13話 後編 魔女の呪いの適応
奏楽とエクスマキナの少女は異世界でのパトロールが任務になってきた。どこかの町に霧が発生したら向かうことには変わりないのだが、霧が発生し奏楽の世界の住人が遭難するという案件がなくなってきたため仕事はだいぶ楽になってきた。
それに霧が発生したとして必ずしも魔女が存在するわけでもない。
どこか別の町へ避難する者も減り霧が晴れるまで家の中に籠る人々も多くなってきていた。日々は平和に向かっている兆候だった。
だが、どこかでこの様子を見て気に食わない神がいた。
異世界の地上を鏡から眺める美女がいた。女神ヘイラー。彼女は探していたかつて己が呪いを飛ばした相手、つまりはルート・フォリオを。だが当然どこにもいるはずがない。何故ならば奏楽の世界へ避難し無事呪いの影響をなくしたからである。
「なんでどこにもいないのよ」
苛立ちを覚える女神ヘイラー。呪い不足で困る神が異世界にはいたのだった。
〇
大木吉塚とナナ・アルファスは町の井戸にモンスターが住み着いたことで討伐の依頼を受けたのだった。
町に向かうと井戸の周辺の住宅の内部は空。皆避難済みであった。自分の家に住めなくなるほど危険なモンスターらしい。
モンスターのいる井戸へたどり着いた吉塚は井戸の底を覗き込む。奥底には水があるだけで何もない。モンスターがいる気配がしないのだ。
「さて、どうするかねこれは」
困ったものでどうしたらいいか分からない吉塚。するとナナがアドバイスをした。
「もしかしたら霊体のモンスターかもしれません」
「なるほど、だとしたら波長を合わせないとだな」
吉塚とナナは波長合わせの詠唱を始める。
「「この世の霊体と波長を合わせる――チューニングスピリット」」
辺りの様子が急変する。急に暗くなり霧が立ち込める。
吉塚は剣を抜きさらに詠唱を重ねる。
「我が剣に幻影を破る力を与えよ。――スピリットブレイカー」
井戸から何かが来る予感がする。霧が井戸を囲み深い吐息の音が漏れる。か細い腕が井戸から出てきて、長い髪の毛に覆われた頭が露わになる。
髪の毛の間から見える目は怨念が感じられるほどに睨みつけている。
「俺幽霊苦手なんだからな」
ナナは吉塚に「素敵です」と言いあこがれるような視線を向ける。
〇
井戸から出てきた白い服に覆われた幽霊がゆたゆたと歩いてくる。
吉塚も自ら向かっていく。
「いざ覚悟!」
幽霊に剣を振るうが軽い身のこなしで躱されてしまう。振るっても振るっても当たらない。
「いかにスピリットブレイカーを使用しようとも当たらないと意味がない!」
自分の剣捌きに自分で突っ込むことになろうとは。
さらにまだまだ剣を振るっていく。しかし今度は幽霊に首を掴まれる。
「んがあ!」
すかさずナナが詠唱し魔法を行使する。
「アンデッドブレイクアロー!」
光の弓矢を行使し光の矢を放つ。
幽霊の頭が吹き飛び、そのすきに胴体を吉塚が切り刻む。
「スピリットブレイカー!」
幽霊の胴体が両断され光の粒子となって消えていく。
吉塚は親指を上げサムズアップのサインをナナへ送る。ナナも親指を立てて返答した。
「まあ、怨念が残ればまた復活して退治しなきゃいけないんだがな」
吉塚は続けて「まったくこういうのは僧侶に頼んでくれよな」と呟く。
しかしながらそれは難しい。今の世は魔女を救うべく教会が動いている。僧侶はそちらの仕事で一杯一杯なのだから。




