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15話 謎のピラミッド

 吉塚が剣を振るう度にナルガクリードの爪で塞がれ攻撃が通らない。まるで剣術の師と相対しているかのようだ。

 息荒くなるも下がってはいられない。後ろには魔術師たるノワールとナナがいる。奏楽も空を飛べるが奇襲しかできない。前線で張れるのは吉塚のみ。

「俺は下がるわけにはいかないんだ!!」

 ナナは必死に剣を振るう彼に見惚れる。

「やっぱりいい……」

 ナナの男の好みだ。ノワールはそんな彼女に案を投じる。

「だったら援護の一つでもしたら?」

 その通りでナナは手のひらを吉塚へと向ける。

「――彼を守って、リフレクトバリア!」

 物理防御と魔法防御の二つを担う支援防衛魔法だ。


      〇


 魔女として呪いを受けた老婆、名をアナイス・レイ。彼女は現在奏楽や吉塚の故郷である世界で衣食住をしている。

 住んでいる寮にはテレビも設置されており、この世界の情報を手軽に見ることができる。そこでアナイスの眉が動く。

 ……テレビに映っているのはピラミッド。ツタンカーメンの特集をしていたのだった。

 煎餅をかじりながらアナイスは呟いた。

「こんな世界にも神話の影響があるとはね。人間というのはどこも似たようなこと考えるんだねえ」

 異世界にもあるピラミッド。異世界のピラミッドもこの世界のピラミッドと同じ用途とで作られていたのだった。

 テレビに映るツタンカーメンのミイラ。

「便利なもんだねテレビっていうのは。王の墓をつくるのも神話のためだろうにねえ。神様のためにご苦労なこったよ。どの世界も」


      〇


 ナルガクリードを追い込む吉塚。最後の詰めとして魔法の詠唱を発する。

「シャイニングエキストラソード!」

彼の影が分裂し同じ姿の存在が8体にまで増え、ありとあらゆる角度からナルガクリードを囲む。

囲まれたナルガクリードは四方八方から攻撃をくらい体を引きずってもがきながら躱そうとしている。

「今楽にしてやる」

8体の吉塚がナルガクリードを剣を黒ひげ危機一髪のごとく貫いていく、そして、倒れて動かなくなった。


      〇


 奏楽は悔しかった。自分はこの戦いで何の役にも立たなかったと感じているからだ。自分は剣士ではないが、剣を持とうかと考えてもいる。だが、剣を持つにしても吉塚のようにサポートスキルを持たない故、剣士として機能しない可能性が高い。

 ギルドへ戻りクエストの報酬をもらって皆で分け合うと奏楽は武器屋に行きたいと吉塚に提案した。自分も武器を持った方がサポートしやすいのではないかと声を上げた。

「なるほどな。いいんじゃないか。どんな武器を考えているんだ?」

「空を飛べる利点から、銃なんかがいいんじゃないかなと思っている」

 この提案に対してノワールは反対の意見だった。

「だけど銃だと前線で戦う吉塚に当たっちゃう可能性もあるんじゃない?」

 奏楽は「確かに」と呟いた。

「……どうしよう。銃を使うにも百発百中のようなスキルが必要になるのかもしれない」


      〇


 武器屋にたどり着いた一行。奏楽は自分にはどの武器が似合うかを考えながら店内を拝見していた。剣やメイスや槍など色々な武器が置いてある。

 どれも現実感が湧かない。どの武器を使ってもスキルとの併用な気がしてならなかった。

 吉塚に相談しようと思い声をかけるが吉塚にも分からなそうだ。

「好きな武器を使ったらいいんじゃないか?」

「好きな武器って言われても……」

 空を飛ぶことを活かすとしたら狙撃系になるだろう。だが、ノワールが言うように前線で戦う吉塚に当たってしまう可能性もある。

 色々考えていると何かを察したかのようで吉塚は助言する。

「さっきノワールに言われたことを気にしているなら気にするな。要は武器っていうのは使い時だ。特に狙撃するならドカドカ乱射することもないだろうしな」

「ありがとう吉塚。ちょっと考えてみるよ」

 店内には銃も置いてある。選ぶならば遠くからでも狙えるスコープ付きのライフルになるだろう。

 店内のライフルを手に取って構えてみる。するとノワールが「様になっているじゃない」と茶々を入れてくる。

 ライフルを置いて色々見ていると店員が声をかけてきた。

「お客様、お目にかなう物はありましたでしょうか?」

「え、ええ。ちょっとライフルが気になっていまして」

 店員は「お目が高い」と言う。

「こちらは五百メートル先も狙えます。これならどんな獲物もズドンッです」

 吉塚もライフルを手に取り構えてみる。

「こりゃあいい。俺が買おうかな」

 にやっとした笑みがなんともわざとらしい。

 奏楽は他の武器も手に取ってみた。剣を鞘から引き抜き構えてみる。弓矢の弓を引く素振りをしてみる。

 だが、結局のところライフルを購入した。


      〇


 早速腕試しとばかりに森に入って印を書いた紙を木に括り付けて射撃をすることにした。

 弾を込めて狙いを定める。

 ――ダンッ。

 一発の弾が狙いを定めた木をかすめた。

「難しい」

 弾を込めてもう一発放つ。

 ――ダンッ。

 見事に印に命中する。

 吉塚は「お見事」と言って拍手する。続いてノワールとナナも拍手をする。

「実戦で使う時は前線で戦う人に当たらない方角から狙撃することにするよ」


      〇


 奏楽たちが武器屋に行っている間、エクスマキナの少女は霧の町でモンスターを狩っていた。

 蝙蝠の翼を広げて空を飛び回る人型の怪人。

 少女は背中のホルスターから拳銃を取り出し構える。数発弾丸を撃ち込むと怪人は墜落して発狂した声を上げながら地面に転がりのたうち回る。

 さらに弾丸を撃ち込むと動かなくなった。

「任務完了。これより保護対象を探し出し教会へ連行する」

 背中のホルスターに拳銃をしまうと少女は辺りを見回し、霧の町の中を探索した。


      〇


 ライフルをライフルバックにしまいこむ。時は夕方、ノワールとナナは家へと帰ることとなり奏楽と吉塚はモーテルで泊まることとなる。

 モーテルへと行く前に二人はピラミッドへと寄っていくこととなった。結局気になったのだ。

 ピラミッドへとたどり着いた二人は入り口を探した。

 奏楽は隣を歩く吉塚の腰を肘で突く。

「やっぱりこういうのって気になるよな」

「ああ、よくわからんものほど知りたくなる」

 すでにダンジョンとしての機能は失っておりアンデッドも出現しないらしい。戦う必要もなく気軽に入ることができる。

 入口を見つけ入る二人だが、一つ気になることがあって奏楽は吉塚に問う。

「スフィンクスがないよね?」

「ああ、ないな。これも世界の文明の違いだな」

 エジプトのピラミッドはエジプト神話に深く関りがある作りとなっている。ここはエジプトではないのでスフィンクスはない。


      〇


 ピラミッドの中へと入った二人は薄暗い明かりのついた通路を進んでいく。

 人の手が入っているようで明かりも付けられており、罠なども発動しない。宝もなければミミックもない。王のミイラも既に豪華な棺桶とともに引き出された後だろう。

 吉塚は不思議に思ったことがあり奏楽に話しかける。

「なあ、ちょっと思ったんだけどさ。異世界の神話ってなんなんだろうな」

 奏楽はその疑問に転生の際に世話になった女神を思い出した。

「女神フリイグ。俺を転生させた女神だ」

「そうか、俺もだ。女神がいるということは神話があるってことだ」

 空っぽになったピラミッドから出てくると明日の予定について話し合った。明日は神話について調べることにしたのだ。どうにもこうにも自分たちが転生したのも神話に関わっているかもしれない。だとしたら調べるに越したことはない。


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