06話 後編 魔女との遭遇
再び奏楽は飛翔し上から霧の町の様子を見下ろした。霧が出ているためはっきりとは見えないが、巨大なモンスターや目立つ姿ならば見つけることができる。
モンスターが見つからないと思ったその時だった。
「きゃあああああああああ」
女性の悲鳴が聞こえてきた。先ほどの女性の声だ。
「いけない!」
奏楽は急いで急降下し、女性の家の窓に突っ込んだ。ガラスが割れ窓の破片が部屋中に飛び散る。
女性は巨大な羽虫に襲われているところであった。
奏楽は翼で巨大な羽虫を叩き落とす。
そして巨大な羽虫にとどめを刺そうとしたところ、エクスマキナの少女が現れ背中から拳銃を取り出し数発の弾丸を放ちとどめを刺した。
「任務完了。消息を絶った豊餅奏楽を発見。これより共に帰還する」
さきほど襲われていた女性を探すがどこにもいない。奏楽は不思議な気持ちになりながらも窓の外を見ると霧が晴れていく光景があった。
ほんとうは窓を壊してしまったことを謝りたかった奏楽。
エクスマキナの少女は自らの右手を外し右脇に抱え右腕を前方へ構え、光の輪を発生させる。奏楽は光の輪の中へ入っていきその後ろを少女も跨いでいく。
〇
町はずれの森の中を歩く女性は何やら楽しそうに笑っていた。
――フフフ、フフフフフフフ。
「ああ、なんて楽しいのでしょう。私のために戦い、私のために異世界へとやってくる」
長い髪を触り前髪の髪留めを付け直す。
彼女の周りには霧が立ち込め、太陽の光を遮断している。
「ここにいるんですよ。でも、まだまだですよね。まだまだ」
高笑いしながら霧に囲まれた道を伝って歩いていく。
〇
元の世界へと戻ってきた奏楽はさっそく持ち帰ってきた魔女の話を警察の異世界研究捜査部の大島輝幸警部と佐々木和則警部補に話したのであった。魔女が異世界への扉を開きこちらの世界の住人を誘拐していること。そして誘拐された人間がモンスターに襲われていること。
大島警部は顎を触りながら述べた。
「つまりそのどこにいるか分からない魔女を探さなければならないと」
「そうなります」
佐々木警部補は「こりゃ大変な仕事になる」と言い肩を落とした。
だがとりあえずはエクスマキナの使い方にしても魔女を探すことが第一の課題となるのであった。
〇
入院中の吉塚は病院の個室でベッドに横たわり休息を取っていた。吉塚は夢を見ていた。泉が目の前に広がっていて、自分は陸でゆっくりその美しい水辺の光景を眺めていたのだ。
2羽の白鳥が降りてきてデートをするように水の上に浮かんでいる。
「白い羽根、あいつの翼も綺麗なんだよな」
仲間の奏楽のことを考えていると隣に一人の女性が現れた。ショートヘアでカチューシャを付けた十代後半くらいの黒い服を着た女性だ。
「何を考えていらっしゃるのですか?」
知り合いでもない女性。でも不思議と吉塚は心を許して答えるのであった。
「最近できた友人のことを考えていた。突然やってきたやつでな。いつも空を飛んでいるんだ。名前もそんな感じの名前で」
女性はうんと頷く。
「少しうらやましいなって思う。自由に空を飛べるってどんな感覚なんだろう」
女性は「飛んでみたい?」と聞く。
「飛べるものなら飛んでみたいな」
女性は「そう」と呟く。
「あなたにはあなたにできることがある。そんな自由をもっと感じてみて」
吉塚はにかっと笑った。
「確かに。そうかもな」
夢はそこで途絶えた。
目を開けると深夜であった。再び目を閉じる吉塚。俺にしかない自由。確かに剣を使えたりスキルが使えたりするのはみんなができるわけじゃない。
不思議な夢だと思った。




