10話 後編 解かれる呪い
玉座に座っている見た目が男性老人である魔王。奏楽がそこへたどり着くのにそんなに時間はかからなかった。
魔王はやってきたノワールの姿を見るなり眉間に皺を寄せる。
「それで、これで我を倒すつもりか?! 舐めるなあ」
男性老人は身体の部位のあちこちが膨らみ破裂するとそこから腕が生え体のあちこちから大量の手をはやした。
奏楽は「気持ち悪い」と呟いてしまう。
魔王は笑みを浮かべる。
「毒を食らわば皿までもというだろう?」
吉塚はため息を吐きながら魔王に突っ込む。
「まさに往生際が悪いってやつだな」
吉塚は「魔王、覚悟!」と言って剣を構え走り出す。
剣を振り無数の手の一部で受け止める魔王。
「舐めるなと言っておるのが分からんか!」
ナナが両手を吉塚へと向ける。
「――彼を守って、リフレクトバリア!」
吉塚の剣は魔王の手によって掴まれ動きを止められ、さらに他の無数の手によって殴りつけられる。
「吉塚!」
奏楽は空中を舞い翼で打つ姿勢で魔王に突っ込む、さらにエクスマキナの少女は背中のホルスターから拳銃を引き抜いて吉塚の剣を掴む腕を撃ち抜いた。銃弾が命中した手が吉塚の剣を放し、奏楽が天から急降下し翼で打つ攻撃を受け魔王は壁に衝突する。壁は崩れ魔王は力なく横たわる。
立ち上がる魔王は雄たけびを上げながら突っ込んでくる。吉塚はみんなの前に立ち詠唱をする。
「シャイニングエキストラソード!」
吉塚の影が分裂し同じ姿の存在が8体にまで増え、ありとあらゆる角度から魔王を囲んだ。
8体の吉塚は剣を構え魔王めがけて走り出す。
「これで……」
ノワールは冷静な態度で「終わりね」と呟く。
8体の剣が黒ひげ危機一髪のようにすべてが胴を貫き魔王はその場に崩れ落ちた。
〇
魔王は血反吐を吐きながらノワールをにらみつける。ノワールの方はつまらないものを見る視線だ。
「魔法が使えたら勝っていたなんて言わないわよね?」
「つまらん。全てがつまらん」
目を瞑り何も語らなくなる魔王。
ノワールは目を閉じる。
「さようなら。退屈な魔王さん」
魔王も今の現状をよくするために誰かがくるのをずっと待っていた。だが異世界を暴力で征服しようと企む者の味方になる者などいなかったのだ。救われる魔女とそうでない魔王の違いはここだった。
〇
魔王を倒した後、この異世界に平和が訪れるかというとそれは違う。魔女たちが存在するようにまだまだ呪いで苦しんでいる者たちがいる。呪いのせいで、自分がいるせいで霧が発生しモンスターを呼び寄せてしまったり、無関係な別世界の者たちを呼び寄せてしまうこともある。
これから奏楽一行は旅をして霧を発生させてしまう魔女を救うこととなる。
ノワールは浄化された心を表すように白いワンピースを着て気持ちよさそうに天日のよい野原を駆け回っていた。その姿はとても楽しそうである。そして吉塚と仲良く横を歩くナナ。魔女だった頃にはなかった純粋な笑顔が二人とも今ここにはあった。
そして魔王を倒したことで異世界の様々な国に魔女を救わなければならないことが伝わったのだった。
〇
光が差さない暗い場所で一人頬杖をつく女がいた。
「ああつまんない。救済が進むなんて退屈極まりないにもほどがある。退屈しない理由がこの世には必要なのに」
頬杖をつく女は己の爪を噛みつまらなそうな態度である。
魔女にはランクがあった。つまり、呪いは連鎖しており、もっとも高い位置にある魔女のランクは呪いの始まりを受けた者になる。呪いを受けた魔女が他の女の魔法使いに呪いを移していく。
魔女の呪いのトップである原初の呪いを癒さぬ限りは永遠に魔女の呪いを解く旅は続くことになるだろう。
退屈な女は己が女の魔法使いたちにかけた呪いの数を指を折って数えていた。
「いち、にい、さん、……あっ分かんない。覚えられるはずがないわ。当たり前だけども」
女は笑い声をあげるとどこかの町で霧が出ていることを感じ一人気持ちよくなっていた。
「――フフフ、フフフフフ。まだよ。まだまだ」




