたたんだ。どういう訳か蝙蝠の様な仮面までつけている。奏楽は地に降りて蝙蝠の風貌のそれに近づいていき声をかけた。
「誰だ?」
ゆっくりと頷くそれ。
「我らは忍。妖魔は我らが狩る。そういうお主は転生者だな?」
正しくは転移だが、何やら奏楽の事情が分かっているらしい。
「我らの仕事を見届けるといい」
〇
蝙蝠のような黒い翼で羽ばたくそれを追って白い翼を羽ばたかせて飛ぶ奏楽。
広がる草原には人型の石像がいくつも並んでいる。その中で逃げ惑う人の影がある。女だ。何から逃げているのか気になる奏楽。すると後ろから黒い翼を羽ばたかせ飛ぶいくつかの影があった。
「そんな、まさか人を襲っているのか?!」
「落ち着きたまえ。もうすぐよく分かるようになるさ」
黒い翼を生やした者たちに追われていた女性はその場にへたり込んでしまう。そこへ黒い翼を生やした者たちがやってくる。
剣を携えた黒い翼を生やした者たちは剣を引き抜き近づいていく。
剣を振るおうとした瞬間のことだった。へたり込んでいた女性の身体が膨らみ始め蜘蛛のような8本の足が生え牛の頭を露わにした。
剣を振るおうとした者の剣は鋭い足に弾かれ捕食される。
「あああああああああ!」
黒い翼を生やした者の叫び声が聞こえる。先ほどの叫び声の正体を理解し、ライフルバックからライフル取り出し構える。
「手を出さないわけにはいかないだろ」
目立たない位置まで近づきスコープを覗き黒い翼を生やした者たちを襲う牛鬼に狙いを定める。
発砲し弾丸は脳天を直撃し、捕食されていた黒い翼を生やした者が放たれる。
前を飛んでいた黒い翼を生やした者は仲間の元に寄ると「医者に見せるぞ」と言い他の者たちに指示を出した。そして援護をした奏楽にお礼を言うのだった。
「いい腕だ。礼を言う」




