13話 前編 魔女の呪いの適応
魔女のいる霧が発生した町にモンスターが群がっている。住民は避難済みで町はがらがら状態だ。町の教会の信者たちが座る椅子にて一人座りこむ魔女ルート・フォリオ。
町の上空にはプテラノドンのような飛竜が飛んでいる。
「捨てる神あれば拾う神あるならば、呪う神あれば呪いを解く神はいないのだろうか」
両手を組んで祈るようなポーズをとるもすぐに止めてしまう。
「何度祈ったところで無駄だったじゃないか。無駄なことだ」
〇
奏楽とエクスマキナの少女はある挑戦をすることとなった。大島警部と佐々木警部補の提案であり、特定保護処分としてモンスターがいないこの世界で魔女を保護しようというのだ。
そうすれば誰も傷つかず、魔女の呪いが解かれぬとしても一人孤独のまま耐え続ける必要もなくなるだろう。自暴自棄になって悪魔を召喚することもなくなる。
大木吉塚が剣を抜き詠唱する。
「我が声に応えよロードオブキャリバー!」
剣の刀身が巨大化しそのまま町の上空を飛ぶ飛竜を切り裂く。重症を負った飛竜はそのまま地面へ落下し動かなくなる。
奏楽とエクスマキナの少女は教会へと入っていった。椅子に座る老婆ルートへと近づいていく二人。
「あなたを助けに来ました」
ルートは首を横に振るう。
「そんな助けなど、この世界にはない」
「はい、この世界には」
奏楽は続けて話す。
「あなたをこちらの世界へと連れていきます。モンスターがいない世界へ」
〇
モンスターがいない世界で魔女の呪いはどのような影響を及ぼすのか。霧は出るのかなど。やってみないと分からないことばかりだが、一旦試す価値はあるだろう。
エクスマキナの少女が右手を外して右脇に抱え込み、右手が外された腕を真正面に構える。光の輪が現れ、輪の中の向こうには奏楽の住む世界がある。こちらの世界の住人にとっては異世界だろう。
ルートは目を丸くして「これはこれは」と呟く。
「私がそっちに行くことになろうとは」
彼女の背を押し世界の狭間を潜らせる。
〇
警察所の取調室で異世界の身元を調べる大島警部と佐々木警部補。エクスマキナの少女は充電中で段ボールの中でうずくまっている。
ルートからは見えないマジックミラーのガラス越しに奏楽も立ち会っていた。
大島警部が老婆に問う。
「それで、あなたはどうして魔女になってしまったのですか?」
「もうだいぶ前のことさね」
今となっては老婆だが彼女は20代の頃一人の青年に恋をし、その青年は女神のお気に入りだったらしく女神の反感を買い呪いを受けることとなったのだった。異世界の宗教では女神は信仰対象で、老婆は信仰不足または反信者として人々から見られていたのだった。
許しを請うたこともある。だが、残念ながら呪いが解けたことはなかった。呪いは解けずに老婆となるこの年までになり、自殺も試したがフィクション作品のようにうまくいかず、呪いを受けたまま年だけ重ねる結果となった。
大島警部は佐々木警部補に外で霧が出ているかを確認しに行くように命じる。
佐々木警部は急いで戻ってくると、「出ていません」と言うのだった。
〇
老婆は観察処分となりながらも異世界にいた時とは比べ物にならないほどの自由を手に入れた。
警察が管理している寮があり、そこで暮らすこととなった。生活する費用は税金から出ることとなり、買い物など分からないことは大島警部や佐々木警部補または女性警官が付き添って教えることとなった。
〇
奏楽と大島警部と佐々木警部補は焼肉屋でひとまず状況がよくなったということで飲食で乾杯をした。
奏楽にも笑顔が見えた。
「よかった。霧がこっちでも出るかと思ったけど。そんなことはなかったな」
頷きながらも大島警部は神様の話をしはじめる。
「もしかしたら世界で管轄している神様がいて、こっちの神様とあっちの神様は違うのかもしれない」
奏楽は異世界で死んだ時のことを思い出す。確かに女神が現れその女神の力によって転生したのだった。悪い人には見えなかった。死んだ者にチャンスを与える神様なのだ。慈悲深いとしか言いようがないが、神様にも人間と同じように気分や嫉妬などの感情に憑かれることがあるのかもしれない。それにしても老婆への呪いが二十代からというのはあまりにも残酷すぎはしないだろうか。自殺未遂までもしているのだ。
別の世界へ行くまで呪われ続けるというのは女神らしからぬ仕事と言わざるを得ない。
焼き肉の網にサラミをのせてジュージューと焼ける音が鳴る。
奏楽は焼けて子皿にとっておいたカルビをご飯の上にのせて食べ感想を述べる。
「それにしてもよかった」
佐々木警部補も微笑んでサラミを網の上でひっくり返す。
「そうだな。これでまた一つ魔女の救い方が分かったんだ。あちらの世界にとってもばんばんざいさ」
――それにしても、解けぬ呪いを受けた者はこの老婆のみなのであろうか。




