22話 争いの終わり
忍たちは結局、人間の姿をした妖怪たちに手を出すことはできなかった。攻撃もせずにただ出方を窺うだけの者たちに刃を向けることができなかったのだ。
朝になると忍たちは帰っていき奏楽は「よし!」と言った。
「みんな、よく頑張った。もうこれで争い合うことはなくなった! みんなこれから人間との間で平和に生きていけるんだ」
奏楽は妖怪たちと握手をし、森から出ていくと攻撃しなかった忍たちの元へ向かって問うた。
「相手から何もしてこなければもうこれから戦う必要はありませんよね?」
忍の装束を着た義経は「ああ、そうだな」と言って彼の発言を肯定したのだった。
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奏楽は眠らずに次々とネックレスの効力で石化されていた人々を元の姿へと戻していた。彼の目には確実な希望が見えていたのだ。だがもっと贅沢なことを言ってしまえば自分がこの世界に来る前にこのネックレスを誰かに託した方が早かったのではないかと思う。
だが、これでこの世界は救われる。誰も傷つけあったり次は自分かもしれないなどの不安に苛まれなくともよいのだから。
無数の石像にネックレスをかけていく奏楽。次々と石化が解け人間へ戻っていく様。その様子はこの世界では現実的じゃない願いで、本当は望んでいた結果である。
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夜になり石像がなくなってきた頃、女神フリイグがやってくる。
「やるべきことが済んだようですね」
奏楽は「意外と早く」と返す。
ネックレスを石像にかけ石化を解き、また人が解放される。これが最後の一人。十代の男であった。
「もう、家に帰れる。帰っておいで」
奏楽の言う通りに解放された男は家に戻っていく。
「ありがとう」
お礼を言われ奏楽はここまで来て良かったと思う。
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世話になったお礼に沙織の家へ戻ってきた奏楽はネックレスを彼女に託した。どこの者か分からぬ者を泊めるだけの心の持ちようがあるのだ。この人になら託してもよいと思える。それから義経にもお別れの言葉を伝えに行った。沙織に石化の呪いが解けるネックレスを預けたことも伝えなくてはならない。
別れの言葉を伝え外に出るとフリイグが待っていた。
「お別れは済みましたか?」
「はい、お待ちいただきありがとうございます」
フリイグの周りに魔法陣が展開されその中に奏楽も踏み入れていく。
「では、帰りましょう。あなたの世界に」
魔法陣から眩い光があふれ出し、気が付くと見たことがある景色が広がっていた。会社帰りのサラリーマンや自転車で買い物に出かけている主婦、そして学校帰りの学生の姿。いつも通りの光景、戻って来たと思える情報が目に飛び込んでくる。
フリイグの姿はなく、奏楽は一人で佇んでいた。
まず奏楽は警察署へと足を運んだ。何故なら魔女の呪いがあった異世界がどうなったのか聞かなくてはならないからだ。
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警察署に着いた奏楽は異世界研究捜査部へ顔を見せた。そこにいたのは久しぶりに見る大島輝幸警部の姿、そして佐々木和則警部補の姿が。
大島警部は久しぶりに見る奏楽に「おお」と声をかける。
「久しぶりじゃないか。どこに行っていたんだ?」
奏楽は神によってまた違う異世界へ連れていかれていたことを伝える。
お茶を出してくれる佐々木警部補にお礼を言う。
「大変だったね。まあ、お茶でも飲んで。いつ戻ってきたんだい?」
「ついさっきです」
奏楽は別の異世界へ連れていかれてからの経験したことを伝えた。佐々木警部補は伝えている内容をパソコンに打ち込んでいるようだった。
それから久しぶりに自分の住処であるアパートに戻った奏楽は自分のベッドに久しぶりに横になった。
「あー」
よく分からない声が漏れた。
前日は徹夜をして石化を解いていた。どうやら疲労が溜まっていたらしい。そのまま目を閉じ眠りに落ちていった。
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目を覚ました奏楽。時間は午前十時であった。遅い朝食を食べ、再び異世界へ行くべく警察署へと向かうことに。警察署には異世界専門に取り扱うエクスマキナが存在している。エクスマキナの力で異世界の門を開くことが可能なのだ。
久しぶりにノワール・セブーンやナナ・アルファスや大木吉塚にも会いたい。あの世界が今どうなっているのかも分からない。
警察署へ着くとちょうどこれからパトロールへ行くところであった。霧が発生した反応、モンスターの反応があれば異世界へと渡り戦闘を行い保護すべき魔女を探すこととなる。
エクスマキナの少女に会うと「久しぶり」と挨拶する奏楽。少女は頭を下げて挨拶を返した。
「お久しぶりです。今日もよろしくお願いします」
今まで少女とチームを組んでいることになっていたのだが、名前が決まっていないため声をかけずらい。
大島警部に名前は付けないのかを問う。
「そうだなあ、決めた方がいいかあ」
「ええ、決めた方が仕事の効率にも繋がると思います」
本来であればここに来る前から名前が決まっていればよかったのだが、そうではなくこのままずるずるきてしまったらしい。
すると佐々木警部補が案を出してくる。
「すずなんていかがでしょうか」
すず。最近熊が人の町に出没しているらしく熊鈴を持ち歩くことが多いらしい。熊鈴からとってすず。どうだろうか。
奏楽は「いいんじゃないでしょうか」と言う。大島警部も「まあいいんじゃないかな」と言い一旦名前はすずに決まった。
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エクスマキナの少女すずは機密扱いのため、パトロールするたびに段ボールに入れられ運ばれていたのだが、すずの変装衣装が届いたため一人歩きが許されるようになった。デニムショートパンツに黒のティーシャツ、スニーカーを履いてキャスケットをかぶっている。エクスマキナとしての目立たない衣装だ。
奏楽と共に町に出てパトロールするすず。どこかで反応があれば直ちに異世界への扉を開きモンスター対処へ移っていく。
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町のパトロール中、アイスクリーム屋さんが目に留まりすずに何か食べないか提案する。
「アイスクリームだよ。君は何か食べないかい?」
「奏楽さん、今は仕事中ですよ」
「俺は協力者だから、仕事とはまたちょっと違うんだな」
すずは自分の目に指をさす。
「ここに映像が記録されています。軽率な提案は止めた方がよいかと」
「ああ、そうなんだ。そっか……」
なぜかナンパに失敗したように落ち込む奏楽である。
すずは声をかける。
「そろそろです。準備してください」
すずは人気のない場所へ移動し右手を外しその手を右脇に挟んだ。右腕から光の輪が発動し奏楽はその輪の中へと入っていく。すずもその後を辿り入っていく。
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出たのはどこかの霧の町。どこかにモンスターが出現しているか魔女がいるはずだ。
奏楽はペガサスの翼を展開し、空を飛んで辺りを見回す。霧が出ているため探しにくいがどこかにモンスターがいれば分かるはずだ。
地上ではすずが己のセンサーを使って反応を確かめている。すずのセンサーにはモンスターや魔女を発見するための機能がある。
すずは何かを発見したようで走り出す。奏楽は何を発見したのかが分からなかったためすずのところまで降りていき翼を畳んで後を追うように走り出した。
彼女が向かう先にいたのは金棒を持った巨大な鬼であった。すずは背中から拳銃を取り出し構え数発鬼に撃ち込む。
足と胸に命中しもがき苦しむ鬼。
奏楽もライフルバックからライフル銃を取りだして構える。だがその必要もないようだ。
すずはナイフを抜き出して鬼に跨り首を切り落とした。
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鬼退治が完了しすずと奏楽は魔女探しをはじめた。霧が止まないということはモンスター以外に魔女がいるはずなのだ。
ここはすずのセンサーに任せるしかない。奏楽には見つけ出す術がないからだ。
すずは何かを見つけ走り出し、付近の家の中に入っていく。家の中には思った通り一人閉じこもる少女の姿があった。
「対象確認。これより保護活動に入る」
奏楽は手を差し伸べる。
「もう大丈夫だよ。一緒に行こう。君の霧が出る体質は今はもう改善される世の中になっているんだ」




