11話 後編 原始の魔女
冒険者大木吉塚はショートヘアの女性ナナ・アルファスと共にドラゴンの討伐へと向かっていた。ナナは吉塚を気に入っているようで腕に絡まるように抱き付き歩いている。ナナも魔女の呪いから解放された一人だった。今では魔女ではなく役職が魔法使いとなる一人の女性だ。
吉塚は気に入られたナナという女性が夢に出てきた女性と同じ見た目をしており運命の出会いと疑わなかった。
上空では二体のドラゴンが争い合っていた。炎を吐き爪で相手の鱗を剥ぎ、攻撃し合っている。
そんな様子を望遠鏡で眺める吉塚。
「さて、いったいどっちを狩ることになるのかね俺は」
そんな独り言を吐いているとナナに鎧を叩かれ「どうしたんだ?」と問う。
「あそこ」
指をさす先にいたのは血だらけになったドラゴン。傷だらけの様子で地を這って歩いていた。どうやら領土争いで負けたドラゴンだ。
「あれは手をかけるまでもない。弱り切っている。それよりも……」
望遠鏡を再び構える。
「二体同時に狩るか」
だが突然前触れもなく急に背筋が凍り、背後に視線を向け剣を抜いた。
背後にいたのは黒いローブに身を包んだ老婆であった。か細い指をナナへ向けている。
「解放されたんだね。諦めない導く者が現れたということ。あなたたちにとっては喜べること」
吉塚は「誰だ貴様!」と声を上げる。
「魔女はこの世から消えないんだよ」
冒険者たる吉塚は魔女から守るべくナナの盾になるように立った。
「貴様が魔女なら話を聞くんだ。このまま教会へ共に行こう。そうすれば呪いは解かれる」
〇
教会が炎に包まれモンスターが集まり協会に集った人々は襲われてしまった。ナナは怯えて吉塚の手を握る。
目を見開いてこの世の現象とは思えない光景に息を飲む吉塚。
「馬鹿な。魔女は教会の浄化で祝福され呪いが解けるはずじゃ」
僧侶は老婆に足踏みされ倒れている。
「言ったさね。魔女はこの世から消えない。私は消えない。消えないならば魔女は増えるだけ」
老婆は詠唱し召喚魔法を唱える。
「いでよ古の悪魔。アスモデウス!」
教会を信じる者たちの悲鳴がこだます。
黒い翼を生やしたボロボロな絹に身を包んだ悪魔が召喚される。
吉塚はナナの手を振りほどき剣を抜いて悪魔に向かって走り出した。
「みんな逃げろ! ここは俺がなんとかする!」
ナナが吉塚の名を呼び泣き叫ぶ。
「行かないで吉塚!!」
「ナナもここから離れるんだ!」
老婆は倒れる僧侶の上に座り込む。
「救われる場所なら、どんな者でも救われるようにしないとね、じゃないと……」
吉塚と悪魔アスモデウスがぶつかり合う。剣を振りかざす吉塚と剣を握るアスモデウス。
「悪魔が栄える理由になってしまうよ?」
ローブが脱げ老婆の姿が露わになる。ボロボロな絹で覆われた体は栄養を取っていないようでか細く骨が浮き出ている。
「すべてが救われるようにしないとね」
剣に力を入れ吉塚は詠唱をし自身を強化する。
「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス! ――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー! ――今我が剣の威力を上げよ、スラッシュナイフ!」
悪魔アスモデウスは刀身を握ったまま吉塚を睨みつける。
「人々を守ることが使命! そのために俺はこの世界に転生したのだ! そのために呼ばれたのだ!」
〇
協会が焼かれたという風の噂で駆けつけた奏楽はまさかの事態に驚愕したのだった。
吉塚が担架で運ばれ煙を出しながら全焼する協会。教会の上には悪魔が座りこんで人々を見下している。
ナナが奏楽の元まで駆け寄り手を握った。
「原始の魔女が現れたの」
原子の魔女。呪いの類での感染ではなく自然発生した魔女。存在そのものが呪われているといっても過言ではない存在。
「馬鹿な。魔女は協会で救われるはず。なのになんで」
なんで悪魔が全焼している協会の真上に座っているのか。
白い翼を展開し奏楽は空を飛んで悪魔と対峙する。
「何をしているんだお前」
悪魔アスモデウスは首を鳴らし、指でこいこいと挑発する。
挑発にはのらず上から辺りを見回した。どこかに悪魔を召喚した魔女がいるはずだと考えたのだが、どこにも姿が見当たらない。
奏楽は唾を飲みこみ再び人間を否定する悪魔という存在と対峙した。




