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18話 知らない日本

 別の異世界へと神オーディオデによって飛ばされてしまった奏楽だが、運よく異世界での出会いでポンチョを着た女性の親切もあり石造りの家へと案内され食事も貰うことができたのだった。名前は近藤沙織(こんどう さおり)で二十代前半の女性だ。宿がなかったため大変ありがたいおもてなしであった。

 どうやらやってきた世界は奏楽の世界の並行世界のようだが、この世界はどんな問題を抱えているのだろうか。

 その答えは女神フリイグが教えてくれた。夕食をいただいた後、外で夜風に浸っていると目の前に神々しく降りてきたのだ。

「……またもや実体」

「こんばんは豊餅奏楽さん。オーディオデの強引な異世界転移大変申し訳ありませんでした。説明も足りなかったことでしょう」

「そ、それはまあ」

 横暴な神様によってこの世界へ飛ばされたことは承知なのだろう。

「それで、私はいったい何をすればいいのでしょうか?」

「この世界は妖怪が現れる世界なのです。その妖怪を退治してほしいのが今回の勝手ながらの異世界転移の理由なのです」


      〇


 オーディオデは立ち塞がる吉塚を厄介そうに見据えると、その後に金髪の男をしゃがんで抱える白髪の少年に忠告する。

「これ以上、この世界を混沌に沈ませようとするのであれば、我が直々に処分してくれる。いいな?」

 白髪の少年はうんともすんとも言わない。

「まあ、いいだろう」

 ここまで黙っていたが我慢できないノワールは声を上げた。

「ふざけんじゃないわよ! こっちはそっちの神様の呪いを受けて生きてきたのよ! この世界を混沌に沈ませようとするのであればですって? あんたたち神様のやっていることの方が混沌としているでしょうが!」

 オーディオデは声を荒げて反発する。

「ふざけているのは貴様らだ。神のやることに対して文句を言える立場にいつなった。だから転生者を呼びその度対処してきただろうが。そこに感謝を覚えるべきだな」

 とんでもない言い分に話が通じず呆然としてしまうノワール。

「では、我は帰るとしよう。本日やるべきことはできた。あとは豊餅奏楽という人間の仕事次第だな」


      〇


 女神フリイグと共に町の中を歩き川へと移動する。川の近くには何かがいた。一人の女性が赤子を抱いて立っている。足元にはバケツが置いてある。女性は奏楽に気が付くと赤子を抱っこしていてもらえないかとお願いされる。

 奏楽は承諾しようとするもフリイグは止めるように言う。

「この方は人間ではありません。警戒してください」

 赤子を抱く女性は舌打ちをしフリイグを睨みつける。

「余計な効く目を持っている輩よ」

 女性は赤子を地に落とし、角が頭から生え体が膨らみ蜘蛛の足が生え雄たけびを上げた。

 ――ギャアアアアアアアアアアア。

 赤子だと思ったそれはただの岩であった。

 この妖怪を奏楽は知っていた。

「牛鬼か」


      〇


 蜘蛛の体で巨体の牛の頭の妖怪が奏楽に牙を剝く。

「まあ食うだけのことよ」

 奏楽は手を握ってクロスし詠唱する。

「ペガサスの翼!」

 背中から白い翼が生えフリイグの前に立つ。

「女神様は下がっていてください。ここは俺で事足ります」

 牛鬼は「何が事足りるって?」と言いながら蜘蛛の足を伸ばし奏楽の胴体を突き刺そうとする。

 奏楽は翼を羽ばたかせ宙返りをし攻撃をかわす。そしてそのまま飛翔し蜘蛛の足目掛けて突進した。

「翼で打つ!」

 翼が直撃したことで蜘蛛の足が湾曲し牛鬼は悲鳴を上げる。

 空中でさらに背負っていたライフルバックからライフルを取り出し、牛鬼に向かって構える。銃撃を一発、二発と胴体へ浴びせていく。

 銃撃を浴び痛みに悲鳴を上げる牛鬼。


      〇


 ダメージが蓄積し動けなくなった牛鬼をしり目にフリイグに問う奏楽。

「聞きたいことがありました。……魔女は女神様の呪いによるものと聞きました。それは本当ですか?」

 フリイグは答える。

「本当よ」

「それはフリイグ様によるものですか?」

「それは違うわ」

 奏楽は聞きづらい感覚を覚えながらも問いただす。

「魔女の呪いを広めた女神様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 フリイグは「それはできません」と答える。

「そうですか。それにしても……」

 倒れている牛鬼を視界に入れ、対処に困る奏楽。

「この妖怪もあの世界の魔女のように誰かが作り出したのだろうか」


      〇


 妖怪に関してはフリイヤは神の手が加わった結果ではないという。神が生み出したわけではないのであれば一体何による結果なのだろうか。

 奏楽は顎に手を当て思考する。だが結果は、

「考えてもしかたないか」

 思考したところで答えは出ない。魔女の時のようにたどり着くところにたどり着くことだろう。

 一度近藤沙織の石造りの家へと戻ることにした。

 お茶をもらい飲みながら彼女にこの世界の妖怪について問う奏楽。

 近藤沙織は答えずらそうに答えた。

「知りたいんです。教えていただけませんか?」

「そうですね。……妖怪は口減らしのために犠牲になった者が変異した姿と聞いたことがあります。実際はどうか分かりませんが」

 口減らし。またもや言いずらそうな内容だ。奏楽は思った。

 ――もしかしたらこれも呪いの内の一つかもしれない。


      〇


 夜になり布団を用意され睡眠をとろうとしたところ、外から女性の悲鳴が聞こえ飛び出していく。彼の様子を石造りの家の屋根の上から眺めていたフリイヤは静かに祈りを捧げていたのであった。

 奏楽は白い翼を羽ばたかせ飛翔し高い位置から女性の悲鳴が聞こえた方向を見渡す。

「どこだ? どこから聞こえた?」

 見渡している最中に黒い何かが奏楽の目の前を通り過ぎた。

「なんだ?!」

 黒い翼を生やした何か。その何かは草原に立ち翼を蝙蝠のように折りたたんだ。どういう訳か蝙蝠の様な仮面までつけている。奏楽は地に降りて蝙蝠の風貌のそれに近づいていき声をかけた。

「誰だ?」

 ゆっくりと頷くそれ。

「我らは忍。妖魔は我らが狩る。そういうお主は転生者だな?」

 正しくは転移だが、何やら奏楽の事情が分かっているらしい。

「我らの仕事を見届けるといい」


      〇


 蝙蝠のような黒い翼で羽ばたくそれを追って白い翼を羽ばたかせて飛ぶ奏楽。

 広がる草原には人型の石像がいくつも並んでいる。その中で逃げ惑う人の影がある。女だ。何から逃げているのか気になる奏楽。すると後ろから黒い翼を羽ばたかせ飛ぶいくつかの影があった。

「そんな、まさか人を襲っているのか?!」

「落ち着きたまえ。もうすぐよく分かるようになるさ」

 黒い翼を生やした者たちに追われていた女性はその場にへたり込んでしまう。そこへ黒い翼を生やした者たちがやってくる。

 剣を携えた黒い翼を生やした者たちは剣を引き抜き近づいていく。

 剣を振るおうとした瞬間のことだった。へたり込んでいた女性の身体が膨らみ始め蜘蛛のような8本の足が生え牛の頭を露わにした。

 剣を振るおうとした者の剣は鋭い足に弾かれ捕食される。

「あああああああああ!」

 黒い翼を生やした者の叫び声が聞こえる。先ほどの叫び声の正体を理解し、ライフルバックからライフル取り出し構える。

「手を出さないわけにはいかないだろ」

 目立たない位置まで近づきスコープを覗き黒い翼を生やした者たちを襲う牛鬼に狙いを定める。

 発砲し弾丸は脳天を直撃し捕食されていた黒い翼を生やした者が放たれる。

 前を飛んでいた黒い翼を生やした者は仲間の元に寄ると「医者に見せるぞ」と言い他の者たちに支持を出した。そして援護をした奏楽にお礼を言うのだった。

「いい腕だ。礼を言う」


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