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23話 久しい冒険

 エクスマキナの少女すずと奏楽は異世界のとある町のカフェで休憩をしていた。奏楽はテーブルに突っ伏している。どうやら疲れが溜まっているらしい。

 そこへ久しい顔が近づいてくる。剣士の大木吉塚だ。

「よお、戻ってきてたんだな! 久しぶりい!」

 奏楽は顔を上げてにっこり微笑む。

「吉塚。久しぶり!」

 そらにノワール・セブーンやナナ・アルファスもやってくる。

「ノワール、ナナ、久しぶり」

 ノワールは「神にこってり絞られてきたか」と問う。

「絞られてないよ。……いや、絞られたのか?」

 自分でもよく分かっていない。ナナは手を振って「久しぶりです」と返してくる。

 吉塚は早速ある提案をしてきた。

「実はずっと戻ってくるのを待ってたんだ」

「おっそれは嬉しいことを言ってくれる」

「でだ、実は西の町イズルーンにリンゴの木に囲まれたピラミッドがあってだな。そこにモンスターが住み着いていて今は誰も入れなくなっているらしい。どうやら強いモンスターらしくクエストを募集してもうまく討伐できないらしいんだ」

 奏楽は「なるほど」と言い頬を右手で支え肘をつく。

「このピラミッドは女神イズルンを祀るピラミッドらしい。祭殿としても使われているらしく人が入れない状況は困りものらしい」

「分かった。次の仕事は決まったな。すず、いいかな?」

 奏楽の問いにすずは「我々は魔女を探す任務では?」と返してくる。

「いいじゃないか。ずっと仕事してきたんだ。それにこっちの協力者との人間関係を大事にするのも仕事のうちじゃないかな」

 すずは「任務了解」と了承した。


      〇


 リンゴの木が並ぶ町イズルーンは女神イズルンからきている。この町はリンゴで成り立っているといっても過言ではない。名物であり祭殿にお供えする供物としての大事な役割がある。

 ピラミッドに行く前に奏楽、すず、吉塚、ノワール、ナナの五人は、町長の家へと向かった。一応挨拶をしておくことと、ピラミッドのモンスターについていろいろ聞いておいた方がよいと思ったからだ。

 町長の家に着くと客間に案内されお茶を出してもらった。町長はモンスターについて詳しく語ってくれた。まずあのモンスターは物理攻撃が効かないこと。そして魔法も効かないということだ。狙うは封印かもしくは動きを封じることで手を打つしかないということだ。

 誰もクエストがうまくいかなかった理由がよく分かる。

 モンスターの名前は寺テラーマン。もう一つの特徴として目に映った者の恐怖心を増長させるということだ。


      〇


 モンスターの正体が分かったところで準備していかなくてはならない物がある。それは封印の壺。モンスターを封印することができるアイテムショップで売っている物だ。

 町のアイテムショップに向かうと男性の店員が「いらっしゃい」と迎えてくれる。

 奏楽はモンスターを封印できる壺はあるかを問う。

「あるよー。ありますとも。ていうことはあんたら、これからピラミッドのモンスター退治かい?」

 吉塚は「ああ、そうだよ」と返す。

「それは助かるねえ。うまくいくように祈っているよ。女神イズルン様にね」

 奏楽は壺を貰うと吉塚が料金を支払った。


      〇


 ピラミッドに入っていく一行。今回は物理も魔法も通用しない相手だ。みな緊張感をもって挑んでいく姿勢だ。

 ピラミッド内は人が入って整理された形跡がある。松明を持って進んでいくと、宝物庫へとたどり着いた。宝物庫といってももうほとんど持ち出された後であまり残っていない。

 分かりやすい大きな宝箱が置いてあるが、あれはまさしくミミックだろう。手を出さないのが賢明だ。

 そのまままっすぐ進んでいくと女神イズルンの人間だった時のミイラが眠っている部屋へとたどり着く。だが、今はミイラも持ち出された後だ。ミイラは宝とともに博物館で管理されていることだろう。

 イズルンの部屋からさらに奥に進んでいくと、その奥には第二宝物庫があるのだが、嫌な気配がする。おそらくモンスターの気配だ。


      〇


 嫌な気配が近づいてくるをのを皆感じている。テラーマン。恐怖を植え付け物理も魔法も通用しない厄介なモンスターだ。

 松明の明かりにモンスターが露わになる。細い足に細い腕、胴体も細身でふらふらとしていて今にも倒れそうな姿をしている。

 奏楽たちは不思議な気持ちになった。こんなモンスターが討伐されずに残っているなど考え難かった。

 吉塚は剣を抜き向かっていく。

「こんなのに本当に剣が効かないっていうのか!?」

 剣を振るうも躱される。上から、下から、横、すべて躱されてしまう。

「馬鹿な!?」

 すずはナイフを引き抜いて向かっていく。

「任務了解。油断大敵です」

 吉塚とすずがとり囲む形でテラーマンに剣やナイフを振るう。

 だがすべて躱されてしまう。

 二人の攻撃が躱され続ける中で奏楽はライフルバックからライフルを取り出して構える。

「本当に効かないのか。このライフルのスピードさえ上回るというのか」

 スコープを覗き発砲する奏楽。だがその弾さえ躱される。

「なんなんだあいつは」

 ノワールが奏楽よりも前に出て詠唱をはじめる。魔法陣を展開し召喚魔法で攻撃する。

「ローズウィップ」

 薔薇のモンスターが召喚され、薔薇のモンスターがつるで攻撃するが、それすらも躱してしまう。

「あら?」

 さらに吉塚は攻撃のスピードを上げていく。

「――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー!」

 どんなにスピードをあげても躱されてしまう。

「奏楽! 壺だ! 壺を準備してくれ!」

 弱らせることもできずに封印の壺を使わなくてはならないことに不安を感じる奏楽。

ノワールも「ほら行きましょう」と声をかけてくる。

「ペガサスの翼!」

 白い翼を生やして壺を持って走りだし低空飛行の姿勢をとる。

「これでどうだ!」

 壺の口をテラーマンへ向けて飛行する奏楽。テラーマンは躱そうとするが、壺の中に胴体が引きずられていく。そのまま体は壺の中へと入ってしまった。

地に足を付ける奏楽は蓋を閉じて封印の印が付いたお札を張り付けるのであった。


      〇


 クエストが無事終了しギルドへ戻るさなか、壺を持つ奏楽は不安に苛まれていた。討伐が困難すぎるモンスターがこんなにあっさり封印されたのだ。本当に封印されたのかという疑いまで発生してしまう。

そんな彼を気遣うようにナナが声をかける。

「テラーマンは恐怖を植え付けるモンスターです。多分その影響で不安が出てきてしまうのだと思います」

「そうか、ありがとうナナ」

 ギルドに到着すると壺を職員に渡し報酬をもらった。壺の取り扱いはテラーマンの恐怖を増長させてしまう能力故に気をつけるように言い付けた。職員は承知し壺を奥にしまい込む。

 一旦クエストが終わり自由に飲み物などを買って休んでいると、別の世界へ飛ばされる前に起こっていた問題を奏楽は思い出した。

「ねえ、皆。新しい魔王は一体どうなったの?」

 吉塚は「それはだなあ」と呟く。

「新たな魔王は特に何の活動もしておらず、神オーディオデからの忠告もあり害悪となる影響もないんだ。今のところはまあほおっておこうみたいな感じだ」


      〇


 魔王城の謁見の間の王座に座り込む白髪の少年。彼の隣にはタキシードを身にまとった金髪の男が。

 金髪の男に白髪の少年は心配そうに聞く。

「あの神、オーディオデっていう奴は何もするなみたいなことを言っていたけど。どうすればいいんだ」

「魔王様はどうなさりたいのですか?」

 金髪の男の優しい声に少年はやりたいことを答える。

「僕は、悪事を働いていないモンスターを守りたい」

 その回答に微笑む金髪の男。

「魔王様らしい答えだと思います。ではそうしましょう。これから我々が守っていくのです」

 すべてが悪いモンスターではない。だが存在しているだけで狙われる者もいる。新たな魔王はそんなモンスターたちを守りたいのだった。


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