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14話 二人の女神

 神の世界で美女たる女神、フリイグとヘイラーは面と向かい合って話していた。フリイグは豊餅奏楽の転生を担当した女神だ。

 フリイグは厳しい眼差しで問う。

「転生者であり勇者、豊餅奏楽とその協力者たちによって呪詛を受けた者が助けられました。別の世界へ移動しこの世界で受けた呪いが作用しない意味のない形にするという手段で」

 ヘイラーは長い髪を手で触りながら「そうですね。あなたが選んだ勇者が成した」と言いつまらなそうにため息を吐き文句の一つを呟いた。

「あなた、私をヴィランとでも言いたそうな様子ですね?」

「言いたげ、というのは間違っていませんね。今の今までモンスターの討伐でしかその場しのぎができなかったわけですから。たくさんの方々が苦しんできたでしょう。だからこそ今、この世界は良い方向に動き始めています。私情によって余計なことはしないでくださいね」

 厳しめな言いぐさで続ける。

「あなたの愚かな嫉妬の呪いは全てにおいて解決できることとなりました。残念でしたね? 数々の勇者や協力者たちのおかげで世の中がよくなっていってこれでは退屈でしょうがないでしょう」

 ヘイラーは髪を撫でて言い返した。

「あなたの生み出した転生者は実に有能なご様子であなたも鼻が高いでしょう? でも忘れないでいただきたい。その需要はモンスターがいてのこと。私一人の呪詛ごときでこの世界はそう大きく変わらなくってよ。モンスターはいなくならないし、呪いだってなくなった訳じゃない。全部が存在している」

 フリイグとヘイラーは煮えたぎる内心を抑えながらそのまま黙って背を向けたのである。


      〇


 女神からの計らいで背に生える白い翼で飛ぶことができる奏楽。奏楽はその翼を利用して空高く飛翔しどこか遥か遠くを見据えていた。この異世界は平和になりつつある。モンスターの討伐依頼はなくならないが、依頼はギルドに行けばクエストとして受けることができ、冒険者たちはたくさんいる。魔女の救済に関して対処法の目処が立っている。この異世界から呪われている存在である魔女がいなくなるのも時間の問題だった。

 空を飛ぶ彼を地上から見上げる戦友の大木吉塚。

「あいつの翼が羨ましいぜ」

 ノワール・セブーンが吉塚に突っ込む。

「空が飛びたいの?」

「気持ちよさそうじゃないか」

「えー怖くない? あんな高いところまで飛ぶんだよ?」

 吉塚は「そーかもな」と呟いて両手を頭の後ろに組む。

「そうかもしれんがあれは、自由で、力だ」


      〇


 空を飛ぶ奏楽は何かを発見した。巨大な三角形のピラミッドのような建造物だ。一度地上に降りて待機していた吉塚とノワールの元へ戻る。

「なんか、ピラミッドみたいなものがあるんだ」

「ピラミッドなんじゃないのか?」

 吉塚は腕を組んで興味ありげに答えた。

 白い翼を畳むと翼はスッと消えてしまう。奏楽の意思で出すだけでなく消すこともできる。

「にしても、異世界にもピラミッドあるのか」

 ノワールは縦に頭を振るう。

「そりゃあ、教会もあるのだから、ピラミッドの一つや二つ……」

 奏楽と吉塚は顔を合わせて首をかしげる。

「「あるのか?」」


      〇


 ピラミッドの中へは入らなかった。何が待っているか分からないからだ。もし入るならば準備をしなくてはならない。

 近くの町へと向かい町の教会で話を聞くことにした。

 教会の僧侶にピラミッドの話を聞くがよく分からないという。

「うちの宗教の宗派には当てはまらない。ずっと昔の文明人が作ったものだろうからねえ。僧侶よりも学者さんを尋ねるといいかもしれないね」

 教会から出るとノワールは「まだ興味あるの?」と吉塚と奏楽に聞く。

 奏楽は「いやー」と唸る。

「そこまでじゃないけど、ピラミッドはこっちの世界にもあったからね。ちょっと気になっただけさ」

 吉塚も同じ様子だ。

「ピラミッドは王の墓らしいからな。こっちのも王様のお墓なのかどうかは気になるな。ちょっとだけだが」

 ちょっと気になるといっても学者がどこにいるのか分からない。王国にでも行けば学者は存在するのだろうか。それとも学校の先生の中に考古学専門がいるのだろうか。どっちにしても尋ねてみないと分からない。


      〇


 ナナ・アルファスとの待ち合わせ場所のカフェに訪れると、四人は四人席のテーブル席で昼食を摂ることとした。吉塚はペペロンチーノを頼み、奏楽はサンドイッチを、ノワールはパンケーキを、ナナはスコーン。そしてそれぞれの分の珈琲を注文した。

 みんなバラバラな注文で、一番早く届いたのは四人分の珈琲とスコーンだった。

 一番最後に届いたのは吉塚のペペロンチーノで、届いたペペロンチーノを食らう彼は食べながらナナにピラミッドに興味があるか問うた。

「ピラミッド? 何ですかそれ」

 どうやらピラミッドというものを知らない娘であったようだ。

 説明する吉塚。

「要するに大きい王様のお墓だ。お宝やミイラ、文明の跡に価値があるというわけさ」

 わくわくしながら声を上げるナナ。

「嘘!? お宝なの?」

 どうやら興味が湧いたらしい。

 ノワールが説明をする。

「発見されたばかりの場合だと、ダンジョンの探索クエストとして、ギルドで募集がかかっているかもね」


      〇


 四人でギルドへ向かうとクエスト募集掲示板を拝見した。ダンジョン系のクエストは現在募集されておらず、いつものモンスター討伐ばかりの案件であった。吉塚は一枚の貼りだされた紙を示して問う。

「ダンジョンクエストがないから、こんなのはどうだ?」

 彼がおすすめとばかりに指を向けたのはナルガクリードというモンスターの討伐依頼。ナルガクリードとは素早い動きで獲物を狩る飛竜の種族。飛竜と言われても翼は発達しておらず空を飛ぶことはできない。

 吉塚は飛竜を狩るのが得意だ。皆もそれでよいと思っている。

 ギルドの窓口でクエストの依頼を受注する際にピラミッドの話をすると、とうに攻略されたダンジョンらしく、アンデッドは全て狩られ学者が出入りした後らしいのだ。


      〇


 町から出て飛竜ナルガクリードが住む場所へと向かう奏楽一行。ナルガクリードは普段の生態としては鹿や猪などを捕食しているらしい。素早い動きと鋭い爪がこのモンスターをモンスターたらしめる特徴だ。

 森深くへ進むにつれて暗くなっていく吉塚は「そろそろだ」と言い全員油断しないように忠告した。

 住処に近づけば近づくほどにいつ出没してもおかしくはない。

 突如としてモンスターの声が森中に轟いた。

 吉塚は呟いた。

「狩りをしている。モンスターがモンスターを狩っている」

 いくぞと声をかけると急いで声がした方角へと走り出す一行。


      〇


 真っ黒な毛に包まれた巨大なモモンガのような見た目をした飛竜ナルガクリード。そのモンスターが全身鱗に囲まれた別種の小ぶりな飛竜を狩り食らっていたのだった。

 吉塚は戦うための詠唱を始める。

「――今身体の耐久値を上げよ、エクスタフネス! ――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー! ――今我が剣の威力を上げよ、スラッシュナイフ!」

 そして単身突っ込んでいく。

「援護頼む!」

 奏楽は背中に意識を向けて叫ぶ。

「ペガサスの翼!」

 背中から真っ白な翼が生え飛翔する。

 向かってくる吉塚にナルガクリードが気付き、威嚇する。

 ――ガアアアアアアアア!

 恐れることなく向かっていく吉塚。一定の距離まで近づき剣を振りかざすとナルガクリードは予測していたかのように後ろへ下がり躱す。

 さらに上空から奏楽が攻撃を企む。

「翼で打つ!」

 降下して接近するもそれすらも分かっていたかのような動きで躱される。

 ノワールが躱せないように身を縛る魔法を唱える。

「ローズウィップ」

 薔薇のモンスターが召喚され、薔薇のモンスターがつるでナルガクリードの動きを封じようとするも全身絡めて封じようとすることさえ想定済みかのように素早い動きで躱していく。

 吉塚はさらに自身のスピードを上げるべく詠唱を重ねる。

「――今身体のスピードを上げよ、スピードソルジャー!」

 剣が届く速さまで上昇しナルガクリードの身を切り裂くため剣を振り下ろすも、鋭利な爪で防衛されてしまう。


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