表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

12話 悪魔退治

 白い翼で悪魔アスモデウスを打つべく飛翔し突撃する奏楽。だが、悪魔は身を翻して躱し白い翼を掴む。そのまま投げ飛ばされた奏楽は地面に激突し気を失ってしまった。魔女である老婆は笑いながら奏楽へと近づき一人語る。

「またまたやってきた転生者。だけど何も変えることなんてできない。この原初の呪いは誰にも解くことはできないのだから」

 奏楽のピンチに走ってくるエクスマキナの少女は拳銃を取り出して老婆へと向ける。老婆は遠目に拳銃の先を撫でるように指を動かし詠唱する。

「グラビティバリア」

 拳銃が発砲され老婆めがけて飛ぶ弾丸は動きを鈍らせそのまま落下していく。

 少女は拳銃を背中のホルスターへと戻し接近戦へと対処術を変える。蹴りを浴びせようとするも老婆は同じく指を動かす。少女の足は鈍い動きで蹴りを空振りさせる。

「機械の女か。別世界は面白い物を作るじゃないか。私も行ってみたくなる」

 次々と蹴りを繰り出すもすべてが空振りとなる。

 ノワール・セブーンは老婆に手を構える。

「ローズウイップ」

 薔薇のモンスターが召喚され棘のつるの鞭が老婆へと向かって伸びる。

「だから無駄じゃて」

 指をつるに対してなぞる様に動かすと棘のつるはゆっくりした動きで老婆へと伸びるも、そのゆっくりとした動きは躱すチャンスを与えてしまう。

 老婆は詠唱し魔法を展開する。

「クラックイングランド」

 地面が割れエクスマキナの少女は老婆から離れ、ノワールが召喚した薔薇のモンスターは地に飲み込まれていく。

 戦いを見ていたナナは老婆を恐れた。召喚された悪魔アスモデウスも強敵であるのにも関わらず老婆の方も戦闘スキル持ちで強いのだから。


      〇


 奏楽が目覚めたのは異世界の病室だった。白い天井。

 起き上がると同じ部屋で大木吉塚もベッドで寝ていた。

「ちょっと、起きていいの? どこも痛くないの?」

 起き上がる彼を気遣うノワールの姿もあった。吉塚の方にはナナが付き添っている。

「ああ、なんとも。……今のところは」

 奏楽一行は悪魔を召喚する魔女に負けたのだった。おそらくあの魔女が原始の魔女の可能性が高い。教会で呪いを浄化しきれなかった。

 両手を頭の後ろに組み再び仰向けに横になる奏楽。

「……どうすればいいんだろ」

 その答えを持つ者はここにはいなかった。


      〇


 奏楽の住む世界の日本では記録を持ち帰ったエクスマキナの少女と警察の二人が会議を行っていた。大島警部は佐々木警部補とパソコンから伸びる機器を少女の背中に繋ぎながら問う。

「つまりそちらの世界でも浄化できない呪いがあったんだな」

 少女は「はい」と答える。

 大島警部は眉間に皺を寄せる。

「困ったなあ」

 佐々木警部も一緒になって眉間に皺を寄せていた。

「そうですよね。ようやく霧の町に行方不明になる件が解決しかかっていたというのに」

「そうなんだよなあ。困ったもんだ」

 少女からデータを回収しながらため息を吐く二人であった。


      〇


 悪魔アスモデウスが焼け焦げた教会の屋根から町を見下ろす。首をひねり何かを考えているような動作をする。そんな奴を倒すため冒険者が集っていた。

 大剣を振るう巨漢の男。尖った帽子をかぶる魔法使いの女。弓矢使いの長い髪を一束に束ねた男。精霊を召喚する召喚士の男。

 召喚士は風の精霊を呼びだした。

「今、我が名に従い風を成し悪を閉じ込めよ! ――シルフ!」

悪魔アスモデウスを風で作った壁の中に閉じ込める。巨漢の男が教会の焼け残った鉄骨を渡り、アスモデウスめがけて大剣を振り下ろす。

「おらあ!!!」

 アスモデウスは身体を翻して躱し、右手の人差し指を巨漢の男に向ける。

 人差し指が突如伸びて弾丸のように巨漢の男の肩を貫く。

「ぐあっ」

 弓矢使いの長髪の男が即座にアスモデウスの右手を射抜き巨漢の男の肩に刺さった指を離れさせる。さらに魔法使いの女が魔法で追い打ちをかける。

「フリーズドライブ!」

 精霊シルフの起こす風に氷結魔法が重なりアスモデウスの動きが鈍くなる。

 巨漢の男が大剣を構え走り出す。

「お前はここで俺たちが倒す!!」


      〇


 冒険者たちが悪魔退治をしていると聞き奏楽とノワールは病院から抜け出してきた。

 大剣の一振りを真正面からくらい教会の屋根から落ちていく悪魔アスモデウス。さらに真上から大剣を両手で担ぎ上げ落下してくる巨漢の男。

「逃がさねえぜ」

 倒れるアスモデウスへと巨漢の男が歩み近づく。ゆっくり近づくと奴の首に刃を向ける。

「悪魔退治もこれで終了だ」

 血を吐きながらアスモデウスは何かを訴えようとしているようだがその言葉も人に伝える言語とは思えなかった。

 巨漢の男は何の反応もせずに悪魔の首を落とす。

 悪魔退治の様子を見ていた奏楽はだがまだ原始の魔女の問題が残っていることを危惧する。

 ……どこだ。あの魔女はどこにいるんだ。

 悪魔退治の野次馬たちの方向そこにもいる気配はない。もうこの町にはいない可能性もある。

 奏楽は町の中を走って探し回る。だがもう霧も晴れている。おそらくもうこの町にはいないのだろう。

「くそ。本当にどうすればいいんだ」


      〇


 魔女の老婆は一人どこかの町で霧に囲まれながらリンゴを食しながら歩いていた。

「この世界はどーしてこんなに理不尽なのか。最初から救われない命を産み落とし、誰も責任が取れない呪いをかけられないといけないのか」

 彼女の名はルート・フォリオ。

 魔女の過去は悲惨だった。とある青年に恋をしたのだが、その青年はとある女神に気に入られていたことでとばっちりの呪いを受けてしまいそこから霧に囲まれて過ごすしかない人生が待っていた。最初は彼女の両親が彼女を守ろうとした。だが永遠には続かなかった。モンスターとの戦いの日々で両親は衰弱していくのが目に見えていた。だから家を飛び出すしかなかった。

 それからというものモンスターを引き連れ町を移動していくしかなかった。

 迷惑がかかるため一つの町にずっとは居られなかった。

 いつの日か理不尽な呪いを受ける身である自分に馬鹿らしくなり、女神がやったことを自分もしてやろうと思いついたのだ。この世はバランスを成り立たせないといけない。だとしたら自分みたいな理不尽な呪いを受ける者を増やさないとこの世のバランスが崩壊してしまうと考えたのだ。

 彼女によってノワール・セブーンもナナ・アルファスも呪いを受けた。霧が発生しモンスターが発生する特異点となる呪いを。

 ノワールもナナも呪いを教会の祝福により解くことができた。だが、このルートという魔女の呪いは女神から受けたものであり信仰対象が女神である教会で呪いを解くのは不可能なことだったのだ。

 リンゴを食べながら霧の町を歩くルート。

「馬鹿らしいね。私のような者がいることが普通になるかあるいは、私のような者が救われる世となればよいのに」


      〇


 奏楽は病院の病室のベッドで仰向きとなって寝ている大木吉塚に問う。

「なあ、どうすればいいんだろう。殺すわけにはいかない。といってこのままという訳にもいかない」

「誰も考えずに放置してきた結果がこれなんだろうさ」

 吉塚はどうするべきかと奏楽と共に悩んだ。そして答えが出た。

「女神に会って話をつけるしかないかもしれない」

「そんなどうやって。俺たちだって死んだ時しか会えなかったのに」

「僧侶に相談だな」

 教会の僧侶に相談してみる提案。もっとも教会は魔女によって焼かれた。それを許し話を聞いてくれるかだ。

「これで話を聞いてくれたらそうとう心が広い人だな」


      〇


 教会が焼け落ちた後も僧侶はこの場所に通い祈りの習慣を欠かさなかった。そこへ奏楽と吉塚はやってきた。

 奏楽は僧侶に問う。

「すいません。魔女のことなのですが。彼女を救うことはできないのでしょうか?」

 僧侶は言った。

「彼女が心から気持ちを入れ替えることができたら可能かもしれません。ですが、可能でしょうか? 彼女はここまでのことをしています。悪魔さえ召喚してしまう行い。自分が被害者であるというだけの意識から抜け出すことはできるのでしょうか」

 腕を組み吉塚は難しいかもしれないと思ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ